++CAT'S++




      最近よく来る場所。

      今日も今日とて書類から逃げるために。のお誘いから逃げるために。

      やってきましたエヴァーズ城の裏手。

      しかし、そこには先客がいた。

      それも予想していなかった人物が。

      その姿を見た瞬間『逃げようか?』という選択肢が浮かんだが、その人物の読んでいる本に気が付いて選択肢を却下し、

      様子を見てから声をかける。





      「こんなところで何してらっしゃるんですか?シュウ軍師。」

      「か。俺が此処で書類を書いているように見えるか?」

      「見えたら怖いですねぇ。」





      『あっはっはっは』と乾いた笑いを返すと、シュウ軍師の腕の中にいるモノに気が付いた。





      「猫ですか?」

      「猫だ。」





      エヴァーズ城に面した湖の辺にある大きな木の下で、シュウは子猫を抱いて本を読んでいた。

      シュウは元々自宅で猫を飼っていたのだから、猫といてもおかしくはない。

      さらにこの場所は常に何か(例えば書類や、部下の兵)に追われているが

      休める数少ない場所の一つに上げられるほど静かな場所だ。

      常に忙しいシュウが静かに本を読む場所として来ているのも分かる。

      しかし・・・





      「何故でしょう?違和感を感じます。」

      「随分はっきり言ったな。」

      「だって違和感を感じたのは事実ですから。」





      はシュウの目の前にしゃがむと、シュウの腕の中で眠ってしまっている猫を覗き込む。

      そうすると、自動的にシュウの目の前にの顔がいつにないほどアップになる。

      シュウはそのの顔を見ると、不思議な気分になる。

      男にしては綺麗な肌だが適度に日に焼け、黄土色の髪は光を弾き金色に透けて見え、節目がちな

      底なし沼の様な目は、明らかに子猫に触れたそうにうずうずしている。

      その様子はいつもの会議室で淡々と書類をこなしている有能な様子と比べると、実に活動的で別人のようだ。

      じっと見詰めていると、急にが顔を上げ目が合ってしまう。

      間近に真正面から顔を見ると、驚く前にふとどうでもいいようなことが浮かぶ。





      「・・・・・・俺の顔に何かついてますか?」

      「・・・・・・・・・いや。」

      「その間は何ですか?」

      「・・・・・・・・・」





      言えない。言えるわけが無い。

      シュウは先程浮かんだ言葉を思い出して頭を抱えたくなる。

      どうやら自分はよほど疲れているようだ。

      は何も答えないシュウに納得がいかないようで、睨みつけている。





      「だから何でも無いと言っているだろう。」

      「絶対嘘です。眉間に皺よってます。」

      「それは前からだろう?」

      「・・・・・・・・・シュウ軍師がそういう態度をおとりになるというならこちらにも考えがあります。」

      「ほう・・・?」





      シュウは軍師である私にどんな手で来るのかと笑う。

      はもちろん非戦闘員であるシュウに攻撃を仕掛けるつもりは無い。

      だが、シュウの不意を突くのは可能だ。





      「えい!!」

      「おい!」





      案の定シュウのは珍しく慌てた。

      ただ、その慌てさせた方法は簡単で・・・・・・





      ニギャーー!!





      寝ている猫を叩き起こしたのだ。

      当然猫は自分を抱きかかえているシュウが起こしたのだと思い、暴れだす。

      シュウは猫を諦めて早々に手を離してしまうが、何故か子猫はの肩をよじ登ってシュウを睨みつける。

      出来過ぎている。





      「・・・・・・・・・・」





      はそんなシュウに勝ち誇ったように猫と戯れる。

      その様子を見ていると、この間ムクムクを頭に乗せたまま書類を片付けていた事や、使い魔としているピンク色の

      鳥のことを思い出す。





      「・・・・・・・・・お前はどうやら動物に好かれるタイプのようだな。」

      「負け惜しみと受け取っておきましょう。」

      「ちがう。」

      「いいんですよ遠慮しないで。」

      「だから違うと言っている。」

      「シュウさんってば照れ屋さん☆」

      「お前には人間の言語が通じないことが良く分かった。」

      「だったら俺に書類処理をやらせないでください。」

      「結局はそれか・・・・・・」





      シュウは溜息を吐くと立ち上がる。

      考えてみれば結構な時間を此処で過ごしていた。

      戻って書類や策を練り直さねば・・・・・・と考えると、会議室へと向かいだす。

      は猫とじゃれ合いながら声だけ最後にかける。





      「シュウさん。」

      「まだ何か・・・・」





      あるのか?と言おうとして、の言葉に驚く。











      「休むべき時はしっかりと休んでおくべきです。折角休めるところに来たのに、軍事の書物なんか読んでてどうするんですか。」









      どうして気が付いたのだろう。

      本にはカバーを付けていなかったが、タイトルは書かれていないはずだ。

      どうやらはその疑問に気が付いていたようで、相変わらず視線を子猫に向けたまま答えをくれる。





      「その本、俺も読んだことあるので遠目でも分かったんです。」

      「・・・・・・軍事戦略も修めていたのか?」

      「いえ。そこまではいきませんが。」





      まったく末恐ろしいと思う。

      この年で(実際の年齢は知らないが継承者ではないのだからそんなには生きていまい)アレだけの事務能力と

      戦闘能力、統率力を持っているのに更に策も弄するとは・・・・・・

      ふと、思いついたことがあり、改めて会議室へと足を向けながらサラリと言う。





      「次の作戦会議は明後日だ。」

      「あぁ・・・・・・・・・って、えぇ!?」





      あまりにも普通に言われたので聞き流しそうになる。

      慌てて振り向くも、シュウはもう結構離れたところにいた。

      (いつの間に!!)





      「ちょっと!!シュウさん!!」

      「なんだ?私にこの先も休まず、木の下で軍事書を読めと言うのか?」

      「そっ、それは・・・・・・!!」





      シュウは勝ち誇ったように笑うとに答える。

      は敗北感を味わいつつも、どこかシュウの荷が減るならと納得してしまった。





      「わかりました。予定が入らなかったら。」





      そう言うとは綺麗な笑顔で笑った。





      【追記】

      シュウは会議室の前で先程のの笑顔を思い出すと、目が合った時の事を思い出した。

      「“綺麗だ”と思ったのはあながち間違いではないのかもな・・・・・・」

      そう呟いたのを聞いたのは誰もいなかったが、その日珍しく眉間に皺が無かったとアップルが語っていた。








      □■□あとがきという言い訳□■□
      まず一言。
      深読み厳禁!!宣言しておきますが、BLではないです!!
      そのように見えようが、私はそんなつもりでか書いたんじゃぁ・・・!!
      確かに『夢っぽいのを・・・』とは思ったが。
      え?じゃぁ、BLだろって?
      おかしいなぁ・・・・・・?
      ちなみにこの話を思いついたのは、壁紙の猫のPhoto素材を見つけたからです。

      お世話になっております!!