ヒカゲチョウ

日蔭蝶 (ジャノメチョウ科)


2001/6/22 12:40 木更津市中尾 / NIKON FM2-T+AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型のジャノメチョウ。薄暗い林縁的環境を好むが、やや明るい場所にも進出している。これまた地味な色彩のチョウだが、後翅裏面の眼状紋は水色のアイシャドウに縁取られていて、見方によってはちょっと艶っぽい。
 写真は、木更津市中尾で8月下旬の午前中、露頭の日陰で休息する羽化直後の♀である。性差は大きさと翅形に表れ、♀は♂より大型で翅形が丸みを帯び、地色がやや淡い。♂は前翅表に褐色の毛束をもつので、翅表さえ見ることができれば区別は簡単であるが、裏面だけだとやや難しい。多化性だが、季節変異は知られていない。地理的変異についてもはほとんど研究されていないため、亜種区分は認められていない。クロヒカゲとよく似ていて、これと混棲することも多い。ただ、クロヒカゲは近隣の神奈川、埼玉、茨城には分布するものの、本県には分布しないので見間違えることはない。
 県内では5月末~9月末頃まで姿を見ることができる。飛翔は比較的緩やかで、長く飛び続けることはなく、すぐに下草などにとまる。訪花性はなく、主にクヌギ、コナラ、ヤナギ類などの樹液やヤマグワ、カキ、イチジクなどの腐果に集まるが、地上で吸水したり汚物に集まることはほとんどない。日中は林内などで休息し、夕方や曇りの日に活発に活動する。人の気配には結構敏感で、驚かすと茂みに逃げ込んで行方をくらます。なお本種は現在のところ日本特産種とされている。



ヒカゲチョウ (ジャノメチョウ科 マネシヒカゲ亜科)
Lethe sicelis (Hewitson, [1862])
分布 国内: 本州(東北中部以南)、四国、九州(北部)。島嶼での記録はない。東北地方では産地は局地的で稀。平地~低山地が分布の中心。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 国外には分布せず、現在のところ日本特産種とされる。
変異 形態: 地理的変異についてはほとんど研究されていないため不明である。
季節: 知られていない。
性差: ほぼ同型。♀は♂より翅形が丸い。また♀は♂より地色が淡く、前翅表の黄白色帯は明瞭。♂は後翅表基部と中室外縁に黒褐色の毛束をもつ。
生態 環境: 食草の自生する樹林。やや薄暗い林縁的環境を好む。
発生: 通常年2回。5月下旬~6月中旬、8月上旬~9月中旬に姿を見せる。
越冬: 幼虫(3齢~4齢)。
行動: 昼行性。飛翔は比較的緩やかで、長時間飛び続けることはなく、すぐに下草上などにとまる。晴天時の日中は林内の下草上などで休息し、夕方に活発に活動する。春秋の午前中など気温の低いときは翅を開いて日光浴することもあるが、基本的には静止時は翅を閉じる。
食性 幼虫: 食植性/タケ科ササ属アズマネザサ、ネザサ属のネザサが主。他にはモウソウチクやマダケ、ハチク、ミヤコザサ、クマザサなど。
成虫: 食植性/樹液腐果汚物。訪花性はほとんどなく、クヌギやコナラ(ナラ類)、アカガシ、アラカシ、シラカシ(カシ類)、ニレ類、ヤナギ類などの樹液やヤマグワ、カキ、イチジクなどの腐果 、獣糞などの汚物によく集まる。♂♀共に吸水性はない。
類似種: クロヒカゲに酷似するが、本県には分布していない。
保 護: 指定されていない。
その他:
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 不明。

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