ヒメジャノメ

姫蛇ノ目蝶 (ジャノメチョウ科)


2003/9/9 12:35 館山市作名 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のジャノメチョウ。晩春~初夏に薄暗い林縁や林内の陽だまりで、翅を開いて日光浴する姿をよく見かける。英語圏では森林性の性質から、"Chinese Bushbrown"と呼ばれている。これもヒメウラナミジャノメと同様、小学校の教室に飛び込んできては女の子に騒がれていた種である。
 写真は、館山市作名で9月上旬の正午過ぎ、林縁で休息する夏型の♀である。性差は斑紋や翅形、大きさには表れないが、♂は前翅前縁に褐色の毛束をもつので、翅表さえ見ることができれば♂♀の区別は簡単であるが、裏面だけだとかなり難しい。季節変異は比較的明瞭で、春型は夏型より眼状紋が小さいので簡単に見分けられる。コジャノメと酷似していて混同されることが多いが、本種は一般に、これより翅の地色がやや薄く、前翅後翅を貫く白色条がやや黄色味を帯びるので慣れれば区別はそれほど難しくない。
 飛翔は緩やかで、長く飛び続けることはなく、すぐに下草などにとまる。とまるときは一般に翅を閉じるが、曇りの日や早朝などには翅を全開して日光浴することがある。訪花性はやや強く、さまざまな花で吸蜜するほかクヌギやヤナギ類の樹液や腐果などで吸汁することが多い。ただ、地上で吸水したり汚物に集まることは、ほとんどないようだ。日当たりの悪い薄暗い林縁的環境を好み、コジャノメと混棲することも多いが、本種はやや明るい環境にまで進出している。基本的には平地性の種で、市街地でも見かけることがある。



ヒメジャノメ 日本亜種 (ジャノメチョウ科 マネシヒカゲ亜科)
Mycalensis gotama fulginia Fruhstorfer, 1911
分布 国内: 北海道(南部)、本州、四国、九州。島嶼では佐渡、伊豆大島、隠岐、対馬、壱岐、五島列島、種子島、屋久島。平地~低山地が分布の中心。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島南部、台湾、中国(中南部)、インドシナ北部~アッサム。原名亜種は中国大陸中部産 をさす。日本産は分布の北東限にあたる。
変異 形態: それほど顕著ではないが地理的変異があり、かつて対馬産は原名亜種とされたが、本亜種に統一されたようである。
季節: 比較的明瞭。斑紋が相違する。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: ほぼ同型。斑紋や翅形に差はないが、♂の後翅表前縁に暗褐色の毛束があり、後翅裏面中室前縁脈は♀より太い。
生態 環境: 食草の自生する樹林周辺。やや薄暗い林縁的環境を好む。人家周辺などにも生息する。
発生: 通常年3回4回。寒冷地では2回。 県内では4月下旬~10月中旬まで見られる。
越冬: 幼虫(終齢)。
行動: 昼行性。飛翔は緩やかで、長時間飛び続けることはなく、すぐに下草上などにとまる。気温の低いときなどには翅を開いて日光浴することもあるが、基本的に静止時には翅を閉じる。
食性 幼虫: 食植性/イネ科イネエノコログサオヒシバメヒシバアシボソススキ、カヤツリグサ科のカサスゲヒメスゲ、タケ科のアズマネザサハチク
成虫: 食植性/樹液腐果汚物。訪花性は弱く、花で吸蜜することは稀。クヌギやコナラ(ナラ類)、アカガシ、アラカシ、シラカシ(カシ類)、ヤナギ類などの樹液や カキやイチジクなどの腐果、汚物などによく集まるが、地上で吸水することはない。
類似種: コジャノメに酷似するが、裏面の斑紋が相違する。
保 護: 指定されていない。
その他:
天敵 捕獲: 虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: ヤドリバエ科のノコギリハリバエ(Compsilura concinnata (Meigen))、Isosturmia intermedia Townsend、キナコハリバエ(Senometopia excisa (Fallen))、マダラヤドリバエ(Sturmia bella (Meigen))など知られる。

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