共に過ごす日々
考えてみれば結構長いが
こんな風に町を歩いたのは
初めてで・・・・・・
―――――――Make your ditermination―――――――
薄紅を見たときの彼らの反応は、はっきり言って可笑しかった。
「うわ!?何打その奇抜な色をした鳥は!!」
「どこから拾ってきたんだ?」
素直なその感想に、薄紅は怒ったようで、奇抜な色といったビクトールを嘴で突きまわす。
ビクトールはまさか人語を解するとは思ってい無かったようで、粟を食って逃げ回る。
そんな様子をは苦笑いしながら眺めていたが、止める気も起きなかった。
誰だって相棒を馬鹿にされたら、気分はよくは無いのだ。
数分して薄紅の機嫌が治まったらしく、またの肩に止まる。
その悠然とした態度に、ビクトールは突かれた頭を抑えながら口を尖らせた。
「黙ってねぇで、止めろよ。。」
「ビクトールさんだって、フリックさんを馬鹿にされたら腹が立つでしょう?」
「そりゃぁ、相棒だから当然だろう?」
良く分かっていたいようで、ビクトールは不思議な顔をしている。
は笑いながら、薄紅を紹介する。
きっとこれを聞けば今の言葉を理解してくれるだろう。
「紹介しますよ。こいつは薄紅といって、俺の相棒です。
元々出身は遠いところなんですが、俺について回って村に来たんです。
この先何かしら手紙を飛ばしたりする時にとか使っていいそうです。
大体どんな環境や、気候でも適応できますし、人語を理解するので伝令役としては最適だと思います。」
そう言うに、薄紅が首を摺り寄せる。
その様子は恋する乙女のようで、とても慕っているようだった。
「鳥が相棒なのか?」
「ええ。先の様子や、いろいろな事を教えてくれたりと、良く助けてもらっています。」
「へ〜賢い鳥なんだなぁ・・・・・・」
そうフリックは呟くと、ちらりと隣にいる自分の相棒を見る。
(それに引き換え、俺の相棒は馬鹿熊か・・・・・・)
同じ動物でも、熊と鳥ではぜんぜん違う。
しかも、その前に“馬鹿”が着いてしまうのだ。
そう考えると、溜息が自然と漏れてしまう。
肩を落としたフリックに、ビクトールは気付いて、つっかかってきた。
「おい、フリック!!お前今失礼な事考えてただろ!!」
「な、何のことだよ!!」
「俺の相棒は馬鹿熊だとか考えなかったか?」
「実際その通りだろうが!!」
「なんだとぉ!?」
は笑いながらその光景を見ていたが、ポツリと
「こんな時だけ反応するとは流石は野生動物。」
最も失礼な言葉を吐いていたのは、肩に止まっていた彼の相棒しか知らない。
「いらっしゃい!!いらっしゃい!!」
「安くしとくよ!!」
「ウチの店は品揃えが最高!何でもあるよ!!」
「質がいいのが来てるよ!!」
いかにも賑わっている市をはビクトールとフリックに連れられてきていた。
二人はいたるところで声をかけられ、そのつど色々な物を貰ったり、買わされそうになっていた。
商売人根性で、あげる物と一緒に売り込むのだ。
二人は余計なものを買わないようにしながら、進んでいる。
しかし、は何ともいえない気分だった。
貰うもの、買うものはどれも食料に、医薬品。
確かにそれらは必要なものでもあるのでもあるのだが・・・・・・
「俺が今日買いたいものは剣なんですけど・・・・・・・・・」
今度は札の値段交渉に入ったフリックとビクトールを一歩はなれてボソッと呟く。
二人は聞こえていないように値段交渉を続けるが、目が泳いでいる。
はこれ見よがしに溜息をつくと、店の親父と、二人の間に入る。
「親父さん。」
「何だね?」
「そこの札、かなり痛んでますよね?魔力が何時溢れだしてもおかしくない。」
「う・・・」
「しかも、そっちの水晶、あれガラスでしょう?」
「な・・・」
「それでもって、そこのロッド。アレについている宝石全部偽者なのに、あの値段は詐欺だよね?」
「・・・・・・・・」
「商品おまけしてくれないと、大変な事になるぞv」
「わかった・・・言い値で構わん・・・・・・」
店の親父を黙らせると、は破格の値段で良品を買っていく。
さっさと買い物を済ませると、ズンズン店を出て行く。
フリックとビクトールは慌てて付いていくと、出口でが起こった怒った顔で待っていた。
二人は冷や汗をかきながらも、の機嫌をとり始める。
「、剣はこれから案内するから・・・・・・」
「フリックさんは真面目な方だから寄り道なんてしないかと思ってました。」
「う・・・・・・」
「ビクトールさんは予想通りでしたけど。」
「おい。」
