ナシイラガ

梨棘蛾 (イラガ科)


燈火に飛来した♂
2005/7/9 市原市大久保
ナシイラガ (イラガ科 イラガ亜科)
Narosoideus flavidorsalis  (Staudinger ,1887)
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布するが、特に人里近くに多い。島嶼では対馬、種子島、屋久島で記録されている。
県内: 市街地を含め、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸(華北・華中)、ロシア沿海州(ウスリー・アムール)~シベリア南東部に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、奄美大島、徳之島、沖永良部、沖縄本島には近似の別種、オキナワナシイラガ(N.ochridorsalis Inoue, 1982)が分布する。色調や斑紋に若干の個体変異がある。
季節:
性差: ほぼ同型。外見上の差はほとんどないが、触角形状が異なり、♂は両櫛歯状、♀は糸状に近い。
生態 環境: 各種樹林とその林縁、公園、果樹園、人家の庭など。
発生: 年1回。5月下旬~7月に見られる。
越冬: 前蛹。繭の中で越冬し、翌春蛹化する。
行動: 夜行性。燈火に飛来することも多い。日中は林縁などで静止している。幼虫は集合性があり、一列に並んで摂食する習性がある。
食性 幼虫: 食植性/広食性。バラ科サクラ類やナシ、ブナ科のコナラ、クヌギ、クリ、カキノキ科のカキなどが主。ほかにヤマナラシ(ヤナギ科)、ダイズ(マメ科)、ツクシヤブウツギ(スイカズラ科)、ケヤキ(ニレ科)などが知られる。
成虫: 不食。成虫は口吻が退化しており、何も食べない。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: 普通種で個体数も多い。幼虫は毒刺毛を持ち、触れると飛び上がるほど痛いが、放置していても全身症状を発症することはない。しかし心配だったら抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏などを塗布すると良い。また、毒をもつのは幼虫のみで、卵、蛹、成虫の各ステージは無毒である。
天敵 捕獲: オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリなどのカマキリ類、ヤブキリ、コロギス等の捕食性キリギリス類のほか、造網性クモ類など。幼虫はジガバチなどのアナバチ類、スズメバチ類のほか、クチブトカメムシ類、サシガメ類など。
寄生: 蛹から羽化脱出するセイボウ科のイラガセイボウ、ヤドリバエ科のイラムシヤドリバエ(Chaetexorista sp.)が知られる。


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