アカシジミ

赤蜆蝶 (シジミチョウ科)


2002/06/15 12:20 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 やや大型のシジミチョウ。一般にゼフィルスと呼ばれるミドリシジミの仲間では比較的早く姿を現す種。九州や四国では5月上旬には出現するが、県内では平地のクリの開花と歩調をあわせ、ミズイロオナガシジミやオオミドリシジミとほぼ同時に6月上旬に出現し、中旬以降に最盛期を迎える。似た環境に住むウラナミアカシジミより1ヶ月ほど発生が早い。また、ウラナミアカシジミと比較して環境への適応力がやや高く、周囲が開発されて、ぽつんと残ったような雑木林にも棲息しつづけることがあるが、近年はやはり減少傾向が著しい。
 写真は、千葉市緑区で7月上旬の午前中、雑木林の下草にとまって休息する♂である。現在の感覚では「赤」シジミというより「茜」シジミといったほうがしっくりする色合いである。翅表には♂♀共に茜色の地色の先端に黒いアクセントがある。性差は斑紋に表れず、♀は♂よりやや大型で翅が若干丸みを帯びるという程度なので、区別は結構難しい。ムモンアカシジミやキタアカシジミ など近縁種にに酷似したものが多いが、共に県内には分布していないので見間違えることはない。
 ♂♀共に訪花性は強く、クリなどで吸蜜する個体を見かけることが多い。典型的な黄昏飛翔性の種で、午後5時頃から日没前後まで、林内の比較的高い場所を、♂が♀を探してさまようように飛び続ける。夕暮れ迫った雑木林の樹冠に、ちらちらとこの蝶が舞う姿は幻想的で、とても美しい。皆さんも一度見てみてはいかがでしょう。浮世の雑事を忘れられますよ。



アカシジミ 原名亜種 (シジミチョウ科 ミドリシジミ亜科 ミドリシジミ族)
Japonica lutea lutea  (Hewitson, [1865])
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。四国と九州の南半部には分布しない。島嶼からの記録はない。
県内: 市街地を除くほぼ全域に棲息するが、北部では稀。
国外: 朝鮮半島、沿海州(アムール)、台湾山地、中国大陸東北部~チベットに分布する。原名亜種は日本、朝鮮半島、中国(東北部)産をさす。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節:
性差: ほぼ同型。大きさや斑紋に差はないが、♀は♂より翅形が丸みを帯びる。
生態 環境: 平地の里山や低山地の落葉広葉樹林。林内などの暗い環境を好む。環境変化には比較的適応力があり、開発から取り残されたような里山環境にも棲息することがある。
発生: 年1回。本州の平地では5月下旬、寒冷地では7月上旬に出現する。
越冬: 。ただし、卵内では年内には幼虫体が形成されている。
行動: 昼行性(黄昏)。日中はほとんど活動せず、夕刻から活発に活動するが、日没直前がそのピークとなる。飛翔は緩やかで、梢の上などをとまることなくさまようように飛ぶ。産卵は食樹の小枝の分岐部や休眠芽の基部などに1個ずつ行われるが、母チョウによって完璧なまでにカムフラージュされており、発見するのはきわめて困難。産卵位置についてははっきりない面もある。
食性 幼虫: 食植性/新芽若葉ブナ科落葉樹コナラクヌギ、アベマキ、ミズナラ 、カシワ、ナラガシワなど(ナラ類)が主。稀にウラジロガシ、アカガシ、アラカシ、シラカシなどのブナ科常緑樹(カシ類)でも生育する。若齢時は新芽に食い入り内部を食べ、中齢以降は若葉を食べる。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、クリ、シシウド 、ウツギ、イボタノキ、ハシドイなど主に白色系の花で吸蜜する。
類似種: チョウセンアカシジミ、キタアカシジミなどに酷似するが、県内には分布しない。
保 護: 千葉県:C、東京都:D(区部)
その他: 開発などにより近年減少傾向にある種。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: ヒメバチ科ヒメバチ亜科のアカシジミヒメバチ(Anisobas diminutus (Uchida, 1926))が知られる。

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