「何か?」
「イエ・・・・・」
鮮やかな笑顔で二人を黙らせると、は深々と溜息をつく。
「で?その店は何処なんです?」
てっきり、もう帰るとか言われると思っていた二人は驚いてバッと顔を上げる。
は呆れた顔をしているはいるが、怒っていないようだ。
二人は顔を見合わせると、不思議そうに言う。
「怒っていないのか?」
「怒って欲しいんですか?」
「いや!!そういうことじゃなくて!!」
「分ってますって。怒ってないですよ。
元々俺が剣を捨てるような行動をとらなければ、お二人をこうして連れ回すようなことにはならなかった訳ですからね。
寧ろ反省しているんですよ?」
「そ、そうなのか?」
「そうなのですよ。」
それを聞くと、ビクトールとフリックは安心して当初の目的である武器やへと改めて向かいだした。
その道すがら、が怒っていないと安心すると、ビクトールが先程の店の話をする。
「お前さん、買い物慣れしてんなぁ・・・・・・」
「旅をしていたと言ったでしょう?旅には金がかかりますからね。良いモノをなるべく安く。これは鉄則でしょう。」
「にしても、札の痛み具合なんて良く分ったな。
早々分るもんじゃないぞ?」
「単純ですよ。店の奥のほうにありながらも、一番取り出しやすい位置にありましたからね。
しかも、あの火の札を一番勧めていましたからね。値段も一番譲歩してたし。
つまりはあの店主は、痛んできたような札を兎に角売りたかった。
だけど、もし買われてしまっても、使用しないで暴発何かしたらあの店は終わりですね。
だけど、近々ハイランドとの戦が噂荒れている傭兵の頭達だったら、すぐに使われて、痛んでいた事を気づかれる事も無い。
だからあの人はお二人に食いついてきたんですね。」
「ほえ〜〜〜」
の語りに、ビクトールは舌を巻く。
自分は札のことは良く分からないにしても、店の中にどんなものがあって、店主がどうしてそれを一番売りたいのかなんて考えていなかった。
そんな感心しきっているに、少し前を歩いていたフリックが首をかしげる。
「だけど、札に使用期限なんてあったか?」
「無いですよ。」
「って、オイ!!」
あっさり答えるに、ビクトールが思わず突っ込む。
やっぱりと納得しているフリックに、理由を聞く。
「俺は紋章を扱ってるんだぞ?基本的なことは知ってる。」
「き、基本なのか?」
「そりゃぁ、そうでしょうね。
札っていうのは、魔術に長けていない人でも扱える、それが売りですよ?
そんなお手軽商品的なものを、劣化しやすいもので作りますか?」
「、お前知ってて・・・・・・」
「知ってていいました。」
呆然としていたビクトールは、はっと気付いてに食いかかる。
「じゃぁ、店の親父は何で騙されたんだ?」
「劣化してると、思い込んでたんでしょうね。」
「水晶の話は?」
「あれはホント。後ろの棚が曲がって見えた。」
「ロッドは?」
「あれもホント。あんなに色々くっついてて、あの値段は返って怪しすぎ。」
と、ビクトールが何とも言えない顔をすると、フリックが、苦笑をする。
フリック自身もそんなことに気付いていなかったし、言われるまですっかり忘れていた事でもあった。
それに、こうして種明かしをされた後に、最後の店の親父とのやり取りを思い出すと、思わず笑ってしまう。
『その痛んでそうな札もこっちで引き取るので、只にしていただけませんか?』
無論店の親父は、痛んでいる(と思い込んでる)札を了解済みで引き取ってくれると、喜んで渡したのだが、本当はにしてやられていたのだ。
思い出して、ちらりとを見ると、目が合った。
は一瞬キョトンとすると、ニッコリ笑って、片目をつぶる。
そして口元に人差し指を当てて
『黙っててくださいね?』
そう合図されて、フリックも笑い返していた。
「こっちだ此処の店。」
「ほんとに掘り出し物があるんですか・・・・・・?」
「騙されたと思って付いて来いよ。」
「本当に騙さないでくださいよ・・・・・・?」
先程の通りから少し脇道に入った所、何の看板も無く、一見ただの民家にも見えるそんな一角には二人に案内されてきていた。
二人曰く『隠れた名店』らしいのだが、には何となく信用できなかった。
どうしてかと聞かれると、色々浮かぶのだが、まずこの薄暗く、人気の少ないのがいただけない。
隠れた名店でも、此処はいくらなんでも隠れすぎじゃないのか?と思えてくる。
いつも落ち着いている相棒の薄紅も、不思議そうに辺りを見渡している。
そんな相棒をなでて落ち着かせると、前の二人が足を止めた。
