シルビアシジミ

シルビア蜆蝶 (シジミチョウ科)


2006/04/30 10:50 鴨川市西 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 小型のシジミチョウ。ヤマトシジミとそっくりで、混生することも多く、慣れないとほとんど区別がつかない。ただ、ヤマトシジミが市街地を含めどこにでも生息する種であるのに対し、本種は非常に産地が局限され、特に春型は個体数が極めて少ない。
 写真は、鴨川市西で4月末の午前中、生息地の草原で休息する低温型の♀である。性差はヤマトシジミと同様に翅表の斑紋に表れ、♂は空色、♀は黒褐色なので翅表さえ見ることができれば一目瞭然。第1化の春型はその後の夏型よりはるかに大きく、写真のように♂♀共に高温型より青色鱗が発達し、♂は外周の黒色帯が狭くなり、♀は翅中央部に青色部があらわれる。ルリシジミやツバメシジミ、ヤマトシジミと似るが、ルリシジミよりやや小さく、ツバメシジミのようなしっぽを持たないので簡単に区別できる。なおヤマトシジミとは裏面の斑紋が若干異なる程度であり、翅表ではほとんど区別できないが、青色鱗の色調は本種のほうがやや深い色である。
 県内では4月下旬~10月下旬まで見られ、春型(第1化)の羽化は食草であるミヤコグサの開花とほぼ同時となるようだが、いっせいに羽化するわけではなく、同一産地でもスれた個体と新鮮な個体が混在する。訪花性は強く色々な花に集まる。飛翔はヤマトシジミより敏速で、やや落ち着きのない飛び方をするが、長い間飛び続けることはなく、すぐに付近の草上や地上などにとまる。またとまるときには、直前に翅を閉じ、すとんと落ちるように着地することもある。草丈の低い草原に生育するミヤコグサに強く依存しており、多くの草原性のチョウと同様に各地で個体数が減少しており、環境省のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類に指定されている。



シルビアシジミ 日本本土亜種 (シジミチョウ科 ヒメシジミ亜科 ヒメシジミ族)
Zizina otis emelina (de l'Orza, 1869)
分布 国内: 本州、四国、九州。近畿以東は太平洋岸のみで、北東限は栃木県宇都宮市付近。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では隠岐、対馬、五島列島、種子島、トカラ列島、奄美大島以南の南西諸島のほぼ全域で記録されている。
県内: きわめて局地的。銚子市周辺と房総丘陵の嶺岡山系周辺に産地が点在する。
国外: 東洋区~豪州区の熱帯~亜熱帯地域に汎く分布する。
変異 形態: 日本産は吐喝喇列島の悪石島以北と宝島以南(ssp. riukuensis (Matsumura, 1929))の2亜種に分けられる。
季節: 日本本土亜種では明瞭低温型(春秋)、高温型(夏)が知られる。また、第1化個体は第2化以降よりはるかに大型。
性差: 異型。♀は翅表の黒褐色部が♂より広い。
生態 環境: 田畑周辺や人家近く、野原や路傍、河川敷など、定期的に草刈が行われているような草丈の低い草原的環境。
発生: 多化性通常年4回5回。寒冷地では3回~4回。暖地では5~6回、南西諸島では周年発生している。関東以北では特に秋に個体数が増加する。
越冬: 幼虫(3齢~終齢)。幼虫は秋に気温が下がると食草を下り、地上の落ち葉の隙間や石の下などで越冬する。巣などは作らない。冬季でも完全には休眠せず、温暖な日には食草に登って摂食する。
行動: 昼行性。飛翔は比較的敏速で長く飛び続けることはなく、すぐに草上や地上に翅を開いてとまる。ただ、ほかのチョウが飛び回っているときでも本種はじっとしていることもあり、活動についてはややはっきりしない点がある。一生を通じて食草に依存し、その群落から遠く離れることはなく、棲息範囲もきわめて狭い。産卵は食草の葉表などに1個ずつ行われる。
食性 幼虫: 食植性/マメ科ミヤコグサコメツブウマゴヤシなど。飼育の際にはシロツメクサが代用できるというが、野外で利用しているかどうかははっきりしない。若齢幼虫は葉裏から舐めとるように食べて表皮組織を残すが、2齢以降は葉縁から食べる。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タンポポ類、ヒメジョオン、ハルジオン、シロツメクサ、キツネノマゴ、ツルボ、センダングサ類など多くの花で吸蜜する。
類似種: ヤマトシジミと酷似するが、裏面の斑紋が相違する。
保 護: 環境省:CR+EN、千葉県:、千葉市:、神奈川県:En、東京都:(全域)、埼玉県:Ex、群馬県:CR+EN
その他: 産地はきわめて局限され、一般に個体数は非常に少ないが、秋には個体数が増加する傾向がある。県内ではかつて銚子付近の産地が有名だったが、この産地ではほぼ壊滅したという。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、キリギリス、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリ、コカマリキリなどのカマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 不明。

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