ジャノメチョウ

蛇ノ目蝶 (ジャノメチョウ科)


2003/7/23 12:30 木更津市菅生 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 やや大型の北方系のジャノメチョウ。林縁などの暗い環境を好むジャノメチョウ科の中では珍しく日当たりのよい明るい草原を好み、草いきれのするような盛夏の日中に活動する典型的な草原性のチョウ。色調は地味だが、翅の深い青色の目玉模様の中には小さな白い星が瞬いていて、これが和名の由来となっている。
 写真は、木更津市菅生で7月下旬の正午過ぎ、高速道路脇の草原に繁茂するクズの葉上で休息する♂である。性差は斑紋と大きさに表れ、♀は♂よりはるかに大型で、翅の地色が薄く黄褐色なので区別は簡単である。また県内にはこれと似た種はいないので見間違えることはない。
 県内のジャノメチョウ科の中では唯一の年1化性の種で、成虫は7月上旬~8月下旬に姿が見られる。飛翔は敏速で、人の気配には敏感だが、飛び立ってもすぐに付近の草の上などにとまる。とまってもたいていは翅を閉じたり開いたり している。訪花性はやや強く、ヤブガラシやオカトラノオなどの花で吸蜜することが多い。♂は地上で吸水することもある。以前はススキなどが生い茂った乾いた草原であればどこにでもいるような普通種だったが、近年そのような草原がほとんど開発されてしまったため、ヒョウモンチョウ類など他の草原性のチョウと同様に、個体数が激減してしまった。特に県北部でその傾向が著しく、すでに絶滅した地域も多いようだ。



ジャノメチョウ 日本周辺亜種 (ジャノメチョウ科 ジャノメチョウ亜科)
Minois dryas bipunctata (Motschulsky, 1860)
分布 国内: 本土全域。島嶼では国後、礼文、利尻、佐渡、伊豆大島、隠岐、対馬、壱岐、五島列島。平地~山地が分布の中心。。
県内: 都市部を除くほぼ全域に棲息するが、やや局地的で、特に北部では稀
国外: 朝鮮半島、中国(東北部、北部~西部)、中央アジア、シベリア~欧州(中部)。原名亜種は欧州産をさす。本亜種は日本産のほかに朝鮮半島産を含み、全ての亜種の中で最も大型である。
変異 形態: 若干の地域差が知られるが、国内での亜種区分は認められていない。
季節:
性差: 異型。♀は♂より一回り大きく、裏面の地色が淡い黄褐色。
生態 環境: 食草が多く自生する、やや乾燥した日当たりのよい開けた草原的環境を好む。 典型的な草原性の種。
発生: 年1回。7月上旬~8月中旬に見られる。
越冬: 幼虫(初齢~2齢)。枯れた食草の根際などに潜む。
行動: 昼行性。飛翔は敏速で草上を低く飛ぶことが多いが、あまり長時間飛び続けることはなく、すぐに付近の草上などにとまり、翅を開閉させる。人の気配には敏感で近寄り難い。♀は卵を対象物に付着させることなく、草原にばら撒くように産卵することが知られている。
食性 幼虫: 食植性/イネ科ススキノガリヤススズメノカタビラ、カヤツリグサ科のショウジョウスゲヒカゲスゲ
成虫: 食植性/花蜜樹液腐果。訪花性は強く、ヒメジョオン、リョウブ、オカトラノオ、ヤブガラシなど多くの花で吸蜜する。クヌギ、コナラ、ヤナギ類などの樹液や腐果、汚物などに集まることもある。
類似種:
保 護: 千葉県:、千葉市:、東京都:(区部)、神奈川県:、埼玉県:NT2(亜高山帯・丘陵帯/NT1、大宮台地・中川・加須低地/VU)
その他: 草原の開発によって減少傾向にある種。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 不明。

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