再会した彼等



今までのように再会を喜び



今までのように並んで歩いた



だけど



その二人に埋めがたい溝が



出来てしまったと



感じたのは俺だけだろうか?











―――――――Make your determination―――――――










「ふぃ〜〜何とか無事に着いたね。」
「はい。ありがとうございます。」




森を抜け、ミューズの明かりが見えると、鋼糸をしまって肩の力を抜く。
帰ってくる時何度かモンスターに襲われたが、短剣しか持っていないジョウイと、剣を置いてきてしまったは隠し武器だけで全て撃退してきた。
もちろんいつに無い状況で緊張はしていたと分ってはいたが、思った以上に肩に力がはいていたらしい。
まだまだだな、自分も。と苦笑していると、ミューズの門の方から駆け寄ってくる人影が見えた。
ジョウイも気が付いたようで、走り出す。




「ジョウイ!!無事だったんだね!?」
「お帰りジョウイ!!」




どうやらとナナミのようだ。
少し離れていたし、木々が邪魔で見えないが、声がする。
どうやらジョウイの帰りを門の外で待っていたようだ。




「ああ。無事に帰ってきたよ、ナナミ。」
「良かった・・・・・・
 あれ?ジョウイ、短剣なんて持っていたっけ?」




どうやらも気になったようだ。俺は何と言うのか気になった。
幼馴染のにも暗さを宿した目で答えるのだろうか?




「これかい?
 これは逃げる時に兵士から奪ってきたものだよ。」
「そっか・・・・・・」




切れの悪いの声。
きっと彼もジョウイの目にいつに無い光を見たのだろうか・・・・・・・?
その場で溜息をつくと、止めてた足をまた動かしだす。
このままずっと隠れているわけにもいかないし、ナナミたちに心配させてしまったのは何もジョウイだけではないから、速く顔を見せて安心させてやらねば。
がさがさと、わざと音を立てて近づくと、まず最初にナナミが飛んできた。




「お待たせナナミ。ちゃんと無事に帰ったよ。」
「遅いよ!!すっごく心配したんだからね!!」
「ははは・・・・・ゴメンゴメン。」
「お帰りなさい君。良かったよ。無事そうで・・・・・・」
「心配かけて悪かったな。この通りピンピンしてるよ。」




とナナミの肩を叩くと、宿に向かって歩き出す。
怪我が無いとは言え、結構疲れたからね。ちょっと休みたいな・・・・・・・・・
兄弟はジョウイを挟んで、アナベルやジェスについて話をしている。
どうやらやっぱりジェスの判断で二人を駐屯所に向かわせたようだ。アナベルも心苦しかったろうが、ミューズの事を思うと、救出隊を送り込む事も出来なかったのだろう。
ナナミはしきりに怒っていたし、もどこか納得がいかないようだ。
だが、ジョウイは難しそうな顔をしていた。

(全く何考えてるのやら・・・・・・・・・)

は少し後ろを歩きながらそう呟いた。
駐屯所でつかまってからというもの、ジョウイはどこか難しく考え込んでいる節がある。
そんな若い年で小難しい事考えたって、綺麗な答えなんて出るはずが無いのに。と思う。
そもそも、悩みに確固たる解決法なんてある場合のほうが少ない。
悩むのは大いに構わないが、変に突っ走らないかどうか心配だ。

(そんな風にあの若さで割り切るほうが可笑しいのかね・・・・・・・・・?)

