人は武器を選ぶ



また



武器も人を選ぶという



では 俺は



新しく持つ剣と



使わずにいる鋼糸



どちらにも選ばれるのだろうか?








―――――――Make your ditermination―――――――







は溜息を一つ漏らすと、両袖から鋼糸を取り外す。
そして、老人目の前に置くと、向かいの席に座った。
その両脇には、困惑したようなフリックとビクトールもいるが、先程から何も喋っていない。
は居心地の悪い感じを受けながら、じっと老人の出方を見ていた。
下手に鋼糸に触るのは危険すぎる。これは熟練した人間にしかもてないものだからだ。
老人は、触っても安全なところを慎重に見つけると、無闇に触ることなく、じっくりと見ている。
その表情は、真剣だが、には何を見ているのかさっぱり分からなかったが。






「ふむ・・・・・・・・・」






やがて納得したように、老人が鋼糸をしまうと、も肩から力を抜く。
何であろうと、素人が危険なものを持つのを見るだけで神経が磨り減る。






「で、何を見ていたんです?」
「形状、特性、扱い方に、欠点などなどじゃな。」
「見ただけで分るんですか?」
「ワシを誰だろ思っておる。武器コレクターのダネルじゃぞ?
 コレクターたるもの、その扱いを解せずしてやっていけるはずもなかろう。」
「そりゃそうですね。」





はまた、鋼糸を両袖に取り付けると、ギシリと椅子に座りなおす。
いくつか聞いておきたいことがあった。





「驚きましたよ。コレを知っている人がいるなんて。」
「実際見たのは初めてじゃ。
 文献にも詳しいことは書かれとらんったしの。」
「ジイさんでも、見たことが無い武器があるのか?」





今まで黙っていたビクトールも話しに加わってきた。
どうやら構ってもらえず退屈していたらしい。
ダネルと名乗った老人は、深くうなずくと、どこか呆れた目でビクトールを見やる。





「当たり前じゃ。この世に一体どれだけの武器があると思っておるんじゃ。」
「ま、相当な数・種類があるよな。」





フリックさんも呆れている。
そりゃぁ、この世の武器全て見るのは不可能だろう。
常に開発・改造が施されてもいるし、一つとして同じものもないだろうから。





「ワシが色々知っているのは、どれもこれも文献に書かれている事を読んだからじゃ。
 現に、この小僧の武器も記述が少しあったのを覚えているに過ぎん。」
「そうか・・・・・・・」





そう言うと、ビクトールは少し項垂れる。
はその様子を少し笑いつつ、本題に入る。





「その記述なんですが・・・・・・」
「ふむ。やはり気になるか?」
「ええ。」





そう言うと、ダネルは思い出すように上を仰ぐと、話し出す。





「その文献にも詳しい事は書かれておらんこったが、唯一言『袖口に特徴的な皺が出来る』とだけあったかのう。」
「そうですか。」
「ああ。使い方や、形状などは全くか書かれておらんかった。
 参考になったかね?」
「はい。」
「ま、レアな本だったし、知っておるものもいなかろう。」





そう言うと、ダネルは『お前さんにあいそうな剣を探してこよう』と言って、奥へ引っ込んでゆく。
それを三人は見送ると、ビクトールがずいっと体を寄せてきた。





「おい、。」
「はい?」
「何でそんなモン持ってたの黙ってたんだよ。」
「はぁ・・・・・・・・・」





は困ったように返事をする。





「詳しくは言えないんですけど、生まれ故郷で教えられてんですよ。使い方。」
「故郷?」
「はい。ただ、“今は無き”がつきますけど。」
「わりぃ・・・・・・・・・」
「いえ。全く気にしてないので。」





ビクトールは、それ以降黙ってしまうが、今度はフリックが話しかけてくる。
どうやら彼も、かなり気になっていたようだ。





「ともかく、その武器じゃダメなのか?」
「だめですね。」
「何で?」
「・・・・・・・・・・・・これは手加減が難しいし、一気に大勢を傷つける。
 こんなものを戦闘で使ったら、周囲の人間まで被害が出ちゃいます。
 そんなもの使いたくありません。」
「だから剣を?」」
「ええ。剣なら人一人を相手にします。まだ手加減が簡単です。」





