一口に板金塗装といっても、そこには板金工の仕事と塗装工の仕事があります。そしてそれぞれに悩みがありますが、
ここでは難しいといわれる塗装工の仕事を簡単に見てみましょう。
塗装をするにはまず先に、板金工程のパテ塗りまでが終了していなければなりません。そしてそれからが塗装工程に
なりますが、最初に塗装の下地作りで、サフェーサーと呼ばれるものを均等に塗ります。それから塗装の下塗り、
そして上塗りをして仕上げます。
この工程は新車の時には少なくとも3〜4工程、高級車はさらに多くの中間塗りの工程がありますが、一般的に再塗装では
下塗りの後、1〜2回で仕上げます。そして本当の塗装工の悩みはこの塗りの段階にあります。
ユーザーが一番気にする色合せは、一言で言えるほど簡単ではありません。メーカーの純正色塗料を使っても、
個々の車にピタリと色が合うわけではないからです。くるまの塗装は年月や時間とともに色が退色していきます。
ですから、新車からどれだけ時間が経過しているかや普段、屋根のある車庫に入っているか、野外駐車場に止めているかでも
かなり違ってきます。
一般に紫外線は上から照射されるので、屋根やボンネットなどはドアやフェンダーなどよりも色あせします。
困ったことにフロントフェンダーなどはボンネットと続く上部と、ドアと続くサイド部では色が違ってくるのです。
しかし、こればかりはプロでもどちらかに合わせるしかありません。一枚のフェンダー内で色を変えることは無理だからです。
それから実際の塗装作業も塗装にちりやほこりがつかないように隔離された塗装部屋で塗装するのですが、
この設備の完成度にも塗装屋さんでかなり差があり、注意をしても塗装表面に小さな気泡やゴミ噛みが残ることもあるのです。
そして塗装の悩みはこれだけではありません。いわゆる塗装の肌目といわれる、塗装の粒子の粒の大きさを元の車のそれと
合わせるようにしなければいけません。この作業は塗装するガンの調整はもちろん、塗装する下地の状態、その日の天気まで影響し、
そう簡単にはゆきません。
従って、これら一連の作業が最終的な塗装の肌目とか色合いの微妙な違いになって現れるのです。
最初の工程の下塗り以前のパテ塗りや磨きの段階での仕事が粗いと、完成した塗装表面にパテ跡や
バフ目の跡となって表れます。
結局、板金塗装は当然のことながら、もとの塗装と完全に同じにできるわけではありません。それは塗装職人が出来る限り
もとの塗装と良く似た状態に見えるように、経験と腕によって努力をしているわけなのです。残念ながらプロがみれば、
当たり前ですが再塗装した部位はわかってしまうのです。
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