三人は何時ものように並んで歩きながらも、何処かピッタリと合っていた歯車が狂いだしたような感じが拭えなかった・・・・・・
































が宿に帰ると、ビクトール達も安心したように出迎えてくれた。
何だかんだ言って皆に心配されていたようだ。
特に、フリックが剣を持っていないことに気付くと、凄い顔をされた。




「お前、剣はどうした?」
「そういえば、持ってないな。部屋に一度よってきたのか?」
「あ〜〜〜その・・・・・・色々ありまして・・・・・・・・・」
「色々?」
「いや〜〜〜ちょっくら駐屯所で捕まって・・・・・・」
「つかまったぁ!?」
「その時取り上げられて、逃げる時そのまま綺麗さっぱり忘れてきてしまって・・・・・・・・・」
「忘れるってありえねぇだろ!!!」
「いや、案外ありますよ・・・・・・?」
「いや、無いから。」




酒場のテーブルに着いていた皆が突っ込んでくる。
は苦笑いしながら、まぁまぁと、人事のように宥める。
ビクトールや、たちは呆れかえった顔をして、背もたれに寄りかかって上を仰ぐ。
じぃざす・・・・・という言葉が聞こえてきそうだ。
ただ、唯一フリックだけは納得がいかないようだ。
眉を寄せて、どこか怒っている様でも、困惑しているようでもある。




「お前にとって、剣はそんなもんなのか?」
「そりゃ大事にしてましたけど、俺の場合は消耗品でもあるんで。
 あの剣自体五本目くらいですからね。」
「そんなのでいいのか?」




があっさりと剣を忘れてしまった事がどうしても納得出来ないようだ。

(そういえば、“青雷のフリック”は戦士の村出身だって聞いたことがあったな・・・・・)

まだがトラン地方にある村にいた頃に、解放軍の幹部の話を聞いたことがあった。
その中の一つにそんな話があったはずだ。




「フリックさんは戦士の村の出身ですよね?」
「ああ・・・・・・」
「戦士の村の方は自分の剣に大事な人の名前をつけて、大事にすると聞いたことがあります。
 それが本当であれ、そうでないとしても、俺はちょっと違う考え方なんです。」




そう言うと、は言葉を切って少し考える。
何時になっても自分のことを説明するのは苦手だ。




「俺は別に剣が無くてもいいんです。大切な人が生きてくれれば。
 だから、剣が邪魔ならすぐに捨てます。
 大事な人たちが生きていてくれるのであれば、俺は何だって差し出しますよ。」




だから、剣に名前をつけてないし、執着しないのだとは穏やかに笑いながら話した。
フリックはの考えを全て受け入れられたわけではないが、それでも納得した。
そんな考え方もあるのかと。
その話が終わると、今度はビクトールが不思議そうに言う。




「だがよ、剣無しでどうやって帰ってこれたんだ?」
「そういえば変よね?」




ビクトールの言葉に、ナナミも首をかしげる。
剣が無い状態で夜の森を殆ど丸一日歩いていたのだ。モンスターに会わないわけが無い。
そういえばと、皆またのほうに注目すると、は冷や汗を掻く。
本当のところその質問のほうが困った。
理由はあまり無いのだが、鋼糸のことはあまり言いたくない。
ジョウイ方にちらりと目をやると、コホンと咳払いをする。




「それは、俺の水の紋章で。」
「水の紋章だけでどうにかなるのか?」
「水の紋章って、防御・回復には向いてるけど、攻撃性はあまり無かったんじゃないの?」
「そこはいろいろ企業秘密がありまして・・・・・・・・」
「企業秘密って何だよ?」
「秘密だから秘密なんでしょう。」




苦し紛れの言い訳をしながら、は腰を浮かす。
こうなったら逃げるが勝ちだ。
だが、すぐに気がつかれてビクトールがニヤリと笑う。




「お?逃げるのか?
 別に構わんが、そうなったらお前の荷物はモンスターの巣の中にあるかもな。」
「ちょっとビクトールさん!!」
「何もそうすなってるとは限らないぞ?逃げなきゃいいだけだぜ?」
「う〜〜〜!!」
「っていうか、ジョウイに聞けばいいんだよね。」




