そこで見たものは
赤の海と
恐怖と
絶望と
それら全てを与える男の本性
―――――――Rolling Stone――――――――
ヤバイヤバイヤバイ・・・・!
そんな考えがの頭を占めている。
は何がなんだか分らないほど焦っていた。
先程会議室のほうから悲鳴が聞こえてからいくらも経っていないが、焦るのには十分だった。
悲鳴が聞こえた時点で何かあったのは分っている。
それよりその後取り立てて何も聞こえてこないほうが恐ろしかった。
「くそ!!」
は苛立ちを隠そうともせず階段を駆け上がり一気に会議室のドアを開ける。
その中の光景を見たとたん頭の中がフリーズした。
動かなくなった人
恐怖に身を竦めるピリカ
窓際には絶望したような表情のとジョウイ
ピリカの前には血の付いた剣を振り上げるルカ
そして
そのルカの足元に倒れているポール。
は自分の中で何かが切れるのを感じた。
滑らかな動作で袖口に仕掛けておいた暗器を振るう。
狙いは剣を振りかざした男の首と手首。
ルカはそれがたどり着く寸前に剣の軌道を換えその二つを感覚でなぎ払う。
「か?」
「さん?」
「・・・・・・・・」
三人が気付くが、は無いも言わずにマントを脱ぎ捨て、床を這うような低さでルカに襲い掛かる。
その表情は先程までの焦りは無く、虚ろで何も宿しておらず、目はルカしか映していない。
はルカに密着し、先程の暗器とダガーを使って確実に追い詰めていく。
ルカは密着しているために剣が振るえない。
だが、の攻撃を受けたり避けたりしながらも、何度か浅い傷を作る事には成功する。
しかし、決定打にはならず、段々窓際へと追い詰められていた。
ドオオォォォォォン!!
もう後が無い、となった頃で砦が大音響を建てて激しく揺れた。
一瞬の隙を付いてルカは大きく間合いを取り、とジョウイはピリカを救い出す。
だが、どちらもそれ以上動けず、を注視いている。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・さん?」
はそのの声で我に返った。
状況を確認するまでも無くどうやらキレてしまっていたらしい。
もうがむしゃらに戦わなくても大丈夫だと判断すると、殺戮モードに入っていた意識を元に戻す。
はたちを怖がらせてしまったかと後悔しながら、なるべく優しく声をかける。
「・・・・・・早くピリカを安全な場所へ連れて行ってあげなさい。」
はそう言うと、ダガーを仕舞い剣を抜く。
その表情は達からは見えなかったが、雰囲気がいつものに戻ったような感じがした。
たちが安堵し、入り口に走っていくと、外から扉が開きビクトールとフリックが顔を出す。
「バカヤロウ!こんなとこにまだ居やがったのか!!早く逃げろ!!
