弟はわたし達の星(小4)

 今年の夏、白いかすりのもようのゆかたをすっかり気に入った弟は、かわいたせんたく物の山の中から
ゆかたを見つけてきては、私やお母さんにさし出し、「早く着せてちょうだい。」と言うようにさいそくしました。
お母さんに着せてもらい、おびをきゅっと結んでもらうと、にこにこして走り回っていました。そして、私のゆか
たとおびを持ってきて、そのゆかたを私にさし出して、「着てちょうだい。」と言うように、さいそくするのです。
私が着ると、とてもうれしそうに、にっこりしました。そして、暑いので、二人とも汗だくになって、テレビを見た
り、ブロックで遊んだりしました。
 弟は3才ですが、言葉を話すことができません。でもいつもいっしょにいるので、私には、何を言いたいのか
がだいたいわかります。私が時々、弟が私にしてほしいこととちがうことをして、
「あ、ごめんね。こうじゃなかったか。」
とあやまることもあります。何かほしい時やしてほしい時は、両手を合わせてパンパンと、一生けん命、「ちょう
だい。」の合図をします。私がねころんでいると、せなかにのったり、だきついてくることもあります。こんな甘え
たしぐさをする弟が、とてもかわいいのです。
 家族で、初めに弟がどんな言葉を言うのか、考えたことがありました。英語かもしれないとか、ドラえもんが
大好きなので、「ドラえもん。」と言うかもしれないとか、いろいろ話題になりました。何年たってからでもいいから、
「お姉ちゃん。」
とよんでほしいです。もし、よんでくれたら、うれしくてないてしまうかもしれません。
 弟のようち園の運動会と夕すずみ会に行った時、私は、初めは、どんな子どもたちがいるのかなあと、
少し不安に思って、どきどきしていました。行ってみたら、みんな明るくてにこにこしていて、とても楽しそう
で、私の不安は、どこかにとんでいってしまいました。弟も、とてもがんばっていました。徒競走も最後まで、自分
の力で走ることができたし、絵あわせのきょうぎもじょうずにできました。うれしい時は、グルグル回って、体いっ
ぱいでよろこびを表していました。夕すずみ会の時は、ずっとゆかたを着て走り回っていました。そんな弟を見て
私もうれしくなりました。
 弟にも、こまることがあります。それは、私の髪の毛をひっぱったり、つくえの引き出しを開けて、中の物を出し
たりすることです。先に起きると、まだ私が眠いのに、遊びたくて私を起こします。何回言ってもきかない時は、
おこることもあります。でもこのごろは、「だめ。」というのがわかるようになりました。おこっているのに、にこにこ
してだきついてくると、かわいくてついゆるしてしまいます。中学校の二人のお兄さんたちもわたしも、そんな
むじゃきな弟が大好きなのです。
 こんな私達家族が、考えさせられた一つのできごとがありました。それは、八戸線の電車の中でお母さんが見た
中学生の行いです。
 6月のある日、お母さんが用事で電車に乗って出かけたそうです。その電車に、中学生何人かが乗ってきて、
初めは楽しそうにしていたそうですが、そのうちに、一人の中学生が、
「しょうがい者のまねをすると、ただだ。」
と言い出し、体をよじらせたり、変な言い方をしはじめたそうです。もちろん、やっている人たちはじょうだんのつも
りだったでしょうが、私のお母さんは、おどろくと同時に、
「ショックだった。」
と言って話してくれました。少しでもしょうがいのある子を持つ親として、とてもショックだったと。そして、あんまり
だったので、ひとこと注意しようと思ったけれど、言葉を失ったと。
 私もその話を聞いて、ひどいショックを受けたと同時にはらが立ちました。しょうがいをもった人達のことを知ら
ないからそう言うのだと思いました。私は、もっと、しょうがいを持った人のことを知ってほしいと思います。
知ることが理解へつながると思うから。
 弟の名前は「すばる」といいます。すばるは星の名前で、おうし座の中にあります。ぼやっと光っているように見
えます。それは、ベガやアルタイルのように一つの星が光っているのではなくて、六つの小さい星が集まってキラキラかがやいているからです。私も弟のすばるも、兄弟や家族みんなで力を合わせて、キラキラかがやきたいです。