いきなりがジョウイに話を振る。
やビクトール達が見守る中、ジョウイはニッコリと笑うと、




「秘密だよ?僕と君とのね。」




そう言うと、さっと席を立ち、部屋へと戻ってしまった。
慌ててとナナミがジョウイを追いかけて部屋へと戻っていく。
その三人を見ながらは胸をなでおろし、また席へ付いた。
もう逃げる必要な這いと思う。




「ったく、いいじゃねぇかよ。どんな風に戦ったのか教えてくれたってよ。」
「奥の手ってのは隠しておきたいんですよ。」
「全く・・・・・・」
「じゃぁ、、新しい剣をまた探しにいくのか?」
「ええ。明日探しに行こうかと。」




いくら鋼糸があるからといって、剣を持たないままというのは心もとない。
特にこれから戦いが始まるのに、丸腰というわけにはいかないだろう。
幸いミューズは大きな都市だから、いいものが見つかるはずだ。
は思いついたように付け足した。




「だったら俺も付いていこうか?」
「フリックさんが?」
「ああ。嫌か?」




どんな心境の変化かわからないが、そんなことを言い出した。
には予想外の事だったが、どうやらビクトールにも予想外の事だったようで、驚いている。




「おいおい、フリック。急にどうしたんだ?」
「いや、単に此処の地理は俺のほうが知ってるだろ?
 だから案内しようかと思っただけだけど。」
「ああ、そういうことか。なら俺も付いていくぜ?」
「ビクトールさんまで・・・・・・」
「俺のほうが穴場な店とか知ってるからな。いたほうが便利だろ。」
「そりゃぁ、ありがたいですが、良いんですか?」
「遠慮する必要はねぇよ。」




そう言うと、ビクトールは豪快に笑い、の肩をバシバシ叩く。
その力に咽ながらも礼を言うと、も部屋へと引き上げた。
何だかんだ騒いではいたが、途中から眠気に襲われていたのだ。

扉を閉めて、部屋のベットにダイブする。
疲れの度合いから言って、そのまま寝付けそう気がしたのだが、何となくそのまま目を開けていた。
そしてそれからどれくらい経ったのだろう、何となく呼ばれた気がして窓を開けた。
窓の外にはいつも通りへんてつの無い暗闇の中に無数の星々輝いていた。
しかし、その中に明らかに可笑しい色が混ざっていた。
白っぽい色で、星にしては大きすぎた。
何処となしか上下に揺れている気もする。
は訝しげに見ていたが、はっとその正体に気付くと、慌ててマントを丸めて机の上に置く。

暫くして窓のところに付いたソレは、によって大事にマントの上に置かれた。
明かりの下ではっきりとしたその姿は、薄紅色で深緑のマントに映えている。
大きめな鳥の姿をしていた。
は机の前にかがむと、その目を高さをあわせる。



        うすくれない
「・・・・・・・・薄紅。」




ポツリと呟いたの声に鳥は嬉しそうに頬に体をこすり付ける。
はくすぐったそうに鳥をなでると、その目をまた覗き込んで微笑んだ。
その鳥の目は紅玉をそのままはめ込んだように真紅だった。















大事にすべきものを無くしてしまったあと



俺のもとに来た真紅の目をした鳥



コイツはとても大事な 大事な



俺の第二の相棒



剣を捨ててしまった



それを補うようにして



きてくれたと感じるのは



やはり俺だけだと思う












□■□あとがきという言い訳□■□
さて、やっとこさ薄紅が出てきました。
どうやって出そうか困っていたんですが、無事クリアー!!
今回は特に書きたいシーンは無かったんですが、何となくお話息抜きっぽく、更にこれからの話に発展するような感じで書きたいと思ったんですが、どうなんでしょう?
できていない気がします。
だって、フリックさんとの掛け合いが微妙すぎるし。
最近はもう『文才を!!』と叫ぶ事もなくなりましたよ。
諦めましたとも。
ええ。そりゃぁ、スッパと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅ。
で、次回は腐れ縁+薄紅とお買い物!!
ぜったい薄紅に二人は驚く事でしょう!!(当たり前だって。)