これから起こる長い長い戦い

その幕開けを告げる衝突

多くの人が死ぬだろう

多くの血が流れるだろう

だけど・・・・・・




――――――Rolling Stone6――――――




「隊長!!敵影確認できました!!どうやらソロン・ジーの部隊のようです!!」





次の日の夕刻、伝兵のその声が会議室に響き渡った。

伝兵を労って休ませると、アップルは砦付近の地図と、ソロン・ジーの部隊の特徴を考慮して作戦を立てていく。





「さて、今聞いたように、相手は正規の軍隊。こっちは傭兵の集まり。

さらに言うと、数としても圧倒的に不利よ。」

「そんなこと、この顔ぶれをみれば分かってるさ。」





ビクトールはひょいっと肩をすくめると、ざっと見回す。

会議室には各部隊の部隊長、副隊長が集まっていた。

実際にはビクトール、フリックの砦の隊長・副隊長と、とジョウイそしてアップルとだけ。

そんなに数はいない。それはそのまま戦力不足を意味している。





「そうね。でも、勝機はあるわ。ソロンの部隊は統制が取れていないの。だから、頭をたたけばどうにかなるわ。

さらに、その後の部隊がやってくるまでは少なくとも二日はかかるはずよ。

だから今回の戦いを凌いで、援軍が間に合えば・・・・・・」

「こっちにも可能性があるってことか。」

「そうよ。」





アップルと、ビクトールの簡単な作戦会議を終わらせると、各部隊の配置に移る。





「今回は聞いていたように、頭を叩く事に重点を置く事になる。

部隊は俺の部隊、フリックの部隊、とジョウイの部隊の三つで、俺とフリックが火炎槍で突っ込んでいく。

その後を囲まれないように、、ジョウイ。頼むぞ。」

『はい!!』

「そして、たちの部隊のサポートを頼むぞ。」

「了解ですよ。」

「おっし!!それじゃぁ、気合入れていくぞ!!獅子の旗にかけて!!」

『・・・・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・獅子だったのアレ?」


















砦の入り口、もう戦い間近となり、いつの以上に騒然とした空気の中、はビクトールとフリックの見送りに来ていた。

フリックは最後の装備の点検をしつつ、隊の確認をしていた。その中にはジェイの姿も見える。

どうやら彼も突撃部隊の中に入っているらしい。

どちらもいつもとは違う真剣な表情。当たり前の事だが、緊張もしているようだ。

はフリックのところまで行くと声をかける。





「いよいよですね。フリックさん。」

か。見送りに来てくれたのか?」

「ええ。行きがけの挨拶ってのは大事ですからね。」





そういうと、ジェイにも声をかける代わりに、手を振る。

ジェイはそれに気付いたが、忙しいらしく手を振り返しただけだった。

フリックはそのの様子を見ていると、今の話の続きをする。





「今回の戦いは死ぬ気で戦わないと。」





きっとこれからの戦いで決して少なくない仲間が死ぬだろう。もしかしたらこれが最後の会話になるのかも知れない。

しかし、そんな仲間が少しでも少なくなるように、またいつものように酒が汲み交わせるように死ぬ気で頑張らないと。

そんなことを考えていると、いきなりにギュゥっと頬を抓られる。





「って、何すんだよ!!」

「貴方死ぬ気で戦うつもりですか?」

「だってその位でいかないと・・・・・・」

「お馬鹿ですか?アナタは・・・・・・・・・」

「いひゃい、いひゃい!!(痛い。痛い!!)」





今度は両頬を抓り上げると、深々と溜息を下ろす。

両頬を抓り上げたままは真剣にフリックの目を覗き込む。

その真剣さにフリックも文句を言うのをやめ、見入っていた。













「いいですか?フリックさん。死ぬ気で戦っちゃぁダメです。

生きてください。生きて生きて生き抜く。そのために俺たちは戦うんじゃぁないんですか?

