1 高機能広汎性発達障害
DSM−W(※)によると、広汎性発達障害とは、自閉症障害やアスペルガー障害の定義には合致しないが、「自閉症的な」子どもたちに
適用する障害名です。その特徴は、
@相互的対人関係の質的問題(視線の合いにくさ、感情表出・理解や共同注意・共感性に関する問題)
Aコミュニケーションの質的問題(言葉の遅れ、オウム返し、会話の困難、想像的遊びの困難)
B行動・興味・活動のパターンが幅が狭く反復的・常同的
であるとされています。さらに高機能とは、IQ70以上であきらかな知的障害がない場合に使われます。
その原因は、中枢神経系の機能異常と推定されていますが、明らかになっていません。
※DSM−W=アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアルのこと
2 高機能自閉症
高機能自閉症とは、自閉症のうちで認知や適応機能の高い場合に使われます。境界知能から平均以上の知能を持つ自閉症あるいは
精神遅滞を伴わない自閉症の意味で使われています。
3 アスペルガー障害
DSM−Wのアスペルガー障害の診断基準には、社会性と反復的行動の項目は自閉症障害の診断基準のままで、コミュニケーションの
障害の項目がありません。さらに、「二歳までに単語を用い、三歳までに意思伝達的な句を用いる」こと、認知の発達などで臨床的に明らかな
遅れがないことが条件として加わります。つまり、コミュニケーションや認知の発達に障害がなく、社会性の障害と反復的行動が見られる場合
に下される診断名です。
4 自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラムとは、ウィングの提唱した概念です。それは、カナーの提唱した自閉症に、アスペルガーの提唱したアスペルガー症候群、
さらにその周辺にあるどちらの定義も厳密には満たさない一群を加えた比較的広い概念で、@社会性、Aコミュニケーション、B想像力の
三領域に障害があることで定義されます。
「スペクトラム」とは、連続体という意味であって、典型的な自閉症からアスペルガー症候群、重度の知的障害をともなう例から知的な遅れが
ない例まで、連続した一続きのものとみなします。
(1)社会性の障害
社会性の障害とは、他者との交流がスムーズにいかないことをさします。ウイングは、社会性の障害を@孤立型、A受け身型、
B積極・奇異型の三つのグループに分けています。
高機能の場合は、慣れ親しんだ環境では社会性の障害は目立たないことが多く、構造化されていない場で問題が表出しやすいです。
発達早期からなんらかの対人交流の障害があります。(乳児期、母乳を数時に母親の目を見ないとか、人よりも物や景色に関心があったとか、
一歳を過ぎても指差しをしなかったとか)
(2)コミュニケーションの障害
@表現能力
細部にこだわった話し方をしたり、親しい家族や友人に対して丁寧語で話したり、逆に目上の人にくだけすぎる口調で話したり、ことわざや
慣用句を使いすぎて不自然になったりと、表現能力の現れ方に問題が見られます。
A言語理解
助詞や接続詞が抜けたり、「行く」「来る」「そこ」「ここ」など視点によって表現が異なる語句の理解で混乱したりします。また、言葉を字義通り
に解釈するので、慣用表現やことわざの理解の場面や、日常会話で「仕事が多くて、縛られている」などと言われて
「どこに縄があるんですか?」と聞き返すなど、周囲と会話がかみあわないことがあります。
B非言語性コミュニケーション
幼児期には、注意を共有する指差しが二歳や三歳まで出現しないことが多いです。ほかにも表情や姿勢が単調だったり、不自然だったり
することが多く、談話の内容を身ぶり手振りで補ってコミュニケーションすることが苦手です。
(3)想像力の障害
幼児期には、ごっこ遊びや想像的な遊びの乏しさという形で現れます。ごっこ遊びをしているように見えても、反復的な模倣遊び(経験の
断片の再生)をします。たとえ子ども同士のごっこ遊びに発展しても、相手に合わせて柔軟に役割を交換したり、遊びのルールを改変したり
しないために、子ども同士のシナリオを無視してしまいがちで長続きしないのが特徴です。
想像力の問題は「こだわり」につながります。ある動作を反復したり、同一性を維持しようとする傾向のことです。普段は目立たない
「固定された習慣(ルーチン)」の変更が必要な場面になって混乱したり不機嫌になったりと、その時はじめて「こだわり」であることがわかる
場合もあります。
5 軽度発達障害
6 発達障害
発達障害とは、発達過程の中で、子どもの内的・外的原因によって、その身体的・精神的構造や機能が部分的または全体的に阻害され、
一般とは異なる状態がもたらされた場合をいいます。発達期に起こり、その後もその状態が続き、以後の正常発達も阻害されてしまいます。
しかし、障害は固定・不変なものではなく、発達とともに変化するという認識のもと、それぞれのライフステージにおけるより望ましい発達
援助の手がかりを見つけ出していくことが大事です。
7 地域発達支援システム
自閉症スペクトラム上に位置する子どもたちは、成人期までに自閉的行動の現れ方が変化し多様化してきます。幼少期・少年期・青年期・
成人期、それぞれのライフステージにおいて、本人の持つ障害を最小限にして、潜在的な能力やスキルを最大限に発揮できるように、
環境的援助を注意深く計画し、療育環境を整え、その子に合った日課のプログラムを創ることが重要です。
環境的援助を本人の発達段階に合わせて個別に計画し、一貫性のある援助をしていきます。そのことが本人の自立性の発達を促します。
困難すぎる状況を調整していく方法を獲得できる援助等によって、変化する環境に適応できる柔軟性を身につけることができるよう促します。
その時期に必要な援助の内容と方法は、ライフステージによっても変化してきますし、親以外の援助が必要になってくるので、積極的に
発達支援サポートを受ける必要があります。
家庭では、親が発達障害の専門家の意見を取り入れながら、本人に合った家庭環境の援助を計画し、実行します。
学校生活では、子どもが関連づけながら学習を進め適切な反応ができるように親と教師が中心となって学習の順序や環境を整理
しなければなりません。
学校と家庭生活以外では、地域社会のサポートが必要です。まずは各地域の自治体の発達相談窓口や児童相談所・療育センター等の
公共機関を気軽に利用しましょう。必要かつ希望するならば、各関係諸機関へ紹介してくれます。
発達障害や精神医学的問題を抱える場合は、作業療法士・理学療法士などの医療スタッフと児童精神医の診断と治療が必要です。
児童期・少年期においては、気の合う友達とのコミュニケーション経験が必要ですが、そのような友達との出会いの場・発達支援
ボランティアスタッフとの交流の場として親の会主催の本人交流会の意義も深いでしょう。
青年期にあっては、人間関係においてスムーズにいかないことへの苛立ちから、様々な心の葛藤を抱き、問題行動へと発展する場合は
、カウンセラーの援助の必要性も出てくるでしょう。
職場では、本人が仕事内容を理解し慣れたり、仕事を行う際に必要なコミュニケーションの取り方などをサポートするジョブコーチの
援助も必要になるでしょう。
各ライフステージにおける本人に必要な支援計画を立て、各機関と連携しながら援助内容をコーディネートしていくディレクターは、
発達障害を持つ子の親の心強い味方です。
以上のような様々な支援は、本人が地域社会で本人らしく生きていくために必要です。
8 地域で各ライフステージにわたって一貫性のある支援を受ける
9 デイレクター
10 発達支援ボランテイア
11 エンパワメント