チャバネセセリ

茶翅挵蝶 (セセリチョウ科)


2003/7/28 12:10 木更津市菅生 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のセセリチョウ。河原や公園、田畑周辺などの陽光あふれる開けた環境を好む種。県内では通常年3回発生し、5月~6月中旬、7月~8月、9月中旬~10月に姿が見られる。イチモンジセセリやオオチャバネセセリと混生することも多いが、これらと比べると個体数はやや少ないようだ。 英語圏では"Small Branded Swift"と呼ばれている。
写真は、木更津市菅生で7月下旬の正午過ぎ、林縁の低木上で翅を閉じて休息する夏型の♂である。後翅の小白斑が円弧状に並ぶ様子がよくわかる。季節変異はやや不明瞭で、春型は翅表の白色斑が消失する個体が多い 程度。性差は翅形や大きさ、斑紋に表れず、♂の前翅表には線状の性標があるので翅表さえ見ることができれば簡単に見分けられるが、裏面だとほとんど区別できない。
東北以南の広い地域で見ることができるが、土着地は関東以西の太平洋岸に限られる。県内では6月には姿を見せるが、イチモンジセセリよりやや早く、夏以降に個体数を増やす。ウラナミシジミやイチモンジセセリなどと同様に気温の上昇と共に世代を繰り返しながら北上し、冬の訪れと共に土着地以外では死滅するというサイクルを繰り返 しているらしい。越冬態は幼虫だが、近似種とは異なり非休眠。少しずつ摂食しながら成長する。また、イチモンジセセリより寒さに弱く、土着北限付近では冬の寒さに耐え切れず死ぬ個体も多いという。



チャバネセセリ 日本周辺亜種 (セセリチョウ科 セセリチョウ亜科)
Pelopidas mathias oberthueri  Evans, 1937
分布 国内: 本州(関東以西)、四国、九州。島嶼では佐渡、伊豆諸島、隠岐、対馬、壱岐、五島列島、南西諸島全域。
県内: 晩春までは北部で見かけることは稀。夏以降は県内全域に広がる。
国外: 朝鮮半島、台湾、フィリピン、中国(中南部~西部)、ヒマラヤ、インド、カシミール~アフリカ北部 、セイロン、アンダマン、ニコバル、インドシナ、マレー半島、スマトラ、ジャワ~小スンダ列島、セレベス、ニューギニアなどに汎く分布する。原名亜種はインド周辺産で標式産地はインド南部のトランケバル。本亜種は朝鮮半島、台湾、中国大陸産を含む。本亜種の標式産地は「河北省天津」。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: 不明瞭。大きさが相違するが斑紋などには現れない 。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: ほぼ同型。斑紋に差がなく、♀は♂より大型で、翅形が丸みを帯びる。
生態 環境: 林縁的環境や日当たりのよい開けた草原的環境を好む。
発生: 多化性。通常は年3回4回。5月頃に姿を現す。南西諸島ではそれ以上と考えられるが不明。
越冬: 幼虫(齢数不定)。 食草の葉を巻いて巣をつくりその中に潜む。九州南部以南では非休眠。
行動: 昼行性。飛翔は比較的敏速で、直線的に飛ぶ。成虫の拡散性は強く、ウラナミシジミやイチモンジセセリなどと同様に毎年気温の上昇と共に棲息地を北に広げ、冬の訪れと共に土着地以外では死滅するというサイクルを繰り返している。 日光浴などの際には後翅全開、前翅半開の姿勢をとる。
食性 幼虫: 食植性/イネ科ススキチガヤ、アブラススキ、メヒシバ、イヌビエ、イネなど。を食べる。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タンポポ類、シオン類、アザミ類、ウツギ、イボタノキ、シシウド、オカトラノオ、ハギ類、セイタカアワダチソウ、キク類、ツルボなどさまざまな花で吸蜜する。
類似種: ミヤマチャバネセセリに似るが、後翅裏面の斑紋が相違する。
保 護: 群馬:注目。
その他:
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類やサシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、大型~中型カマキリ類、造網性クモ類。
寄生: アカヒゲフシヒメバチ(幼虫)、ヤドリバエ科のPhryxe heraclei (Meigen)、Senometopia prima (Baranov)、Halidaia aurea Egger、ヒメバチ科チビアメバチ亜科のマツヤマチビアメバチ(Casinaria matsuyamensis (Uchida, 1928))、ヒメバチ亜科のヨコハマヒメバチ(Hoplismenus obscurus Kriechbaumer, 1893)、ヒラタヒメバチ亜科のコキアシヒラタヒメバチ(Apechthis capulifera (Kriechbaumer, 1887))が知られる。

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