戦う理由

剣を持つ目的

昔はそれを持っていた

しかし今は“分からない”

“ない”のではなく“分からない”

とても大事なことなのに

忘れてしまったようだ・・・・・・・・・






――――――― Rolling Stone5――――――――






その日の夜、酒場に行くとやジョウイ、ナナミもいた。

ほかの兵士はツァイの手伝いに向かわされていて、ほとんど人もいなかった。

はジュースを頼むと、ルカやこれからの動きに伝話し合う。





「ところで君、大丈夫?」

「ナナミ?大丈夫だよ。怪我もう残ってないし・・・・・・」

「そうじゃなくて、村が襲われた時の君変な顔してたよ?」

「え?」





話が一段落すると、ナナミが心配そうに話しかけてきた。

どうやら自分の感情に対する戸惑いが顔に出ていたらいい。ナナミに心配をかけてしまったようだ。

は明るく笑いながら、『なんでもないよ。大丈夫。』と言うと、カップを仰ぐ。





ゴホゴホ!!!

「え・・・!?君!?」





一気にカップを空けたはいいが、予想していた味とまったく違い、目を白黒させながら思いっきりむせてしまう。

頭はパニックを起こしていて、何が何だか分からない。

いや、カップの中身だけが原因とは思えないほど頭が回転しない。





「あ、頭がぼんやりしてる・・・・・・・・・・?」

「当たり前だ。アルコール度93%のウォッカ【スピリタス】を一気飲みしたんだからな。」

「う、うぉっかぁ?・・・・・・・・・・・・・って、ウォッカぁ!!??」





フリックは平然と言い放つ。いや、どこか不機嫌そうだ。

は一瞬ウォッカが何だか思いつかない。

【ウォッカ:アルコール度数が平均的に高く、悪酔いをしやすい酒。少量づつ飲むのが基本。】

そんな言葉が頭の中を流れる。





「っていうか、93%って、常温発火しかねませんよ!!」

君突っ込むとこ違くない?」

「お前が隠し事をするのが悪い。」

「ちなみに発案は僕とジョウイです♪」





ナナミとフリック、に同時にしゃべられ、頭がついていかない。

は何が何だか分からないが、一つだけ分かったことがある。

フリックが不機嫌だ。それも激烈に。





「え〜〜と・・・・・・・俺、何かしましたっけ?」

「昼間のことだよ。」

「ひるま・・・・・ルカとやりあったこと?」

「違う。」

「・・・・・・・・・・・けがしたこと?」

「違う。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しょるいぃ〜?」

「違う!!」





フリックは、キレてキッとを睨む。

は勢いに押される様に仰け反ると、思わず『まぁまぁ・・・・・・』と宥めそうになる。





「昼間の話を聞いた時どうしてあんな顔してた!?」

「はぁ・・・・・・・・・・・?」





どんな顔してたんだっけ?

はて?と首を傾げるにビクトールが解説を入れる。





「ほら、ルカが狂ってるって話をした時、変な顔してただろう?」

「変な顔って、アレはただ思い出しちゃっただけでぇ〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」





はうっかり漏らしてしまう。

フリックはジト目、ビクトールは苦笑、とジョウイは腹黒い笑み、ナナミはキョトンとしている。

ヤバイ。何だかヤバイ気がする・・・・・・・・・

此処は一つ水を飲んで落ち着こうと、レオナさんに水を頼んで、一気飲みをする。





げほげほげほ!!!!!

「今度はジンをチョイスしてみました♪」

「こうも引っかかってくれると嬉しいですねぇ♪」





本格的に頭がくらくらしてきた・・・・・・・・とジョウイの声がBGMにしか聞こえない。

フリックは同情の欠片も見せずに淡々と質問をしていく。

は答えないように、はぐらかすようにしていこうとするのだが、強い酒を一気飲みしたせいで口が勝手に動いていく。





「何を思い出したんだ?」

「え〜?ルカにいわれたことですよぉ〜〜」

「ルカに?何いわれたんだ?」

「えぇ〜〜?いいたくないでぇ〜すぅ」

「いいから言ってみろ」

「やですぅ〜」

「・・・・・・・・・俺達にいえないことなのか?」

「ん〜そういうわけじゃぁ、ないですけどぉ〜〜〜」

「だったら言ってもいいだろう?」

「どうしてもですかぁ〜〜?」

「どうしても。」

「きらいになるかもですよぉ〜?」

「ならない。」



「傍から聞いていると、まるで口説いてるみたいですね?ビクトールさん?」

「そうだな。でも此処は吐かせちまったほうがにとってもいいだろう。」





真剣に理由を聞いているフリックと、酒のせいで何も考えられないような状態の

時間が経つにつれて、加速度的に酔いが回ってきているようだ。

いつもはどこか必要以上に人に関らない感じをうけるが、今はボヘボヘ〜としていて無防備な上に、元々の顔の良さとあいまって幼い感じがする。

ビクトールはそんな様子を見ていると、どこか微笑ましくて笑いがこみ上げてくる。

は小首をかしげながら、困ったようにしている。





。」

「なんですかぁ〜?」

「言わないと嫌いになるぞ?」

「ええ〜〜!!じゃぁいいますぅ〜」





フリックが嫌いになるというと、泣きそうな顔になってしゃべりだす。

(((子供だ子供!!!)))

