はじめはビクトールにも強制的に手伝わしたりしたが、色々あってすぐに諦めた。 そのことを素直に悪いと思っているのか、ビクトールもフリックも真面目に打ち合いの相手をしてくれているようだと、本人は満足に思っている。 しかし実際はの剣の冴えに二人とも自分を鍛えるいい場所だと思っているだけだったりするのだが。 そんなこの砦の主要人物三人はよく酒場で同じテーブルについている。 一見珍しそうな組み合わせだが、何のことはない。常に動き回っている隊長と副隊長を確実に捕まえられるのはこの酒場であって、事務を一手に引き受けているが報告や承諾を得るために訪ねてきていたのだ。 もっとも、今ではこの組み合わせを不思議に思うこともないほど日常の光景になってしまったが。
「ん?あいつらならトトまで仲間集めに向かったぞ?」 「トト・・・・?」
たちに仲間集めを依頼したり、お使いを自然と頼むようになったのは主にビクトールの扱いからだったが、も何かにつけて頼み事をしていた。 だから何故がいぶかしむのかビクトールには気になった。
「いや・・・多分大丈夫でしょう・・・・」
さすがにフリックも気になってきた。
「なんていうか・・・考えすぎな気がしないでもないんですが・・・」 「いいから言ってみろよ。気になるから。」 「はぁ・・・・」
「いいから言えって。」 「まずですね、ユニコーン少年隊の一件、あれって同盟都市のせいになってますよね?それって、ハイランドが侵略してくる絶好の口実を作るため、ですよね。」 「そうだな。」 「つまり、近いうちに必ず侵略をしてくる。それこそ数日中に。でないとうわさの利用価値が落ちてしまいますから。 「そりゃぁ、同盟都市の中心であり、もっとも大きな都市であるミューズを潰したいだろうなぁ・・・・」
はその答えに頷きながら続ける。
「・・・・・なるほど。確かにハイランドにとってこの砦は目の上のたんこぶだからなぁ・・・」 「そうです。そうすると砦とハイランドの途中にある村や町が危険にさらされますね。」
「まさか。無論行動は起こしました。勝手とは思いましたが、黙ってミューズへ書簡を送り、村人の避難を要請しました。俺個人や、砦の人間が喚き立てても村人が動くとは思えませんでしたので。」 「ならいいが・・・・」 「良くないですよ。」 「え?」
荒っぽい傭兵たちが使うカップは丈夫にできているが、の持っているものはピシピシと悲鳴を上げている。
「は?」 「だから、可決されなかったんですよ。住民の避難要請。」 「なんで!?」
ビクトールは不愉快をあらわに「そういうことかよ・・」と呟いている。
「何処の町にも腐ったやつらは居るって事ですよ。」
ミューズは凄腕のアナベルが仕切っているが、その才能ゆえか反対勢力も存在していた。その反アナベル派はアナベルと仲のいい傭兵砦も目の敵にしている。 いつもならうまく立ち回ってくれるアナベルも、今回の話は根拠がないため強く出られなかったのだ。 は自分を落ち着けるようにカップの中身をあおると元の調子に戻り話を元に戻す。
「わかった。すぐに何人か行かせよう。」 「お願いします。あと、何か切り札になりそうなものは・・・・?」 「火炎槍がある。」 「何でドワーフの武器なんて持ってるんですか・・・・?」 「ホントに良く知ってんなぁ。お前・・・」 「知識には自身ありです。」
ビクトールも先ほどの不快感を忘れたかのように不敵に笑いあう。 だが、フリックには悪役の定番シーンのように見えた。
「何だ?相棒。」
「フフフフ・・・戦争が終わった後ちょこっとな・・・・・」 「・・・・・・・・・・・手入れは?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
やっぱりかと溜息を漏らすと「確認してこい」と言おうとしたが・・・・・・・・
「・・・・・・・はい。」 「使えなかったら意味ねぇだろ。この熊。 「・・・・・・・はい。」
ビクトールは逃げ出すように地下の倉庫へと走っていく。 その背中を見送るとはポツリと洩らした。
最初のほうの『色々あって〜』ってのは短編のLast Restを読んでいただけたら分かりやすいです。 あと、設定のほうにも書いたのですが、主人公不老不死です。 それについて詳しいお話を書く予定も無ければ、重要なことでもあまり無いので、 さらっと流しちゃってください。 |