++++Wish++++
「よう。ルック君またこんなところにいるの?」
「僕がどこにいようと君には関係ないだろう。」
「いや、それがあるんだよね。」
そう言うと、は僕の隣に立つとまじまじと石版を見る。
僕はその行動に顔をしかめる。
いったい何しに来たんだ?
「何の用なわけ?」
「ん?あ、そうそう、紋章術の専門書、それも稀少本持ってない?」
「貸さないよ。」
「えぇ!!何で!!」
本気で断られると思っていなかったのだろう。が慌てて僕のほうへ振り返る。
「君に貸す義理もなければ必要性も無いよ。」
「・・・・・・仏心とかないのか?」
「無いね。(キッパリ)」
「それって人としてどうかと思う・・・・・・・・・」
「切り裂き喰らいたいわけ?」
この上なく失礼だね君は。
脅すつもりでチャッとロッドを構えると、周りの空気が動き出す。
サスケやフッチ等だったら顔を青くしそうな状況なのに、は風に袖や、前髪を撫でられると、
急に何か思いついたように、意気込んで言った。
「つまり、俺がルックに何かしたげたら義理や必要性が出てくるわけだよな。」
「いらないよ。」
「よし、そうと決まれば早速行くぞ!!」
「人の話を聞いてなかったの?」
は嫌がる僕の後ろ襟首を掴むと、そのままズルズルと引き摺っていく。
どうしてこの城の人間には話が通じないのか。思わず溜息が出てしまう。
しかし、そのままにされるがままになっている。本当は本を貸しても良かったが、何となく気が向かなかった。
別にが嫌いなわけではない。
どちらかといえば必要以上に自分のテリトリーに入ってこないし、迷惑をかけることも殆ど無いので意外と気に入ってはいた。
それにには独特の雰囲気があって、その空気は心地好く、城のみなから好かれていた。
特に動物たちには人気で、聞いた話によるとこの間ムクムクを頭に乗せたまま仕事をしていたらしい。
・・・・・・似合いすぎだよ君。
そんなことを考えていたら、いつの間にか城から少し離れた湖の辺にいた。
どうやら此処が目的の場所らしい。は風に吹かれながら気持ちよさそうに伸びをする。
「で、なんなの?こんなところに連れて来て。」
「こんなところって酷いなぁ。此処は俺の取って置きの場所の一つだよ。」
『いいところだろ?』と言うと、手近かな岩に座ると目を瞑って風を楽しむ。
確かに悪いところじゃないと思う。
照りつけるような日差しは木々のおかげで此処まで届かなし、近くに街道も無いようでとても静かだ。
それに何より此処はいい風が良く吹く。
まさに僕の趣味にぴったりだった。
「悪くないいんじゃない?」
僕にしては最高の褒め言葉。
その評価はにも伝わったようで、驚いて目を見開いている。
・・・何なのさ。
「ルックが褒めてる!!」
「本気で切り裂きを喰らいたいみたいだね。」
結構本気で切り裂きを放つが、あっさりとかわされる。
・・・・・・なんかムカつくんだけど。
僕の不機嫌さに気付いたのか、笑いながら謝ると、隣に座って黙る。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・なぁ、ルック。」
「・・・・・・・・・」
黙ったまま暫く湖を眺めていたが、ふとが口を開いた。
その声はぼーっとした感じだったが、ふざけている様ではなかったので無言で先を促す。
「どうしてルックはこの戦争に参加する気になったの?」
「レックナート様にいわれからだよ。」
「じゃぁ、言われなかったら来なかった?」
「来ないね。」
「本当に?」
「・・・・・・何さ急に。」
の考えている事が分からない。
何でそんなことを聞くのかも、いつにない様子も、らしからぬ質問も。
分からなくてイライラする。
「俺ね時々思うんだ。ルックってに何を求めてるのかなって。」
「僕は何も求めてないよ。」
「そっか。でも俺にはそう見えたんだ。」
「・・・・・・・・・」
さっきまでの心地好い空気はどこかに行ってしまって、ただ気まずい雰囲気が流れる。
はその空気を敏感に察知して、苦笑いしながら『悪い。』と謝る。
僕も仕方なくイライラを鎮める。
「謝るくらいなら最初っから言わないでよね。」
「あはは!!ゴメン、ゴメン!」
はそういうと、いつものように笑う。
僕はふと思いついてに聞いてみる。
「君の場合はどうなんだい?」
「俺?そうだなぁ・・・・・・ぶっちゃけ成り行き?」
「・・・・・・・・・何それ。」
「あ〜俺さ、実家に愛想付かせて逃避行中に傭兵隊に入って、そのままズルズルと。」
「家出か。」
「違うって。ちゃんと許可は申請してきたよ。」
「承諾は?」
「出る前に出てきた。」
「家出じゃないか。」
「・・・・・・・・・そうかも。」
初めて聞くの事情に、僕は不思議な気分になった。
こんな話を他の誰かにしているはずもないし、更にこの場所を知っているのも僕とだけだろう。
そう考えると、変な気分になる。
そんな僕の気持ちなんかちっとも分かってないであろうは、ニコニコ笑いながら『誰にも言うな。』と言う。
いいけどね。
「ところでさ、ルック。」
「何?」
「俺はとっておきの場所を紹介して、ハズカシイ暴露話までしたよね。」
「君が勝手に言ったことだけどね。」
「・・・・・・・・・」
僕が事実を言うと、は恨めしそうに無言で見つめてくる。
・・・・・・そんな眼で見つめないでくれる?
溜息をすると、仕方なく声をかける。
「で、何なの?」
「見返りが欲しいな。」
「・・・・・・・・・」
「稀少本貸して♪」
「・・・・・・・・・全く仕方ないね。」
「マジで!?やったぁ!!」
はぱっと嬉しそうな顔をすると、ぐっと顔を近づけて両手を握る。
思わずドキッとする。
いきなり顔ちかづけないでよ。ビックリするじゃないか。
「ありがとルック!!」
「分かったから、手、離してくれない?」
「あ。うん。
じゃ、直ぐ戻ろ。俺また明日仕事だし。」
「分かったよ。」
僕は立ち上がると、さっさと歩き出す。
道なら来る時覚えたからね。問題ないよ。
「ルック。」
「なに?」
「答えが見つかるとイイネ。」
ざあぁぁぁぁ・・・・
がつぶやいた言葉は強い風で聞こえなかった。
『何?』と表情で聞く。
は隣まで来ると、さっきの言葉をもう一度言う。
「出来れば一番古いのがいいな。」
「・・・・・・・・・破らないでよ。」
【追記】
その後僕は頻繁にあの場所に行くようになった。
エヴァーズ城にいると色々五月蝿いからね。
それに用事があるといつもが迎えに来てくれるしね。
□■□あとがきという言い訳□■□
今回はルック登場。実はこの話は完全にギャグにするつもりだったんです。
でも書いているうちにどんどんシリアスに・・・・・・
誰か私に文才を!!
ちなみに、更にシリアスっぽくなるほうがいい方は、反転させてみてください。
君の目線はいつも
見えない何かの
分からない何かの
迷っている何かの
答えを求めているようだった
自分の答えは自分にしか出せない
でも
その助けになるのであれば求めるのも悪くはないと思う
どうか どうか
貴方の答えが見つかりますよに・・・