そんな話をしていると、ダネルが奥から三本の剣を持ってきた。
この中のどれかから選べと言う事らしい。
は一本一本鞘から抜き、重さや握り具合などを見ていくが、驚いてことに、どれもの丁度良かった。





「驚きました・・・・・・どれも俺の好みにあってます。」
「だから、コレクターを嘗めるなと言うんじゃ。
 その程度なら手を見れば一発じゃ。」





はコレクターの認識を改めながら、もう一度三本を見ていく。
一本は以前使っていたのにそっくりな両刃。
二本目は少し反りの入った片刃。
三本目は前よりは少し長めの両刃。
はじっくりと考えると、一つを手に取った。





「これをよろしいですか?」
「ふむ。構わん。持っていけ。」





が選んだのは、二本目の反りの入った片刃剣。
少し細身のようだが、実際はかなり鍛えてある物らしく、かなりの強度がありそうだ。
何より持った感じが最もしっくりときた。
は、代金を払おうと、財布を取り出そうとするが、それをフリックが止めた。





。俺たちが払う。財布はしまっとけ。」
「え?いや、これ自分の買い物だし・・・・・・」
「いいって!今日は楽しかったしな。奢りだ奢り!!」
「いや、でも!」





あたふたすると、笑う腐れ縁。
そんな三人を呆れて目でダネルは見渡すと一言。


















「誰が売ると言った?」

「「「ええ!?」」」


















てっきり売ってくれるものだと思っていた三人は、驚いてダネルを振り返る。
ダネルはそんな三人の顔を見てニヤリと笑って



















「金なぞ要らぬ。持っていけ。」



















『いや、ある意味それも衝撃なんですけど!?』と慌てふためくに、ダネルは豪快に笑うと、『鋼糸を見せてくれた礼じゃ!』と笑った。
フリックとビクトールも驚いて固まっている。
三人とも剣を扱う人間だ。この剣がどれだけの品かは大体分っている。
はっきり言って、『見物料』と割り切るには高価過ぎた。





「それにの、鋼糸を操れるお前さんなら、十分生かすことが出来るじゃろう。
 剣は使われて何ぼのもんじゃ。だからふさわしい人物に譲るのも当然と言えるじゃろう?」





は、そう言われてやっとパニックから抜け出す。
そして、じっと手元の剣を見る。

(俺にふさわしい剣・・・・・・?)

値段はともかく、自分はこの剣にふさわしいのか疑問になる。
それを見越したように、ダネルが続けて言う。





「片刃剣は扱いが両刃よりも難しい。
それは元々片刃は守るための剣として、人を必要以上に殺さぬよう、刃を半分にしたんじゃ。
殺すのは容易い。だが、生かして戦うのはずっと難しい。
お前さんはそれを知った上で、必要以上に殺さぬよう鋼糸を使わず剣を使い、その存在すら隠してきた。
十分に片刃を使いこなせる心構えがあるはずじゃ。
失礼かも知れんが、寧ろその鋼糸のほうがお主には似合わぬよ。」

「・・・・・・・・・・」





は、言われると少し考えてから、腰のその剣を差した。





「それでは、遠慮なく使わせていただきます。」
「ふん。死ぬなよ、。」
「はい。」





最後に初めての名を呼ぶと、ダネルは満足そうに頷いた。
フリックと、ビクトールも黙ってそれを見ていた。























新たに得た片刃の剣



コイツ俺に相応しいと言われた



だが



鋼糸は



これは人を殺すためのもの



これは全てを奪うもの



そんな物が相応しいと



言われなかったから



ほんの少しだけ



安心した



















□■□あとがきと言う言い訳□■□
やっとこさ、買い物が終わりました・・・・・・・・・
何ていうのかね?暗い!!
もっとギャグにしたかったのに、思いっきりシリアスだし!!!
鋼糸との故郷の話はこれ以降出さない予定です。
そっちは完全オリジナルな話しだし。
そんなとこまで書けません。
それに、そこ触れたら第一の相棒(薄紅は第二の相棒)の話もしないといけないから、無理です。
だって、そいつはU軸には完全に関係ないもん。
書けというほうが無理です。
あと、次回は丘上会議です。
ふふふふふ・・・・・・・2騎士が出てくるわvvvv