その幕開けを告げる衝突 多くの人が死ぬだろう 多くの血が流れるだろう だけど・・・・・・
伝兵を労って休ませると、アップルは砦付近の地図と、ソロン・ジーの部隊の特徴を考慮して作戦を立てていく。
さらに言うと、数としても圧倒的に不利よ。」 「そんなこと、この顔ぶれをみれば分かってるさ。」
会議室には各部隊の部隊長、副隊長が集まっていた。 実際にはビクトール、フリックの砦の隊長・副隊長と、とジョウイそしてアップルとだけ。 そんなに数はいない。それはそのまま戦力不足を意味している。
さらに、その後の部隊がやってくるまでは少なくとも二日はかかるはずよ。 だから今回の戦いを凌いで、援軍が間に合えば・・・・・・」 「こっちにも可能性があるってことか。」 「そうよ。」
部隊は俺の部隊、フリックの部隊、とジョウイの部隊の三つで、俺とフリックが火炎槍で突っ込んでいく。 その後を囲まれないように、、ジョウイ。頼むぞ。」 『はい!!』 「そして、はたちの部隊のサポートを頼むぞ。」 「了解ですよ。」 「おっし!!それじゃぁ、気合入れていくぞ!!獅子の旗にかけて!!」 『・・・・・・・・・・・・』 「・・・・・・・・・獅子だったのアレ?」
フリックは最後の装備の点検をしつつ、隊の確認をしていた。その中にはジェイの姿も見える。 どうやら彼も突撃部隊の中に入っているらしい。 どちらもいつもとは違う真剣な表情。当たり前の事だが、緊張もしているようだ。 はフリックのところまで行くと声をかける。
「か。見送りに来てくれたのか?」 「ええ。行きがけの挨拶ってのは大事ですからね。」
ジェイはそれに気付いたが、忙しいらしく手を振り返しただけだった。 フリックはそのの様子を見ていると、今の話の続きをする。
しかし、そんな仲間が少しでも少なくなるように、またいつものように酒が汲み交わせるように死ぬ気で頑張らないと。 そんなことを考えていると、いきなりにギュゥっと頬を抓られる。
「貴方死ぬ気で戦うつもりですか?」 「だってその位でいかないと・・・・・・」 「お馬鹿ですか?アナタは・・・・・・・・・」 「いひゃい、いひゃい!!(痛い。痛い!!)」
両頬を抓り上げたままは真剣にフリックの目を覗き込む。 その真剣さにフリックも文句を言うのをやめ、見入っていた。
生きてください。生きて生きて生き抜く。そのために俺たちは戦うんじゃぁないんですか? いつだって生き抜く方法がどっかにあるはずです。諦めないで探してください。 死ぬ気で戦ったら、最後の最後で死んじゃいます。その方法を見つけられないから。 だから生きて、戻ってくるつもりでいつも戦ってください」 「・・・・・・」
その声は決して大きくは無いが、みんなに届いていた。 フリックは呆然としながらも、その言葉にどこか心地好さと、先程の意気込み以上に力が涌いてくると漠然と思う。 はそこまでいうと、やはり頬をを抓ったままニッコリと笑うと最後に一言付け加えた。
俺は絶対に嫌ですからね?熊の飼育は。」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 『あははは!!!熊の飼育か!ちげぇねぇ!!』
の声に聞き入っていた周囲の兵も、止めていた手を動かし始める。 その顔には先程の緊張や不安は少なくなり、いい具合に緊張が抜けていた。 フリックはようやく離された頬を擦りながら、が此処に来た理由が分かった気がした。
「えぇ。だから見送りは大事なんですよ。」
ビクトールはどうやら、先程の『熊の飼育』という台詞を聞いていたようで、に食って掛かるが、 その目的がちゃんと分かっているようで、笑いながら言う。
「自覚無いのは末期ですよ。」 「なんだとぉ!?」 「あははは!!冗談ですって!」
どうやら乗り越えたのだろうと、フリックは安心する。
「え?」 「いや。何でもないさ。それよりビクトール、なんか言う事があるんじゃないのか?」 「ああ!!フリック。そろそろ出るぞ。」
フリックも、馬を進め、隊を組んでいく。 はそれに邪魔にならないように、少し離れると、剣を抜き声を張り上げる。
『おお!!』
それに兵たちが答えると、一気に進んでいく。 最後の兵が出て行くのを見送ってから、はとジョウイの所へと向かった。
は彼らに近づくと、優しく声をかける。
「さん・・・・・・・・・」 「無理はするな。」
二人ともある程度馬が使えるようで、も一頭借り用意をしながら言う。
「・・・・・・・・・」
は暗い顔をしながら少しずつだが、決意したように言う。
トトや、リューベのような町をもう出したくない・・・!」 「僕もと同じ思いだ。もうピリカのような子を出したくなくは無い。だから戦うよ。 だけど・・・・・・・・・」 「だけど?」 「・・・・・・・・・部隊を指揮するってことは僕達が判断を誤れば多くの兵が死んでしまうかもしれない。 その事が心配なんだ・・・・・・・・・」
はそんな二人を温かい目で見ながら優しく言う。
「え?」 「その決意と、失敗を恐ろしいって思うことがさ。 君達は良く人の命の重さを知っている。それって大事な事じゃないか?隊長を勤める上でも、人としても。」 「さん・・・」 「俺から言わせてもらうと、もジョウイもいい隊長さんになると思う。 俺だったらそんな隊長に付いて行きたいって思うし、力になりたいと思う。 だから胸張っていいじゃないのか?十分合格だよ二人とも。」
「ありがとうございます。さん・・・・・・」 「ありがとう。自信が出てきました!」
もその後ろにつく。 とジョウイは隊のほうに顔を向けると、兵に声をかけて奮い立たせる。
『おおおおおおお!!!!!』
だけど 少しでも多くの人たちに合える様に 少しでも犠牲を減らせる様に 俺は全力を尽くそう 死ぬ気ではなく 生きて帰ってくるつもりで全力を尽くそう いつだって可能性はあるはずだ・・・・・・・・・
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