ビクトールたちはさすがに内心突っ込みを入れる。ジョウイなどは『いつものカッコイイさんはどこに・・・・・・?』と嘆いている。

だが、中心の二人はそんな外野の声なんてどこ吹く風。耳に届いてすらいない。





「るかにいわれたのはぁ〜」

「言われたのは?」

「おんなじだていわれたんですぅ〜」

「同じ?」





わけの分からないフリックたち。流石にやビクトールも眉を寄せている。

とルカの共通点なんてあるのか?

全員の顔にはそう書いてある。

はそんな様子に気づくわけもなく、こくんと頷く。














「おれも“くるってる”って。だからいっしょだって。」













その場の空気が凍った。

みな驚いて言葉が次げないようだ。

そんな中、流石というべきか、ナナミがフリックについで弱っているに質問をする。





「なんで君が狂ってるの?」

「だって、あのこーけーみても“あぁ、またかぁ〜”ってナンニモかんじなかったんですよぉ?おかしいでしょぉ?」

「そ、それは慣れちまってるからじゃぁ・・・・・・・・」

「え〜?じゃぁ。ビクトールさんはそんなものになれちゃうんですかぁ?」

「それは・・・・・・・」

「なれるもんじゃぁ、ないでしょうぅ?」

「・・・・・・・・・」





ビクトールはその言葉に沈黙してしまう。

実際自分が何度もそんな光景を見てきたとしても、頭に血が上ることははっきりと分かる。

こういうことから言えばの神経は普通ではない。狂っているといっても過言ではない気がする。

しかし、直感的に違うと思う。

そんな風に悶々と悩むビクトーの代わりに今度はジョウイが口を挟む。





「でも、さんは僕たちのことを心配してくれたんですよね?」

「うん。しんぱいした。」

「狂っている人が他人の心配なんてするもんですか?」

「それは、しないとおもうけど〜」

「じゃぁ、さんは違うじゃないですか。」

「んん〜〜〜?」





もそのことは引っかかっていた。

ルカと同じように狂ってきた人間は多々見てきた。しかし、どの人も他人の心配も、自分の心配も見えていなかった。

見えていたのは目的だけ。そのためにはどんなこともやってもけた。

そういうことでは確かに自分は当てはまらないが、まともな神経をしていないことも確かだ。





「んん〜〜〜〜〜〜?」

「ねぇ、そういえば君?」

「なにだい?ナナミ?」

君、たちがツァイさんに当身食らわされた時も変な顔してたよね?」

「へんなかおって〜びっくりしただけだよぉ〜?」

「びっくり?」

「うん。びっくり。」





ナナミが思い出したように言うと、は困った顔をしながら講義をする。

その言葉にがいぶかしむ。

フリックも納得がいかないような顔を青している。





「大量殺人に驚かなくて、が当身食らわされたのに驚いたのか?」

「はい〜」





『へんですよねぇ〜』とも不思議そうにしている。

は何となくピンと来るものがあった。





さん、問題です。

川で僕と知らない女の人が溺れています。どちらを助けますか?」

〜」

「女の人は?」

「たすけるけどぉ、たすけてからぁ〜」

「なんで?」

しぬのやぁ〜」

「なんで女の人も助けるんです?」

「だって、いやでしょぉ?」





間髪いれずに当然のように答えてくるに段々頭痛がしてきた。

どうやら周りの人間も分かったようで、呆れていたり、呆然としている。





、お前それって・・・・・・・・・(フリック)」

「狂ってるって言わないだろう・・・・・・・・(ビクトール)」

さんって意外と馬鹿ですか?(ジョウイ)」

君って、自分のことが分からないタイプ?(ナナミ)」

「えぇ〜なにそれ〜!」





は何だか分からないが、馬鹿にされたのは分かったようだ。

はまだ分からないのかと溜息をつくと、に真実を教えてやる。



「いいですか、さん?そういうのは狂っているって言わないんですよ。」

「えぇ〜まともじゃないのにぃ?」

「まともじゃない=狂ってるってもんじゃないでしょう。

貴方のは単に仲間以外を大切に思いにくいって事でしょう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうなの?」

「「「「「そうなんだよ(です)」」」」」





はまだ納得できない様だ。

フリックは決定的なことを言う。





。何にも思わなかったってことに違和感を感じてるってことは、少なくとも狂ってないだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」





そのの間の抜けた声に、周りから盛大に溜息が漏れた。





【追記】
は酒には弱いようだが、後には残らない体質のようで、次の日にはピンピンしていた。

そのため、ビクトールがの酒に対する耐性をつけようとたくらむ原因となる。










やっと思い出した

剣を振るう理由

戦う目的

それはこの手で守れるだけのものを守るということ

大切なものだけはこの手で・・・・

それは至極簡単なもの

だけど簡単ゆえに忘れていて

周りの人に迷惑をかけてしまった

しかし 何故だろう

心配されて嬉しい気がするのは・・・・・・・・・・






□■□あとがきという言い訳□■□

あはははは!!ドリ主壊れてます!水谷も壊れてます!
えぇっと、次回はちゃんとカッコヨクいきたいです。
希望です。断言できないです。
・・・・・・・・あぁ!物を投げないで!!ほっ包丁はいくらなんでも勘弁を・・・・・・・!!