ゴイシシジミ

碁石蜆蝶 (シジミチョウ科)


2002/07/27 12:15 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 小型のシジミチョウ。ササやタケが生い茂った薄暗い藪の中を、頼りなくちらちらと飛ぶモノクロームの小さなチョウがいたら、それはほとんど間違いなく本種である。翅表は地味な暗褐色だが、裏面には名前のとおり白地に碁石のような黒斑を多数散らしており、そのコントラストが非常に目に鮮やかである。わが国では唯一の純肉食性のチョウで、幼虫はタケやササにつくアブラムシ、成虫はそのアブラムシの分泌物を吸い、共に植物質の餌をまったく食べない。
 写真は、千葉市緑区で9月下旬の午後、林縁の下草上で休む夏型の♂である。翅表は黒褐色で一様な地色だが、春型の♀は翅の中央に白色斑をもつ個体が多い。性差は斑紋に表れず、♀が♂よりやや大きく、翅が若干丸みを帯びる程度なので、区別は結構難しい。また、県内にはこれと似た種はいないので、まず見間違えることはないだろう。
 県内では5月上旬~10月上旬まで見られるが、春には少なく、晩夏以降に数を増やす。産地はやや局地的な傾向を示すが、発生地での個体数は決して少ないわけではなく、群れ飛ぶ姿を見かけることも多い。また、団地など里山に隣接する市街地の裏山に多数発生することがある反面、一見安定しているように見える発生地から忽然と姿を消したりする。頼りなく飛ぶ姿からは想像もつかないが、成虫の移動性はかなり強いものと考えられている。ちなみに英語圏では、その斑紋から"Forest Pierrot (森の道化師)"と呼ばれている。



ゴイシシジミ 原名亜種 (シジミチョウ科 カニアシシジミ亜科)
Taraka hamada hamada (H.Druce, 1875)
分布 国内: 地海道南部、本州、四国、九州。島嶼では屋久島以北。各地に産地があるが、やや局地的な傾向を示す。
県内: ほぼ全域に棲息するが局地的。
国外: 朝鮮半島南部、台湾、中国南部~ブータン、インドシナ~マレー半島、スマトラ、ボルネオ、ジャワなどに分布する。原名亜種は日本産で分布の北限にあたる。基産地は「本州」とされるが詳細不明。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: やや不明瞭。斑紋が若干異なる。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: ほぼ同型。♀は♂より翅形が丸みを帯びる。♀は前翅表に薄い白色斑紋をもつことがある。
生態 環境: ササやタケが繁茂する薄暗い樹林周辺や林内。
発生: 多化性通常年3 回。寒冷地や山地で2回~3回、暖地では5回~6回程度発生する。
越冬: 幼虫。齢数や越冬状態は不明。
行動: 昼行性。飛翔は緩やかだが、 一旦飛び立つととまることなく飛び続ける。曇天時や夕方に活発となり、梢の上などを高く飛ぶこともある。移動性は比較的強いといわれる。産卵はアブラムシ類のコロニー内に1個ずつ行われる。
食性 幼虫: 捕食性。日本産唯一の純肉食性のチョウ。ササやタケにつくタケツノアブラムシササコナフキアブラムシなどを捕食する。
成虫: 動物食/分泌物アブラムシ類の分泌物のみを吸汁する。訪花性や吸水性はない。
類似種:
保 護: 東京都:A(区部)
その他: 食餌の関係から産地は局限されるが、棲息地での個体数は決して少なくない。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 不明。

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