アジアイトトンボ

亜細亜糸蜻蛉 (イトトンボ科)


2001/7/25 木更津市中尾 / NIKON FM2-T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 アオモンイトトンボを一回り小さくしたような小型のイトトンボ。未成熟の個体は水辺を離れ 、小型の昆虫を追って住宅地などにも飛来するため、県内で最もよく見かけるイトトンボのひとつとなっている。田んぼやため池、湿地化した休耕田はもちろんのこと、街中の公園や防火用水の中などでも発生することがある。
写真は、木更津市中尾で7月下旬の午後、水辺で♀を待つ成熟♂である。♀は同色型と異色型があるアオモンイトトンボとは異なり、淡い緑褐色の異色型のみが知られる。アオモンイトトンボやホソミイトトンボ、オオイトトンボと似るが、本種はその両者より小型で、ホソミイトトンボより腹部が太い。また♂は腹部第9節のみが青く、翅胸の斑紋が異なるので比較的簡単に区別できる。
通常は♀は交尾後、単独で水辺の草などの組織内に産卵するが、稀に連結したまま産卵することもある。出現期間は長く、比較的長い期間に羽化し続けるため、同時に様々な成熟過程のものが見られる。アオモンイトトンボと同様に様々な環境に適応した普通種だが、水質 汚濁には敏感で生活廃水が流れ込むとすぐに姿を消す。都市部を除き、今のところ目立った減少傾向は見られないが、開発によって今後姿を消す地域が増えるのではないかと考えられる。



アジアイトトンボ (イトトンボ科 アオモンイトトンボ亜科)
Ischnura asiatica  Brauer, 1865
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。北限は渡島半島。島嶼では佐渡、伊豆、小笠原、隠岐、対馬、南西諸島のほぼ全域。
県内: 一部の都市部を除き、全域に汎く分布する。
国外: 台湾、中国南部、フィリピン、ベトナム、マレー及びその周辺の熱帯地域全域に汎く分布する。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: シーズン後半期に羽化する個体は小型化する傾向がある。
性差: 異型。♂腹端は鮮やかな水色だが、♀腹部は一様な緑褐色。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。抽水植物の豊富な池沼、湿地の滞水、休耕田や水田などで、底質は泥、水質はやや濁った陸水。かなり幅広い環境に適応している。
発生: 年2回。4月中旬~10月下旬に見られる。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性。静止時は翅を閉じ、平らにとまる。飛翔は緩やかで移動性は弱いが、羽化直後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、付近の雑木林などの林縁で栄養飛翔を行うことが知られる。 成熟した♂は水辺に戻り、抽水植物の茎などにとまって縄張りをつくり♀を待つ。通常♀は単独で抽水植物の茎などに産卵する。
食性 幼虫: 捕食性/生体。ミジンコ類、ユスリカ類やハナアブ類の幼虫。
成虫: 捕食性/生体。小蛾類、ハエ、ユスリカなど小型の飛翔性昆虫。
類似種: アオモンイトトンボ、ホソミイトトンボ、オオイトトンボに酷似するが、腹部の斑紋が若干異なる。
保 護: 指定されていない。
その他: 県内でのイトトンボ科における最普通種のひとつ。
天敵 捕獲: オオセスジイトトンボなどの大型イトトンボ類、ヤンマ類やサナエトンボ類、大型~中型のトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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