鬼(キ)


 この鬼は昔話などに出てくるオニとはまったく性質を異にするものである。オニは神話と言う歴史の中で歪められてきた古代人の総称であるが、鬼(キ)は上記の気の項目で解説した陰の気に引き寄せられる陰の形質をもつ霊質である。

 陰の気によって引き寄せられた鬼は陰の気を発し、さらに鬼を集めると言う循環が出来上がる。このような場所は一般的に“オバケの出そうな場所”と判断される場所である。墓所などが良い例である。では、陰の気を持つ人に鬼が集まった場合はどうなるか?その人の心の持ち方によるが、大抵の場合、その人も鬼に魅せられる。

 鬼はその惹きつけられた陰の気が持つ記憶により性質を変化させる。もっとも、大抵の場合、恨みや怒り、悲しみと言った負の感情で形成され、そう言った感情を発している。しかし、感情は持つものの、意思を持つ存在ではないため、それが人間に直接的な被害となることはない。問題は陰の気に惹きつけられた人間が鬼と同質の感情を発するようになった場合である。例えば、生者すべてに恨みを発する鬼に魅せられた場合、その人は狂人と化して暴れ出すか、静かに連続殺人に走ったりするだろう。特定の人物に対する恨みで形成された鬼の場合であれば、憑かれた者はその人物に恨みを抱くだろう。

 しかし、負の感情で形成されているとはいえ、すべての鬼が人に悪影響を与えるわけではない。陰の気が持つ性質の中でも現世での利益や財産に惹きつけられた鬼は、人間にそれらを与えてくれる。一般的に先祖霊などと呼ばれるものは、そういった部類の鬼である。

  鬼は太陽の光に弱い。そこで、昼間は陰の気の中に隠れている。つまり、地中の陰の性質を持つ地脈の中か、鬼に魅せられた人の心の中である。鬼が夜に活動するのは夜という時間が陰の気に支配された空間であるからと言うこともある。もっとも、陰の気の力が太陽の光にも勝るようになった場合などは昼間でも姿を見せるようになるだろう。