ドリーム小説





最後に動いたのは一昨日の手合わせのとき

熊さん相手にほんの20分程度

つまり本格的に動いたのはを助けに行ったときであって

俺の感覚からするとはっきり言って運動不足

動けるのは嬉しいけど

こんな理由で動きたくは無かった



――――――――Rolling Stone――――――――




「おい!!たちが帰ってきたぞ!!」

「よかった・・・無事でしたか・・・・」




たちの帰還の知らせを聞くとほっとすると、そのまま書類に向かう。

ビクトールとフリックは既に門へと迎えに行っている。




「迎えに行かなくてももよろしいので?」



会議室に残っているのはともう一人。古株の傭兵だった。

この傭兵はジェイといい、先日ビクトールが書類整理からリタイヤした時の代理人で、回復した後もあまりの書類の多さに見かねての手伝いをしていた。

本来なら年下のが敬語を使うのだが、この傭兵はの剣術と書類整理力に敬意を表したいらしい。




「ええ。無事ならそれでいいんです。それよりこの書類を今日中に片付けないと。」

「そうですね。村に人を配置するなら早くやってしまわないと。」



そう言うと二人とも黙って書類に集中しようとする。

ハイランドの侵攻に備えてやらなければならないことは山ほどある。

今はそれを少しでも減らしておきたかった。

しかし、ガヤガヤと表が騒がしい空気が伝わってくる。

(まさか怪我でもしているのか?)

