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    Faithful  Cool, but cozy〜another day



    「――中佐を見ませんでした?」
    リザ・ホークアイ少尉は、同僚達に尋ねた。
    そこに得られる返事に、一片の期待もしてはいなかったが、一応。
    「ずらかったんじゃないっすか?」
    「ぬはっ、デートだな、デート!」
    「そんなぁ、決めつけちゃ失礼ですよ……」
    「疑いは濃厚ですな」
    リザは無言で拳を握りしめた。

    ――逃げられた。

    しばらく大人しくしていたかと思ったら、またぞろいつものサボり癖が顔を出してきた。
    思えばこちらが普通であって、真面目に仕事をするロイ・マスタングなど、
    遅い麻疹(はしか)にでもかかったのではと疑うほどだったのだ。
    「ホークアイ少尉、お困りですか?」
    一番新参の部下が心配そうにこちらを見ている。リザは、ふっと笑って自分の席に戻った。
    「いえ、今日のところ困ることはないのだけれど……」
    何でもかんでもギリギリだから、今日は本当に今日ギリギリのものしかやっていない。
    これではいつまで経っても、仕事に追われる日々を改善できやしない。
    とはいえ、逃げられたものはしょうがない。

    珍しく人前で溜息などついてしまう。
    「――少尉」
    「え?」
    はす向かいにいた同僚の声に、ふと顔を上げる。
    「ピアス、最近変えられたのですね」
    「え? ええ……」
    無粋な男の寄り合い所だから、誰も気付くものなどいないかと思っていた。
    「ルビーですか?」
    「ガーネットなの」
    「ほう、柘榴(ざくろ)石ですか。古代から守護石とされた最古の宝石ですな。
     ガーネットは青以外のほとんどの色が揃う石で、赤系ですと鉄・アルミニウムを
     多く含んだアルマンダイトと、マグネシウム・アルミニウムを含んだパイロープ、
     その中間がロードライトになり化学式は――」
         (中略)
    博識な同僚は、流れるように語った。
    「そして石自体は『真実の愛』、『忠実』、『変わらぬ思い』などの意味を持ち、
     持ち主の運命を永遠に守り、また愛する者の夢を自分の夢として叶える石だと
     言われています」
    「…………そうなの?」
    リザは、思わずピアスに手をやった。
    「よく、お似合いですよ」
    「有り難う……」
    何だか頬が染まりそうで、悟られぬよう、彼女はさりげなく顔を背けた。
    「ただ、不思議な話ですが、その石は持ち主に対する変わらぬ愛情を持つ代わりに……
     持ち主が他に心を移すと、その愛も消えると言われているそうです。
     随分と嫉妬深い石ですな」
    リザは、「あらまぁ」と目を丸くした。

    「石一つに、随分色々とあるものなのね」


    ――あの人は……知っていたのかしら?

    どうせ、白状しやしないけれど。
    リザは、そっと胸の内で笑みをこぼした。






    2.6.2004.


    数年前の皆さんの階級が分かりましぇーん。そもそも居たのか? 
    オマケ話だから、深く考えません。
    ここまでお付き合いいただき、有り難うございました!




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