「まただな・・・」
司令部内を歩いているとまたあの視線を感じた。
ネットリと内部まで見透かされるような嫌な感じがする、そんな視線。
アルフォンスが注意するだけある。
普段は視線など頓着しないのだが、警戒している分、より嫌な気分にさせられる。
「しっかし、最近多くなってきたな〜・・・」
司令室に戻るとエディスは盛大なため息をついた。
「どうしたんすか?」
あまりにも大きなため息だったせいか、ハボックが心配そうに声をかけた。
滅多な事で弱音を吐かないエディスが自分しかいないとはいえ盛大なため息をついたのだ。
心配するのはしょうがない。
「最近やたらと変な視線を感じるんだよ」
「例のヤツっすか?」
「多分な。全く、俺に当たってもしょうがないのに」
「目立ちますからね、中将は」
「嫌な目立ち方だな」
「しょうがないっすよ。上層部は優秀な人程煙たがりますから。それに中将は軍人に人気ありますし」
「そうなの?」
「女性士官の憧れらしいっすよ、中将と大尉は」
「へぇ〜。リザの射撃の腕は一流だしな。そんな恋人を持つハボックは大変だな」
驚愕するハボックにエディスはただ不適な笑みを向けるだけだった。
「な、な、なんで知ってるんすかっ!!」
「ロイや他のヤツは分からねぇかも知れないけど、やっぱ違うんだよね、リザの表情」
「俺しか分からないと思ってたのに」
「ロイは欺けても俺は無理だよ。どうだ、同棲生活は」
「そんな事まで知ってるんすか」
「だって俺が言ったんだもん。『大きな犬も飼えば』って」
「あん時の犬って俺だったんすか!!」
「リザはすぐ気付いただろ」
「確かに・・・」
「犬っぽいからな、ハボックもロイも」
満面の笑みで笑うエディスにハボックはただ呆然とするしかなかった。
後でリザに聞いたら、パーティーに呼ばれた時、去り際に「ハボックの名前借りてごめんよ」と耳打ちされたらしい。
そんな時から気付いていたんだ、とエディスの洞察力の鋭さにただただ感服せざるを得なかった。
そんな優秀な人材だから。
上層部は煙たがるのだろう。
部下にとってみればこんなに着いて行きたい上司はなかなかいないのだが。
「結婚する時はちゃんと報告しろよ」
「考えてはいますけど・・・でもそうすると離れ離れにならないとダメじゃないすか。折角まとまってるのに混乱させるのもな、と思って・・・」
「そんときゃ俺の下に来い。そうすればロイ直属にならないから」
「でも准将は中将の直属ですよね?」
「いや。俺、直属の部下がいないからロイに付いてただけ」
「なかなか面倒くさい事になってるんすね」
「ま、こっちにきたらそうもいかないから編成する事になってるから。そうすると一緒とはいかないけど、他に回されるよりはマシだろ?」
「そうっすね。中将の下ならやりやすいですし」
「んじゃ、決定。あとは誰にすっかな〜・・・」
ぐしゃぐしゃに髪をかきながらエディス思案にくれていた。
なかなか人選が難しいらしい。
息抜きついでに散歩してくる、と告げエディスは部屋をあとにした。
next
18/02/2006