は集中できず、ジェイに一言『様子を見てくる』というと足早に入り口へ向かう。

段々近づくにつれて怒っている女の声が聞こえてくる。




「生きていたなら連絡ぐらい・・・・」
「生きているって、ずいぶん物騒な・・・」




かすかに聞き取れた声に突っ込みを入れながらやっとに主たちの元へと着く。

そこには、ジョウイ、ナナミのキャロっ子三人組と、フリックとビクトールの他に眼鏡をかけた少女と小さな女の子がいた。

どうやら先ほどの声は眼鏡の少女が発したらしい。目に見えて怒っている。




「はははは・・・すまん。忘れてたぜ。
おお!!そんなとこに居ないでこっっちに来いよ」

「俺で話を誤魔化さないでくださいよ・・・」




ビクトールは誤魔化すように笑うと、少し離れていたに気が付いて声をかけてきた。

明らかに話の矛先を変えようとしているのに呆れてしまう。

ビクトールは突っ込みに大しては何も言わずに苦笑しているだけだが、その話には触れられたくないようだ。冷や汗をかいている。

よく7人観察してみると少女だけでなくフリックも怒っているようだ。




「今度は一体何やらかしたんですか?」

「俺たちが生きていることをトランの皆に知らせてなくて、幽霊状態らしい。」




フリックに尋ねるとどこか呆れたように答えてくる。

もその言葉を聴くと呆れてしまう。




「仕方ありませんよ。熊ですから。」

「だな。」

「熊呼ばわりかよ・・・」

「熊熊言われたくなかったら、そう言うとこをしっかりすべきでしょうね。」

「貴方はどなたですか?」




熊ネタで砦の面々で盛り上がっていると眼鏡の少女が割り込んでくる。

口調や雰囲気から言って頭がキレるようだ。

はきちんと向き直ると、自己紹介をする。




といいます。此処で何故だか知りませんが、書類整理をやらされています。」

「私はアップルよ。この二人とはトランの戦争の時に知り合ったの。」

「をいをい、。“何故だか”とか“やらされています”っていうのはおかしいんじゃねぇのか?」

「事実でしょう。実戦に出たいのに出させてくれないじゃないですか。」

「出るなとは言ってないだろ。」

「書類のおかげで出られないんです。」

「・・・・・・・・・」




にっこりと微笑みながら言うと、ビクトールは頬を引きつらせながら黙る。

その様子を見ていたアップルは溜息を吐きながら言う。




「この砦の書類を貴方たち二人で処理できるのか不思議だったけどそういうことだったのね。
 君同情申し上げるわ。」

「痛み入ります。アップルさん」




アップルは「呼び捨てでかまわないわ」と言うと、表情を引き締めて話を変える。




「私がここへ来たのは思い出話をするためじゃないわ。ハイランドの侵攻が迫っているの。
 トトの村は・・・・この子以外全滅よ・・・・」




『この子』と指された女の子は不安そうにジョウイの腕の中に居る。

はそれを見ると苦々しい思いが満ちてくる。この女の子だけと言うことは、男女を問わず皆殺しになっていると言うことだ。

その様子をこの子が見ていたと言うこともやるせない。

フリックとビクトールもさっと真面目な顔になると『の言った通りか』と漏らす。

アップルは不審そうな顔をしていたが、すぐにビクトールは指示を飛ばす。




「火炎槍って武器を修理するにはリューベにいるツァイって鍛冶師の協力が必要だ。

 、ジョウイ。すぐにリューベまで行ってくれないか?」

「分かりました。」




どうやら火炎槍は使えなくなっていたらしい。

そりゃぁ、三年もほっとっきゃ剣だって錆びるか、と思うと修理すれば使えるだけマシだと思っておくべきだろう。

は今残っている書類の量を思い浮かべると、ビクトールに告げる。




「俺もリューベに付いていきます。書類のほうは粗方は終わってますし、ジェイさんもいます。それに、砦の人間を配置するために結構な量を進めていたんです。それが今では手遅れのようですからそのまま浮いちゃうんです。だから俺一人抜けても平気でしょう。」

「ああ。そうしてくれ。」

もジョウイもいいかい?」

「もちろんです。よろしくお願いします!」




そう言いあっていると、今まで珍しく大人しかったナナミも声を上げる




君も行くなら私も行く!!」

「ナナミ・・・!」

「かまわないよ。ナナミもおいで。」




慌てたようにが声を上げるが、はかまわなかった。

驚いたように見るジョウイたちに苦笑しながら説明する。




「ナナミはここで置いていってもきっと付いて来ちゃうよ。ハイランドが攻めてきて危ないから余計にね。
 義弟のなら良く分かるだろう?」

「そうですね。」




がそう思ったのは、キャロ脱出の時のナナミの行動だ。

ムササビと一緒に三節昆を振り回し『を助けるんだからぁ〜〜〜!!』と、脱獄していた光景を思い出す。

その様子を思い出すだけでは笑みがこぼれそうになる。

(美しきは義兄弟愛かな。)

は今までのことを思い出したのだろうか、苦笑しながら認める。




「やったぁーー!!二人とも話しがわかるぅ!!」











用意をして、階段に行くとビクトールとフリックが待っていた。

なんとなく話の予想はついていたが、声をかける。




「どうしたんですか?お二人とも?」

「分かってるんだろう?。」

「まぁ、何となくは。」




そう言うと、ビクトール共々苦笑する。

時間も無いためさっさと核心をつく。




たちのことですね?」

「ああ。やっぱり分かっていたか。
 帰ってきたら三人とも逃がそうと思う。」

「本人たちは嫌がるんじゃないかな?」

「だが、戦争に巻き込むわけには行かないだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」




『それはどうでしょう。』と言ってやりたかったが、堪える。

は何となくこれから起こる事にはたちが巻き込まれるのではないかと思っていた。

根拠なんて無いただの勘。

だが、は自分のそんな勘こそよく当たるのをイヤと言うほど知っている。

だけど、そんなのでビクトールたちを納得させられるはずも無いことも分かっている。

だからこそ黙っていた。

その沈黙を肯定と受け取ったのだろう。ビクトールは話を続ける。



「そこで、どこら辺に行きゃいいか見当をつけてきてくれ。」

「見当をつけるのはいいですけど、俺も逃げたりなんてしないですよ。」

「!!」




は溜息をつくと荷物を持ち直す。




「逃げ道の案内を俺に頼むつもりだったんでしょう?で、そのまま逃がそうと・・・・
二人とも分かり易過ぎですよ。」

「だが、お前は戦争を経験したこと・・・・・」

「ありますよ。」

「え!?・・・・あ!おい!!」




そういと、質問を拒絶するように階段を駆け下りていく。

最後まで降りきると、上の二人に向かって不適に笑いかける。




「何言っても俺は残りますよ。
残るからには本気で行きます。お二人には本気を見せたことはありませんでしたね。楽しみにしていてください?」

「・・・・・・・・・」




そう言うと踵を返して門へと向かう。

その背後からわずかにビクトールの声が聞こえた。

『楽しみにしてるよ。』と。









忘れかけている感覚

鈍っている身体

それを思い出そう

大切な人

大事な居場

この手で守れるものを守るために









□■□あとがきという言い訳□■□

はい。アップルさん登場でっす!!

ホントはアップルさんもっと出したかったんだけど・・・・

でも本命はフリックさんとビクトールさん!!

でも、気が付いたらフリックさんしゃべってねぇ!!

これからますます人数増えるのに・・・・・不安だ・・・・

ぷりーず・ぎぶみー・文才!!!