宇 佐 八 幡 宮 の 石 段
国宝です。

 私は宇佐八幡宮の本殿が好きで、マジカルなふんいきと機知の溶けあった傑作だと思っている。ところで、この建物は周囲を回廊で囲われているため、左斜め前方からのアングルでしか撮影できない。いきおい、諸書において掲載される写真も、だいたい上の画像に近いような構図となることが多いのだが、さて、このアングルで写すと、社殿左手にある石段が必ずそこに写り込む。そして私は、この石段の造形がまた好きなのである。

 この石段のセンスよさは、石段それ自体のデザインもさることながら、石段がとりついている社殿との対比によるところが大きい。プロポーション、スケール、質感の対比、なんかんずく、空にデフォルメされた線を描く、運動感ある建物の屋根と、静止感のある石段の緊密な存在の対比が絶妙だ。

 とはいえ、それだけで見た場合でも、台形を逆さにした石段の造形センスが、驚くほど、モダン・デザインに近いことは特筆にあたいするだろう。東京青山にあるテピアは、プリツカー賞を受賞した世界的建築家である槇文彦氏の設計だが、昔から私は、南側にある外付け階段が宇佐の石段からインスピレーションを得ているのではないかと感じる。テピアに限らず槇氏の駆使する建築言語はモダニズムのものだから、そこから宇佐の石段がその発想のルーツとなりえたようのではないだろううか
テピア南側の外付け階段
2006.05.26


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