狂気を秘めたもの

そんな人間がここにいてもいいのか気にかかる

でも

「先に行っていてくれ」といった手前戻らないわけには行かない

約束は約束

俺は約束だけは破らない




―――――――Rolling Stone――――――――




砦へと戻ると、喧騒が聞こえた。

どうやら誰かが打ち合っているらしい。

何となく着替えてから行ったほうがいい気がして、誰にも見つからないように自室へと戻る。





「これなら元の服と大差ないだろう・・・・」





元の服とあまり違いすぎても変に思われるだろうから、似た服を取り出す。

旅をしていたためそんなに多くは持っていないが、大体似たような服を持っている。

村にいた頃はもっと気を使えと言われていたが、今回は助かった。

服に袖を通した後、ふと窓の外が気になって傍による。

下を見ると、フリックさんと、それらジョウイが戦っていた。

どうやら少し前からやっていたようで、たちは肩で息をしている。





「ナナミ!ビクトールさん!何やってるんですか?あの三人。」

!帰ってきてたのか!いいからすぐに降りて来いよ」





人の邪魔にならないように、小さめの声で呼びかけると、窓のすぐ下にいたビクトールが気が付いて見上げてくる。

は、苦笑するとすぐに下へと降りる。

たどり着くと、どうやら決着はついていたようで、フリックは剣をしまっていた。





「どうも、フリックさん。何やってたんです?」

帰ってきてたのか。
さっきのはちょっとした腕試しだよ。」
「腕試し・・・・ってことは、逃げるのを嫌がったんですね?」





はそう言うと、ビクトールのほうへと向き直る。

ビクトールは『相変わらず頭の回転が速いな』と苦笑すると、頷いて返してくる。

はやはりと思った。

先程の激昂した様子を思い出すとこのまま引き下がるはずは無いと思う。





「で、どうだったんです?フリックさん」

「ああ。経験が不足しているようだが、結構使えると思うぞ。」

「じゃぁ、決まりだ。お前たちには一群率いてもらう。

明日までに名前を考えておけ。」

「「はい!!」」




てっきり認められないのかと思ってうつむいていた二人は、フリックとビクトールに言われると嬉しそうに返事をする。

するとナナミも欠けてきて三人で中へと向かう。

そうしてその場に残ったのは三人。フリックとビクトールと

もまた自室に帰って寝ようかと、歩き出そうとするが、後ろから声がかかった。





。明日のことなんだが・・・・・・」

「はい?」

たちの副将としてついてやってくれ。」

「いいですよ。さすがにハイランドの軍ですからね。たちの手に負えない事もあるでしょう。」

「ああ。それと・・・・・・」





ビクトールとフリックは言いづらそうにしている。

何のことか見当もつかないは首を傾げるばかり。

先程のルカとの戦闘で疲れているせいもあって話を促す。





「なんですか?話が無いなら部屋でちょっと休みたいんですけど・・・・・・?」

「あぁ・・・・・・すまん。実はとジョウイから聞いたんだが、ルカとやりあったんだって?」

「ああ。そのことですか。」





はたいしたことは無いように返すが、ルカの一言を思い出して複雑な気分になる。

同じ場面を見ながらも、人も痛みを感じ激昂するにたちと、日常のように捕らえ何も思わなかった自分。

それが明日同じ戦場で同じ敵を相手にするのかと思うと、皮肉な気分になる。

フリックはそんな内心の葛藤に気づかず、心配そうに話しかけてくる。





「ルカのうわさは色々聞いているがいいうわさは無い。それで心配したんだ。」

「そしたらお前がひょっこり帰ってきたからホントに驚いたぜ!
で、どうだった?」

「ルカ、ですか?確かにあれは狂ってますね。」

「・・・・・・・・・?」





『狂っている』と言うと自嘲する。

(狂ってるなんて人のことを言えた義理か?本当は自分だって狂っているのに。)

その見たことの無い様子にフリックとビクトールは戸惑う。

はこんな表情をする人間だったのか?





「いえ、なんでもないですよ。」





は元に戻ると、少しルカの特徴や戦いぶりを話す。

二人は先程の様子が気になっているようだったが、話は真剣に聞いている。





「――――――強かったですよ。ルカは。そして自分が狂っていることを認めてましたよ。」

「認めていた?」

「ええ。その上で戦っている。質悪すぎです。」

「そうか・・・・・・」

「後の細かいことは夜酒場でもしましょう。ルカのおかげで俺結構疲れてまして・・・・・・・」

「ああ、悪かったな。」

「じゃぁ、また夜に。それまでには医務室行っとけよ?」

「は?」





思わずそのまま聞き流しそうになったが、フリックの言ったことが気になる。

自分が怪我をしたことを行ったっけ?と不思議になる。





「えっと・・・・・俺怪我したとか言いましたっけ?」

「いや。けどほんの僅かだか、血のにおいがした。っていうか、そんなに強いヤツ相手にしたら無傷ってわけにもいかんだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「こうやってピンピンしているってことは大したことはないか、粗方紋章で治しちまったのかは知らんが、一応行っとけ。」

「・・・・・・・・・心配してくれるんですか?」





は滅多にないほど呆然と問いかける。まさか心配していて言い出しづらかったのだろうか?

というか、心配されているとは思ってもみなかった。

フリックはムッとした様に顔をゆがめると、怒ったようにいう。





「当たり前だろう!?」

「・・・・・・・・考えても見なかった。」





呆然と思ったことを漏らしてしまう。

と、いきなりビクトールに頭をはたかれる。





「寝ぼけてんじゃねぇのか?心配するに決まってんだろう。お前だってたちのことをアレだけ心配してたじゃねぇかよ?」

「あ・・・・・・・・・」





忘れていた。

トトにたちが行っている間、アレだけ心配していたのに。それを綺麗さっぱり忘れていた。

は呆然としながら考える。

どうして自分はたちのことを心配しながらも、あの光景に何にも感じなかったのだろう?

そんなことを考えていたら段々分からなくなってきた。





「えっと、とりあえず酷い怪我はしていないですし、紋章で治しちゃったんで心配要らないです。ハイ。」

「そうか?じゃぁ、夜まで少し寝とけ。」

「そうさせていただきます・・・・・・・」





はそう言うと自室に帰り、そのままベットにダイブし、夜まで眠り続けた。











疲れて眠ってしまったその夢で

久しぶりにアイツを見た

アイツと俺は何故戦うのかを語っていた

アイツは人のためにと言っていた

しかし

俺は何て言っていたのだろう

簡単なはずなのに思い出せない・・・・・・・・・










□■□あとがきという言い訳□■□

・・・・・・・・・どうにかならないもんでしょううか?この駄文具合。
ホントなら次のも合わせて一つの話だったのに、あまりにもこの後が長すぎて二つにしちゃいました。
っていうか、次はかなりドリ主の性格が変わってる気が・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・たすけてぷりーず。