これで何人目だろうか?の持つ剣は血で染まり、元は緑だった服にも所々返り血がついている。 そんな事に今更構ってもいられず、新たに襲い掛かってくる兵を相手にしつつ、とジョウイを目で探す。 とジョウイは砦の上で弓部隊の指揮をしている。 その様子は堂々としたもので、的確に状況が判断できているようだ。 はどうやら心配ないだろうと判断すると、相手に真剣に向き合う。
「この!!ガキがぁ!!」
はその懐に飛び込むと、脇腹を一閃してすり抜ける。 どんなに甲冑で身を固めようと、継ぎ目の脇などはどうしても薄くなってしまう。 は脇、首、肘、膝裏などその欠点を突いて常に剣を繰り出していた。
白地に赤いラインの軍服を着た兵は、上手く飛んでくる矢を叩き落してきている。 その動きからどうやらハイランドの名の有る将のようだ。 厄介だと判断すると、は今し方倒した兵の剣を拾いあげると、その馬に向かって投げる。 剣は狙い違わず馬の首元に刺さる。馬はもんどうりをうって倒れるが、将は落馬することなく、ひらりと降りると、 真っ直ぐに向かってくる。
ガギン!!
力に頼るような剣ではないのだが、背が比較的低いには厄介だ。 動き、急所を正確に狙おうとするが、うまく立ち回ってそが交わされてしまう。 何度か剣を合わせているうちに、何故だか将の目と口元に嬉しそうな表情が浮かんでくる。
「可笑しいわけじゃないさ。こうして強い敵に逢えると嬉しくってね!!」 「褒め言葉として受け取っておきましょう。」 「ああ!!そうしてくれ!!」
その一瞬を逃さず、は剣を叩き落し足で遠くに飛ばすと、首に剣を突きつける。
「・・・・・・・・・感情的になるのはお勧めしかねますね。」 「・・・・・・・・・同僚にもそういわれたよ。」 「良いご同僚ですね。」 「へっ!アイツに聞かせてやりてぇ台詞だな。」
どうやらビクトールとフリックの部隊に押されて、ソロンが退却を始めたようだ。
「・・・・・・・・・聞かせてください。どうして貴方は戦うんです?」 「・・・・・・・・・どうしてそんな事を聞く?」 「興味本位です。」 「・・・・・・・・・母国ハイランドのためさ。」 「ルカの暴走に付き従う事が?」 「それは・・・・・・・・・!」
キン!と甲高い音を立ててナイフが弾かれると、赤髪の将が間合いをはずし、剣を拾っていた。 は溜息を漏らすと、今し方ナイフを投げた相手を見据える。
「戦場じゃぁ、前後左右敵に囲まれてるもんでしょう?」 「その通りですね。 「分かってるよ。クルガン。」
は既に剣をしまっていて、訝しそうに近寄ってくるシードとクルガンを見上げていた。
「どうしてすぐに俺を殺さなかった?」 「さぁ?」 「・・・・・・貴方のお名前は?」 「だよ。=。」 「・・・・・・貴方でしたか。 ルカ様からの指令で貴方を連れてくるようにといわれております。」 「やだよ。行かない。」 「いいじゃねぇかよ。ハイランドに来い!。」 「人の話は聞いてください。いやだって言ってるんですよ。俺は。」 「・・・・・・私も貴方のような方が近くにいれば安心して剣が振れます。」 「人の話し聞けよ。」
どうしてハイランドの人間は人の話を聞こうとしないのか。頭を抱えたくなる。
「では何故戦っているのですか?」 「守りたいからだ。
だが、クルガンは最後に二つといって呼び止める。 かなり呆れながらもは手早くしろというと、向き直る。 クルガンはを真っ直ぐ見つめると、質問を投げかける。
「この手で守れるだけのもの。それ以上は望まない。望めない。」 「・・・・・・では最後に。何故直ぐにシードを殺さなかったのです?」 「・・・・・・・・・・・・ノーコメントだ。」
はその様子を見送ると、また溜息を吐いて空を見上げる。
その時のシードの目は大きなモノを守るれるとこを信じていた。 揺るぎ無く、真っ直ぐで、感情的な睛。 それはに思い出させていた。
大事な多くのものを守れると思っていたあの頃。 その頃の相棒はの目を『良く言えば真っ直ぐ。悪く言えば直情型ね。』といっていた。 その事を思い出して何故戦うのかを聞きたくなって剣を止めてしまったのだ。
それは国だったり 家族だったり 平和だったりするけれど だけど俺の願いはもっと小さい この手で守れるモノを 俺の力でどうにかできるだけモノを それ以上は何も望まない だから 今度こそ 今度こそ 失ってなるものか
とうとう猛智将登場!!ああ、いい!!何ていいんだ美青年! |