コミスジ

小三条蝶 (タテハチョウ科)


2003/5/5 10:15 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 小型のタテハチョウ。イチモンジチョウの仲間では最も小型で普通に見かける種。幼虫がクズやフジなどのマメ科植物を食べるので、比較的都市部にも 多く進出している。吸蜜するときやとまって休むときも翅を開くことが多く、和名の由来となった3条の白色条がよく見える。
 写真は、千葉市緑区で5月上旬の正午過ぎ、林縁の地上付近の下草にとまって日光浴する春型の♂である。性差は斑紋や翅形、大きさなどには表れないが、♂は後翅表の前縁に絹状光沢をもつ性標があるので、この部分さえ見られれば区別は簡単である。ミスジチョウに酷似するが、本種のほうがはるかに小型で個体数も多く、斑紋が若干異なるので区別はそれほど難しくない。またミスジチョウが樹上などの高所を飛ぶことが多いのに対し、本種は地上付近を低く飛び、高所を飛ぶことは少ない。
 これもイチモンジチョウと同様に、はばたきと滑空を繰り返しながら、す~いす~いと漂うように飛ぶ。飛び立っても長い間飛び続けることはなく、すぐに下草や地上にとまり、緩やかに翅を開閉する。飛翔は緩やかだが、驚かしたりすると急に速く飛ぶようになる。訪花性は強く、様々な花を訪れるが、ウツギやイボタノキ、ヒメジョオンなど白色系の花を好む。♂は地上で吸水したり汚物で吸汁するほか、汗の水分を求めて人間に寄ってくることもある。幼虫は食草の主脈を残して葉を食べ、その上で静止していることが多い。



コミスジ 日本周辺亜種 (タテハチョウ科 イチモンジチョウ亜科 ミスジチョウ族)
Neptis sappho intermedia  W.B.Pryer, 1877
分布 国内: 北海道(北部を除く)、本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では佐渡、伊豆大島、八丈島、佐渡、隠岐、対馬、壱岐、五島列島、種子島、屋久島で記録されている。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、沿海州、台湾山地、中国(東北部、北部~中部)、シベリア、ヒマラヤ、中央アジア~欧州(南東部)までユーラシア大陸の北部~中部に汎く分布する。原名亜種は欧州産。
変異 形態: やや顕著な地理的変異が知られており、かつてはいくつかの亜種に分けられていたが、現在は本亜種に統一された。
季節: やや不明瞭。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: ほぼ同型。斑紋に差はないが、一般に♀は♂より大型で、翅形が丸みを帯びる。♂の後翅表前縁には光沢のある灰白色の性標をもつ。
生態 環境: 平地~山地までの樹林周辺。日当りのよい林縁的環境を好む。都市近郊にも生息する普通種。
発生: 多化性通常年2回3回。5月上旬~9月下旬に見られる 。北海道では2回、九州では3回~4回発生する。
越冬: 幼虫(終齢)。 食草の根際の枯葉の隙間などで見つかる。
行動: 昼行性。飛翔は緩やかで、あまりはばたくことなく滑空する 。日中、♂は弱い占有性を示し、領域内に入った他の♂を追飛することもある。
食性 幼虫: 食植性/マメ科クズフジが主。他にはナンテンハギ、ニセアカシア、ヤブマメなど。関東地方ではクズが主。葉を食べるが亜終齢までは中脈を残す。
成虫: 食植性/花蜜樹液腐果汚物。訪花性は強く、ヒメジョオン、ウツギ、イボタノキ 、クリ、イタドリ、ノコンギクなど、主に白色系の花を好む。クヌギ、コナラ、ヤナギ類など樹液や腐果などにも集まり、♂は汚物で吸汁することも多い。♂は湿地で吸水する。
類似種: ミスジチョウと似るが、大きさと斑紋が相違する。
保 護: 東京都:A(区部)
その他: 奄美諸島以南には近似の別種リュウキュウミスジを産し、本種との代置関係にあるようである。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 幼虫に寄生するヤドリバエ科のノコギリハリバエ(Compsilura concinnata (Meigen))、Weingaertneriella longiseta (Wulp)、カイコノクロウジバエ(Pales pavida (Meigen))、Zenillia dolosa (Meigen)などが知られる。

メイン