ミスジチョウ

三条蝶 (タテハチョウ科)


2003/6/13 11:20 栃木県藤原町 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のタテハチョウ。県内に棲むイチモンジチョウの仲間では 最も山地性の傾向が強い。吸蜜するときやとまって休むときも翅を開くことが多く、和名の由来となった3条の白色条がよく見える。日本産の亜種は実物によらず、絵によって命名されたという特異な経歴を持つ。発見当初は日光、浅間山、富士山、北海道など以外には産地がほとんど知られておらず、大変な珍種とされていたらしい。
写真は、栃木県藤原町男鹿川で6月上旬のお昼前、林縁の地上付近の下草にとまって日光浴する♂である。性差は若干ながら斑紋や翅形、大きさなどには表れるので、区別は簡単である。コミスジに酷似するが、本種のほうがはるかに 大型で個体数は少なく、斑紋が若干異なるので見分けるのはそれほど難しくない。
イチモンジチョウやコミスジが地上付近を漂うように飛ぶのに対し、本種は比較的敏速に旋回滑空することが多い。また、主に樹冠付近が生活の場となっているので、吸水時などのとき以外に見かけることはほとんどない。とまるときは、緩やかに翅を開閉する。飛翔は緩やかだが、驚かしたりすると急に速く飛ぶようになる。訪花性は弱く、♂♀共に地上で吸水したり汚物で吸汁することが多い。幼虫は食草の主脈を残して葉を食べ、その上で静止していることが多い。越冬する際にはあらかじめ葉の基部に厚く吐糸して葉が落ちないように固定し、そのまま枯れ葉と共に樹上で過ごすことが知られている。



ミスジチョウ 日本亜種 (タテハチョウ科 イチモンジチョウ亜科 ミスジチョウ族)
Neptis philyra excellens Butler, 1878
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州(宮崎以北)。島嶼では対馬のみ。一般に山地性の傾向を示し、産地での個体数はそれほど多くない。
県内: 房総丘陵地域が分布の中心で、北総では稀。
国外: 朝鮮半島、沿海州、中国(東北部~中部)、台湾山地。原名亜種は沿海州産。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節:
性差: ほぼ同型。斑紋に差はないが、一般に♀は♂より白色斑紋が発達する。また、♀は♂より大型で、翅形が丸みを帯びる。
生態 環境: 広葉樹を中心とする各種樹林とその林縁。林縁や渓流などのやや暗い環境を好む。
発生: 年1回。暖地では5月中旬~7月中旬 、寒冷地では6月中旬~8月上旬に姿を見せる。
越冬: 幼虫(4齢)。 葉の基部に吐糸して落ちないように固定し、枯葉と一緒に冬を越すため、枝先の落ちていない枯葉を捜すとたいてい見つかる。
行動: 昼行性。飛翔は比較的敏速で、樹冠などの高所を軽快に旋回滑空する。吸水などのとき以外はあまり地上付近に下りてくることはない。
食性 幼虫: 食植性/カエデ科イロハモミジヤマモミジイタヤカエデオオモミジチドリノキメグスリノキなど。葉が大型の種よりも小型の種を好む。
成虫: 食植性/花蜜汚物。訪花性は弱いが、稀にリョウブ、ショウマ類、クリなどの白色系の花で吸蜜することがある。♂♀共に吸水性が強く、湿地で吸水し汚物で吸汁する。
類似種: コミスジと似るが、大きさと斑紋が相違する。
保 護: 千葉県:、千葉市:、東京都:(区部・北多摩)、神奈川県:、埼玉県:NT2(EX/大宮台地)、群馬県:NT
その他:
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 幼虫に寄生するヤドリバエ科のノコギリハリバエ(Compsilura concinnata (Meigen))、キナコハリバエ(Senometopia excisa (Fallen))、カイコノクロウジバエ(Pales pavida (Meigen))、Zenillia dolosa (Meigen)などが知られる。

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