アサマイチモンジ

浅間一文字蝶 (タテハチョウ科)


2003/7/21 13:15 匝瑳郡光町 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のタテハチョウ。日当たりのよい林縁で、はばたきと滑空を繰り返しながら、す~いす~いと気持ちよさそうに漂う姿をよく見かける。とまるときは翅を広げていることが多く、和名の由来である翅表の白色条がよく見える。後翅の外縁には不明瞭ながら赤色斑紋が並び、モノトーンに近い翅表のアクセント。キタテハやルリタテハなどヒオドシチョウの仲間と違って、裏面が明るく比較的派手な柄になっている。
 写真は、匝瑳郡光町で7月下旬の昼下がり、食草のスイカズラに産卵する夏型の♀である。夏型は白色条が太くやや大型だが、季節変異は不明瞭。いずれも性差は斑紋に表れないが、♀は♂より大型で、翅が強く丸みを帯びるので見分けるのはそれほど難しくはない。近縁の別種にイチモンジチョウがあり、かつては同種とされていた程外見も生態もよく似ているため、慣れないと区別は難しい。食草もほぼ同じで混棲していることもあるが、一般に本種のほうがはるかに局地的で個体数は少ない。
 飛翔はイチモンジチョウよりも更に緩やかで、長い間飛び続けることはなく、すぐに下草や地上にとまる。とまるときは翅を開くことが多い。訪花性は強く、様々な花を訪れるが、ウツギ、イボタノキ、ヒメジョオン、クリなど主に白色系の低木の花を好むようだ 。♂は日中に低木の上で翅を半開して弱い占有性を示し、領域内に侵入した他の♂を追飛することがある。幼虫は県内では主にスイカズラ科のスイカズラを食べる。幼虫の習性はイチモンジチョウとほとんど同じで、初齢幼虫は食樹の葉の中脈を残して切込みを入れるように食べ、食べ残した中脈の先端に葉の小片と糞を継ぎ足して塔状の突起物を作る。越冬態は幼虫で、食樹の葉を巻いて巣をつくり、その中に潜んでいることが多い。



アサマイチモンジ (タテハチョウ科 イチモンジチョウ亜科 イチモンジチョウ族)
Ladoga gloriffica  (Fruhstorfer, 1909)
分布 国内: 本州のみ。北海道、四国、九州及び島嶼からの記録はない。
県内: 九十九里平野などに産地が点在する。分布はきわめて局地的。
国外: 国外には分布せず、現在のところ日本特産種とされる。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: 不明瞭。斑紋が相違する。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: ほぼ同型。一般に♀は♂より大型で、翅形が丸みを帯び、白色部が発達するが不明瞭であるため、腹端を精査する必要がある。
生態 環境: 各種樹林とその林縁。特に日当りのよい林縁的環境を好む。イチモンジチョウより陽性。
発生: 通常年3回。寒冷地では1回~2回。温暖な年には第4化が発生することがある。6月上旬~9月中旬に見られる。一般にイチモンジチョウより半月程度発生が遅れる。
越冬: 幼虫(3齢)。食樹の葉の基部を中脈から内側に張り合わせて巣をつくり、その中に潜む。
行動: 昼行性。飛翔はイチモンジチョウよりも遅く緩やかで、はばたきと滑空を繰り返し、やや低い場所を直線的に飛ぶ。
食性 幼虫: 食植性/スイカズラ科スイカズラ属スイカズラキンギンボクタニウツギ属タニウツギヤブウツギニシキウツギ。主に葉を食べるが亜終齢までは中脈を残す特異な習性がある。
成虫: 食植性/花蜜汚物。訪花性は強く、ヒメジョオン、ノイバラ、ウツギ、イボタノキ、クリ 、イタドリ、リョウブ、シシウド、スイカズラ、ソバなどの主に白色系の花を好む。♂は湿地で吸水することもあるが、♂♀共に汚物や腐果に集まることは稀。
類似種: イチモンジチョウと酷似するが、斑紋が若干相違する。かつては同種とされていた。
保 護: 千葉県:、千葉市:、東京都:(区部・北多摩・南多摩・西多摩)、神奈川県:
その他: 近縁種のイチモンジチョウと混棲することがあるが個体数は少なく、本種は生息 していないことが多い。ただ、地域によっては本種が優占種となることもある。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 幼虫に寄生し終齢幼虫から脱出するコマユバチ類が知られるが未同定。

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