その時は確かに喜んでいた

なのにどうして

現実は非情なのだろう

つかの間喜びをかみ締める時間も無く

その喜びを奪い去っていく








――――――――Rolling Stone――――――――――








「よおし、良くやったな皆!!全く火炎槍さまさまだぜ!!」





ビクトールとフリックの部隊が帰ってくると、ビクとールが上機嫌に声を上げる。

他の面々も同じようで、フリックや達も嬉しそうだ。

ジョウイも喜んでいるようだが、少し気になる事があるようだ。





「どうした?ジョウイ?」

さん・・・いえ。何でも。」





ジョウイはそう答えると、と共に会議室に向かう。

『何でもない』とは言われたものの、やはり気になっては一緒に付いて行く。

二階にある会議室にはナナミやピリカがいる。

万が一に備えてビクトールが地下ではなく二階に非難させていたのだ。

足取り重くジョウイは二階へ続く階段を上る。

だが、その途中で足を止めてしまった。





「どうしたのジョウイ?」

「うん・・・少し気になる事があるんだ・・・」

「なに?」





とジョウイの質問をは黙って聞いている。

此処はに任せたほうがいいような気がしたからだ。

はジョウイの顔を覗き込みながら、聞いている。





「おかしいと思わないか?さっきに戦いにはルカの姿は無かった。

 でも、天山やトト、リューベでもルカ自ら来ていた。

 そんなヤツがこの戦いだけ将軍任せって言うのはおかしい気がして・・・」





確かにその通りだと思う。

砦はミューズを守る象徴のような物でもある。

これから同盟都市に侵攻しようって時にその象徴をつぶす大きな戦いにルカが来ないというのはおかしな気がする。

もその事に気付いたようで、二人で戻ろうとするが・・・・・・





「王国軍だ!!王国軍がまた攻撃を仕掛けてきたぞ!!」





非情な悲鳴が上がった。























「くそ!!火炎槍が!!」

「紋章の力がきれたんですね?」

「ああ!!

 !!援護してくれ!!」





急襲でまともな迎撃体制をとる事が出来なかった。

は今回はビクトールの軍に入っている。少しでも戦力を確保したかったのだろう。

火炎槍を持っていなかったは、炎をかいくぐってきた敵を相手していたが、火炎槍の紋章の力が尽きると、

真っ先に躍り出て国王軍に切り込んでいく。

もビクトールの声に応えて援護射撃をしてくれている。

しかし、数の違いとろくに迎撃体制が取れなかったため圧倒的に不利だった。





「全く、いい加減にしてくださいよ!!」

・・・お前強かったなんだな・・・」





は愚痴をもらしながら剣を振るう。

その活躍は目覚しく、数え切れない兵を戦闘不能にしてきた。

だが、服やマントには返り血はさほど浴びていない。

返り血を浴びる前に場所を移動しているからだ。

その目を見張る速さに、ビクトールが思わずポツリと漏らす。

は聞こえてはいたが、考え事をしていたため、応えなかった。

暫く考えてからはビクトールに近づいていく。





「・・・・・・ビクトールさん、ちょっと気になる事があるんですけど。」

「こんな時に考え事か!?!!」

「こんな時だからですよ。

 先程ジョウイがルカの姿が見えないのを不審がっていました。

 こんな大きな戦いにルカがいないのがおかしいと。」

「・・・・・・お前はどう見る?」

「ジョウイと同じ考えです。」





ビクトールは相変わらず剣を振り続けながらに指示を飛ばす。





「分かった。此処は俺たちに任せて向こうの動きを探ってくれ!!」

「了解です!!死なないでくださいよ!!」

「分かってるさ!!」





は敵味方の間をすり抜けつつ、砦のほうへと戻っていく。

入り口のほうへ来ると、屋上にいるに声をかける。





!!どんな状況だ!?」

さん!?今ゲンゲン隊長が西側で奮戦してくれています。

 その他は北と東にそれぞれ来ています!!」

「ルカは!?」

「まだ現れていません!!」





の返事を聞くと、はそのまま砦の中に入っていく。

目指すのは南の裏口。

どうして早く気が付かなかったのか。ルカは定石には従わない。

だから大将といえども堂々正面から来るとは限らないのに!!

はいつに無く焦って砦の中を駆けた。

しかし、丁度後半分といったところで南から歓声が上がった。

ルカが現れたのだろう。





「くそ!!」





は短く毒づくと、走る速度を上げた。



が南の裏口に到着すると、ルカの姿は無く白い甲冑を着込んだ兵士がいるだけだった。

どうやらルカは既に砦の中に入って行ってしまったのだろう。

はそう判断すると、会議室へと急ごうとする。

あそこにはピリカやポール、その他のお世話になった賄いのおばちゃんなどの非戦闘員がいる。

もしもルカが見つけてしまったら容赦なく殺してしまうだろう。

その様子を想像するだけで血液が沸騰しそうになる。

慌てて走り出すが、いくらもしないうちに国王軍の兵が行く手をふさぐ。





「何だよ。此処にはこんなガキしかいないのか?」

「だから俺たちも正面から行きたかったんだよなぁ」

「どうせこんな砦は直ぐに落ちるんだし。」





へらへら笑いながら兵たちはを取り囲む。

はその間ずっと黙ったままだった。

その時、鳥で一杯に響くような声で悲鳴が上がった。

ピクンと肩が跳ね上がる。

嫌な予感が頭をよぎる。

そんな時一人の兵士がの顔を覗き込もうとするが、『ギャッ!』と短い悲鳴を上げて倒れこむ。

の剣が甲冑の隙間から足の付け根を貫いていたのだ。





「てめぇ!!」

「五月蝿いんですよ・・・」

「あぁ!?」

「俺の邪魔をするな!!」





そう叫ぶと、兵たちを一瞬で戦闘不能にさせて会議室へ走り出す。

途中でフリックと会ったが、短い一言を交わして直ぐに走り出す。

は何故だか分からないが、焦燥感に駆られていた。

良く知っている砦。

何度も通っている通路。

変化することの無い距離と時間。

なのに・・・・・・





「何でこんなに長いんだよ!!」

















大事なものが出来てしまったら

こういう思いをするのは分かっていたはずなのに

戦いに身を投じたら

こういう事が起こるのは分っていたはずなのに

どうしても感情が追いつかない

何も失くしたくない

誰も失いたくない

それは贅沢なのでしょうか・・・・・・?










□■□あとがきという言い訳□■□
あはっはっは!!切れが悪い!!
ドリ主の人格が崩れてる。
っていうか、夢じゃねぇ!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
助けてください・・・
許してください・・・
見逃してください・・・