あのとき、僕は、この手で君のことを消した。
いや君が僕を残し消えただけなのかも。
「…これでよかったのかな…」
瞬けば頬に涙。
「貴方が正しいと思ったことなのでしょう?」
と慰めの言葉を浴びる。
正しいと思った。
正しいはずだった。なのに…
「………。」
頬に手をあてれば濡れる指先を見つめる。
さよならを言うべきだったんだ。
僕達以外誰もいなくなった白い病室の窓のブラインドをあげる。
サ、と射す光が眩しすぎた。
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codeine

部屋に残る貴方の薫りを捜した
シーツの窪みも消えてしまった

窓の縁で風に揺れる貴方の髪とブーケ
今も忘れはしないよ優しくほほえんでいた
  
「哀しいのなら何故泣かない?」
哀しいから、あぁ、泣けない…
「哀しいのなら何故泣かない?」
涙はもう枯れ果て…

  
「ねぇ…ほんとにこれで良かったのかな…」
「あなたが正しいと思ったことなんでしょう?」
「正しい、正しいと思ったんだ…でも
でも…どうしてこんなに哀しいのかな…?」
「哀しいなら、どうして…泣かないの?」
「泣けないよ…だって俺にはまだ、
まだ彼女の笑う姿が、忘れられない…」
「でも、貴方は笑っているべきよ…」
「笑う?」
「そう。貴方がそんなことではあの子も−−−」
「ムリだよ…」
「笑うなんて、…ムリだよ…」
「だって俺は」
「だって俺が彼女を

…殺した…


散ってしまったブーケ片づけもしないで
白い部屋の窓で風に揺られる

  
「哀しいのなら何故泣かない?」
哀しいから、あぁ、泣けない…
「愛しいのなら何故殺した?」
愛しいから殺した

どうか微笑んで、もう一度…
動かぬ躰、抱き寄せた