ムスジイトトンボ

六条糸蜻蛉 (イトトンボ科)


2002/7/6 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 やや大型のイトトンボ。緩やかに飛ぶ種の多いイトトンボの中では比較的速く飛ぶことができる。翅胸部は黄褐色、腹部は淡いコバルトブルーで、背面に黒褐色の縦条が走る。和名の由来は、♀の翅胸部に左右合計で6本の黒い筋があることと、♂の腹部背面の黒条が6個に分かれるためという2説がある。
 写真は、千葉市緑区で7月上旬の午前中、林縁の下草上で静止する未成熟♀である。♀は成熟してもあまり色が変わらないが、♂は褐色部が鮮やかな水色に変わる。大きさや全体の色調がよく似ているため、 飛んでいるとセスジイトトンボやオオセスジイトトンボと紛らわしいが、翅胸部の斑紋がそれぞれ異なるので、近づいてよく見れば簡単に区別できる。
 一般に暖地性の種で、本州以南、南西諸島まで汎く分布する。県内では内陸部よりむしろ半島部の海岸に近く、沈水植物が多い開放的な池沼に見られるが、確実な産地は少ない。しかし、近年ゴルフ場では農薬をあまり使用しなくなったため、場内の池などで生育する例が見られるようだ。写真の個体は周囲に棲息に適した池などがないため、撮影地のすぐそばにあるゴルフ場内の池で発生した個体であると考えられる。またセスジイトトンボやオオセスジイトトンボ程ではないが、産地での個体数もそれほど多くはない。



ムスジイトトンボ (イトトンボ科 イトトンボ亜科)
Cercion sexilineatum (Selys, 1883)
分布 国内: 本州、四国、九州。主に関東南部以西の太平洋岸に分布し、日本海側や内陸部では少ない。島嶼では南西諸島全域。
県内: 県央以南を中心に棲息するが、確実な産地は少ない。
国外: 台湾、中国(中南部)~遼東半島に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。
季節: 知られていない。
性差: 羽化直後は同型、成熟すると異型
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。沈水植物が多く繁茂する池沼で、底質は砂泥、水質はやや濁った陸水。開放的な環境を好む。
発生: 年1回。5月上旬~10月上旬に見られる。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性。静止時は翅を閉じ、平らにとまる。移動性はあまり強くないが、羽化直後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、発生地周辺の林縁などで栄養飛翔を行う。成熟した♂は水辺に戻り、水辺の草などにとまって縄張りをつくり♀を待つ。♀は♂と連結したまま抽水植物の茎などに産卵する。
食性 幼虫: 捕食性/生体。ミジンコ類、ユスリカ類やハナアブ類の幼虫
成虫: 捕食性/生体。小蛾類、ハエ、ユスリカなど小型の飛翔性昆虫。ときにクロイトトンボやアジアイトトンボなど小型のイトトンボ類も捕食する。
類似種: セスジイトトンボ、オオセスジイトトンボと酷似するが、眼後紋と翅胸の斑紋が若干異なる。
保 護: 千葉県:、千葉市:、東京都:(区部)、神奈川県:En、埼玉県:DD、栃木県:、群馬県:注目
その他: 産地は局限され、個体数も少ない。ただ、暖地では近年増加しつつあるという報告もある。
天敵 捕獲: オオセスジイトトンボなどの大型イトトンボ類、ヤンマ類やサナエトンボ類、大型~中型のトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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