雪に彩られて煌めく街中の雑踏を抜けて
涙を流した
何故なら俺は知ってる
だってあいつが教えてくれたから
誰かと側にいて
それはとても暖かなものだった
初めて知ることが出来た
でも、そのきかっけは、もう…


ある日オレは一人の少女に出会った
少女は言った
「何故、黙ったままなのですか」と
俺は言った
「喋る筋合いなどはない」と
俯くと少女は立ち去った
けれど次の日も、その次の日も
少女は俺を訪ねた


ある日耐えきれなくなった俺は
自ら少女の下へと赴いた
もう来るな、と言わんがために
少女は、泣いていた
「また、独りになってしまった」と何度も繰り返しながら

俺は、動揺した
何故なら誰かが俺を求めていたのだから
こんな俺でも誰かの力になれるだろうか
いつも見せる笑顔の裏に咲く涙の花は
触れれば折れてしまいそうだった

何を泣いている
何故動揺する
俺は何を求めている
孤独に生きる
孤独から逃れるために孤独を愛す
そんなことはできない
人生を見限ったヤツならともかく
まだ何も知らない少女には


「ごめんね」
そんな言葉を知っているのならとっくに使っている
ただ、不器用で…
俺は孤独に負けた。


俺は相変わらずだったけど
側にいるだけであいつは笑った
俺の病室に来るたびに花を添えて
俺に適当な話をして
…俺はこれでいいのだろうか
温もりを知らない俺は温もりに疑いを持たずにいられない
あぁ!俺はこいつといるたびに俺を失っていく
…ただ側にいたいだけなのに

ある日、少女の様態が急変した
主治医の話では再び意識が戻るかどうかも分からない
だのに俺はどうすればいいか分からない
あいつを、…
苦しそうに呼吸を繰り返す少女の姿は
やがて俺の心を追いつめていった
俺はこの少女と関わりすぎたのだろう…
胸が苦しい
俺に出来ること
こいつを楽にしてやれる唯一の方法
この手で、
殺してやること…




あいつがいなくなって
数ヶ月が過ぎた
街は雪とイルミネーションに彩られて
あいつが生きていれば一緒に幸せそうに過ごせたのだろうか?
いつもみたいに楽しそうに笑ってさ
なぁ?


俺は
もう独りに戻れないよ…
幸いか災いか病院には薬が沢山あった
…俺は、あいつの側に行ける
そう、もうすぐ逝ける
この夜に、雪と共に消えよう
あいつは哀しむかもしれないけれど
もう戻れない
躰が重く、そして軽くなっていく
そのときまで俺は気づかなかったけれど
俺、泣いてた
俺にもこんな感情があったなんて
きっと俺もお前の側で、笑える…
あぁ
ぼやけていく
俺が
世界が
視界が
そしてあいつが




雪は、今もしんしんと降り続けている
空に帰る誰かを待つように
この夜に
一人の青年は



恋を知った