いつだって生き抜く方法がどっかにあるはずです。諦めないで探してください。

死ぬ気で戦ったら、最後の最後で死んじゃいます。その方法を見つけられないから。

だから生きて、戻ってくるつもりでいつも戦ってください」

・・・・・・」













いつの間にか周りの兵もの言葉に聞き入っていた。

その声は決して大きくは無いが、みんなに届いていた。

フリックは呆然としながらも、その言葉にどこか心地好さと、先程の意気込み以上に力が涌いてくると漠然と思う。

はそこまでいうと、やはり頬をを抓ったままニッコリと笑うと最後に一言付け加えた。





「生きて戻って・・・・・・ビクトールさんの面倒を見てください。

俺は絶対に嫌ですからね?熊の飼育は。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

『あははは!!!熊の飼育か!ちげぇねぇ!!』





感動的な場面はその一言で一気に笑いへと変わった。

の声に聞き入っていた周囲の兵も、止めていた手を動かし始める。

その顔には先程の緊張や不安は少なくなり、いい具合に緊張が抜けていた。

フリックはようやく離された頬を擦りながら、が此処に来た理由が分かった気がした。





「このために君は来たのか?」

「えぇ。だから見送りは大事なんですよ。」





そう言うと、ふわりと綺麗に笑うと、ビクトールが此方へと寄って来る。

ビクトールはどうやら、先程の『熊の飼育』という台詞を聞いていたようで、に食って掛かるが、

その目的がちゃんと分かっているようで、笑いながら言う。





「おい、!誰が熊だ!!誰が!!」

「自覚無いのは末期ですよ。」

「なんだとぉ!?」

「あははは!!冗談ですって!」





そんなことを言いながらじゃていると、昨日の自嘲気味の笑いや、よった様子は伺えない。

どうやら乗り越えたのだろうと、フリックは安心する。





「どうやら、少しは乗り越えられたみたいだな。」

「え?」

「いや。何でもないさ。それよりビクトール、なんか言う事があるんじゃないのか?」

「ああ!!フリック。そろそろ出るぞ。」





それだけ告げると、ビクトールはまたもとの配置に戻っていく。

フリックも、馬を進め、隊を組んでいく。

はそれに邪魔にならないように、少し離れると、剣を抜き声を張り上げる。





「汝等が行く先に幸多からんことを!!」

『おお!!』





長い間使ってきた祈りの言葉。

それに兵たちが答えると、一気に進んでいく。

最後の兵が出て行くのを見送ってから、とジョウイの所へと向かった。


















とジョウイはビクトールのいた舞台の見送りに行っていた。

は彼らに近づくと、優しく声をかける。





「緊張してるか?」

さん・・・・・・・・・」

「無理はするな。」





達はフリックたちの後から出撃する為、そろそろと出撃準備をしていた。

二人ともある程度馬が使えるようで、も一頭借り用意をしながら言う。





さん、僕は・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」





は準備を大体終え、の横について黙って聞き入っている。

は暗い顔をしながら少しずつだが、決意したように言う。





「僕は、今回自分の国と戦うのは嫌だ。だけど・・・・・・・・・だけど、もう自分の目の前で人が死んでいくのを見たくない。

トトや、リューベのような町をもう出したくない・・・!」

「僕もと同じ思いだ。もうピリカのような子を出したくなくは無い。だから戦うよ。

だけど・・・・・・・・・」

「だけど?」

「・・・・・・・・・部隊を指揮するってことは僕達が判断を誤れば多くの兵が死んでしまうかもしれない。

その事が心配なんだ・・・・・・・・・」





そう言うと、とジョウイは表情を暗く、俯いてしまう。

はそんな二人を温かい目で見ながら優しく言う。





「いいんじゃないかな?」

「え?」

「その決意と、失敗を恐ろしいって思うことがさ。

君達は良く人の命の重さを知っている。それって大事な事じゃないか?隊長を勤める上でも、人としても。」

さん・・・」

「俺から言わせてもらうと、もジョウイもいい隊長さんになると思う。

俺だったらそんな隊長に付いて行きたいって思うし、力になりたいと思う。

だから胸張っていいじゃないのか?十分合格だよ二人とも。」





そう言うと、は馬に乗り、達に声をかける。





、ジョウイそろそろ行こう。フリックさんたちが無事に帰ってこれるように俺達が頑張らないとだぞ?」

「ありがとうございます。さん・・・・・・」

「ありがとう。自信が出てきました!」





そう言うと二人とも馬に乗り、隊の前へと並ぶ。

もその後ろにつく。

とジョウイは隊のほうに顔を向けると、兵に声をかけて奮い立たせる。





「砦を守るために全力で戦うんだぁ!!」

『おおおおおおお!!!!!』




兵士達が雄たけびで答えると、喧騒の真っ只中へと突っ込んでいく。











この戦いで全員が無事に帰ってこれるとは思わない

だけど

少しでも多くの人たちに合える様に

少しでも犠牲を減らせる様に

俺は全力を尽くそう

死ぬ気ではなく

生きて帰ってくるつもりで全力を尽くそう

いつだって可能性はあるはずだ・・・・・・・・・









□■□あとがきという言い訳□■□
Rolling Stone6でした!!どうでしょう?宣言道理ドリ主元の戻ったでしょう?
え?しゃべりすぎ?語りすぎ?
そうですね・・・でもこれは水谷が思ったことなんで、書きたかったのです。
ん?何ですか?台詞がパクリっぽい?
気のせいです!!誰がなんと言うおうと気のせいですったら気のせいです!!