地下のボイラーに火炎槍を全てぶち込んだ!もう直ぐ爆発が始まるぞ!!」
「分りました!!」
そう言うと、二人はピリカを抱えて姿を消す。
その間もはルカと睨みあっていた。
「!!何ぼさっとしてやがる!!さっさと逃げろ!!」
「・・・・・・・・・先に行ってください。」
「何言ってるんだ!!早く逃げないと巻き添え食うぞ!!」
「大丈夫です。先に行ってて下さい。」
「あぁ!!もう!!置いてけるかっての!!」
フリックたちは頭を抱えながらも動こうとはしない。
はその様子に少し呆れると、さっさと用事を終わらそうとルカに話しかける。
どうしても聞きたい事があったのだ。
「何がしたいんですか貴方は?」
「何がしたいかだと?決まっているだろう!同盟都市のブタどもを皆殺しにする!!」
「そうですか。」
「そうですかって・・・・・・・」
あっさりというにビクトールが突っ込む。
戦いは人の命を、人生を奪う。
そんなものを起こす動機が皆殺しとは穏やかではない。
だが、はるかの動機を否定するでもなくただ頷く。
ルカはその返事を聞くとニヤリと笑い、手を差し伸べる。
はピクンと眉を跳ね上げるが何も言わない。
「やはりお前は俺と同じ人間だ!!俺の下に来い!!」
「お断りです。」
そういって手を振り払うと、ルカの目が一瞬狂気以外の感情に染まる。
はリューベでもその感情を見たような気がした。
しかし、一瞬で消えてしまったためよくは分らなかったが。
いや、常にどこか狂気以外の感情を宿しているような・・・
そんな考えもルカの声で吹き飛ぶ。
「何が不満だ?」
「俺にだって戦う理由ぐらいあるんです。ホイホイ付いて行くなんて出来ませんねぇ。」
そう言うと、はルカに背を向け扉へと向かう。
ルカは追ってくることも、襲い掛かってくる事も無かった。
は何となくそれが分かっていた。
扉まで来ると、パコッとフリックとビクトールに殴られる。
当然といえば当然なのだが、どうやら背を向けてきたことに驚いていたらしい。
は殴られて頭を抱えつつ、文句を言わずに出て行こうとする。
「もう直ぐこの砦は爆発する。死にたくなきゃさっさと逃げるんだな。
この砦はアンタにはやらねぇ!」
「・・・・・・。」
「って、無視かよ。」
最後の啖呵をきったところでビクトールはあっさりと無視されご機嫌斜めだ。
はそんなビクトールに呆れつつもルカのほうに向き直る。
「何でしょう?」
「お前の戦う理由とは何だ?」
「大事なものだけはこの手で守ること。
それ以上でも以下でもなくそれだけですよ。」
「だが、先程の動きをしてお前は狂っていないというのか?」
「・・・・・・・・・どうでしょうか。」
先程の戦いぶりを指摘されれば断言する事が出来ない。
あの時はただ脅威の対象を殺す事だけを考えていた。
いや、殺すなんてことも考えないほど自然に体が動いていた。
「ふんっ!はっきりしないヤツだな。」
「そうかもしれません。」
そう言うと、は会議室から逃げ出していく。
随分長い間残っていたおかげで揺れが酷い。
何とか爆発前には逃げられたが、他の人間がどのぐらい無事に逃げられてかは確認できなかった。
「景気良く燃えましたねぇ・・・・・・」
砦も裏の森に少し入ってから爆音と同時に炎が上がった。
の傍にはビクトールとフリックがいる。
は純粋にその事が嬉しいと思う。
ポールが死に、たちの行方が分らず、はぐれた仲間もどうしているか分らない中で
二人の存在が本当に嬉しかった。
目まぐるしく、犠牲が多かった戦いの中で大事な人たちが生きていてくれたのだ。
「に、しても。お前無茶しすぎだろ!!」
「そうだぜ?会議室でお前を見たときゃマジでビビッたぜ。
なぁんでルカと一騎打ちなんてやってんだよ!」
「あ〜〜〜それはですね、何て言うか、こう・・・切れちゃいまして。」
「切れたって・・・確かになの光景見れば切れたくもなるが・・・」
「まぁまぁ。無事だったんだし、結果オーライ?」
そう言いながらも歩き出す。
だが、はふと気になって足を止める。
あのルカの感情は何を意味しているのだろうか・・・・・・・・・?
狂気に狂った男
その男の目に宿る不思議なキモチ
まるで置いていかれた
自分と同じ人間を見つけた
初めて知らなかったものに触れた
“子供”のようだった
もしかしたらそれが彼の本性なのかもしれない・・・・・・・・・
□■□あとがきという言い訳□■□
なんだかんだでもう9回目です。
たった9回されど9回。あっという間にドリ主の性格七変化!!
笑い事じゃないんです。どうにかしなくちゃ!!
ドリームですらないのは諦めたさ・・・
でも、性格だけは一定にしたかった!!(←既に過去形だし)
あぁ!!どうしよう!!
ちなみに今回のコンセプトはルカ様のナンパ2です。(殴)
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