どうやら到着したようだ。
「お邪魔するぜ〜〜」
ビクトールが無遠慮な挨拶と共に入っていくと、フリックも黙って続く。
は二人の後をためらいもせずに続いた。
もしいいものが無かったら、ビクトール辺りにたかればいいやと勝手に考えながら。
入ってみると、外見とは裏腹に中は明るく、内装もこざっぱりしている。
壁には綺麗に整頓された剣や盾、その他のありとあらゆる武器が飾られている。
質はざっと見た目でもかなり良く、此処までのものをこのバリエーションで集めるのは相当大変なものだろう。
軽い民営博物館のようだ。
驚いて入り口で見上げていると、薄紅が襟を引いた。
ふと目線を戻すと、フリックとビクトールがカウンターの中へ入っていってしまう所が見えた。
慌てて追いかけると、一人の老人が奥の椅子に座って剣を研いでいた。
老人はビクトール達に気付くと、手を止め、驚いたように見上げた。
「ビクトールじゃないか!?」
「久しぶりだな、爺さん。まだ生きてたか。」
『年寄りに向かってそんなことを言うヤツがおるか!!』と言いながら老人は頼りない足つきながらも、椅子から立ち上がると、顔を皺だらけにして嬉しそうに笑う。
は良く分らなかったが、どうやら彼らは古くからの知人だとおぼろげに判断した。
ひとしきり挨拶を済ませると、老人がと薄紅に気が付く。
「ビクトール。この小僧はなんじゃ?」
「こいつは。今の仲間だ。」
はお辞儀をすると、自分から名を名乗る。
「俺は=と申します。
今は傭兵としてビクトールさん達の隊に所属させていただいております。」
「珍しいのぅ。ビクトールがこんな小僧を戦に連れて行くなんざ。
相当見込みがあるのか・・・・・・にしては、帯剣しておらんな。」
「ああ。今日はそのことで頼みがあってな・・・・・・」
ビクトールは掻い摘んで事情を話すと、に合う剣を見繕って欲しいと頼んだ。
老人は難しい顔をすると、皺だらけの指で顎鬚を撫でて考える。
「今の話からすると、剣を持たない状態で、森を二日で抜けたそうじゃな?」
「はい。」
「ふむ・・・・・・おぬし、他に何か紋章意外に武器を持っておるじゃろう?」
「無論隠し武器は少々・・・・・・・・・」
「いやいや、そうではない。他に主戦力となりえる武器じゃよ。」
「・・・・・・・・・」
は返答しかねて無言になる。
武器の収集家であるこの老人なら、鋼糸を知っていてもおかしくない。
隠し通したいわけでもなかったが、知られるも望んでいるわけではない。
どうしたものか迷っていると、老人が信じられない事を言った。
「その両袖にある隠し武器ではないのかね?」
反射的には両袖を隠す。
未だかつて隠し武器の場所を言い当てられてことはなかった。
ビクトールと、フリックが訝しげな顔をしている。
だが、はそんな二人の表情も見えていない、ただただ呆然と老人を見ていた。
無意識に身構えて、老人を見据える。
「やはりそうじゃったか・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「オイ、?この爺さんに身構えるこたぁないだろ?」
「え、ああ・・・・・・・・・・・」
ビクトールに声をかけられて、はっと意識が戻るも、体はぎこちなくしか動かない。
薄紅が心配そうに体を寄せてくるが、苦笑しながら撫でて大丈夫と呟く。
「よく隠し武器の位置が分りましたね?」
「実際見たことは無かったがの。記述とそっくりな事があってね。」
「・・・・・・・・・・・・この武器の事はご存知で?」
「記述上の話ではの。
暗殺武器“鋼糸”じゃな?」
「・・・・・・・・・・ええ。」
彼らと町を歩くのは初めてで
だけど
それと共に
俺を本気で驚かせた人間に会えるなんて
本当に今日と言う日は
とても忘れられない日になりそうだ
□■□あとがきという言い訳□■□
さぁて、今回も前半後半で話の雰囲気さえも違ってますよぉ。
今回はまるっきり馬鹿話で行くつもりだったのに、どうしたものか・・・・・・
もしかしたらそのうちこの話だけ書き換えるかも。
でもなぁ・・・・・・
どうしたものかなぁ・・・・・・・・・
っていうか、薄紅目立ってないし、お爺ちゃん名前出てないし・・・・・・・・・
話し続いちゃってるし・・・・・・・・・
まぁいいか。この話は後で頑張って繋げるように利用して、あんまり暗くならないように頑張れば。
ん。よし決定(←いい加減)
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