暗闇の中


君に確かめたい事がある


それはとっても大事な事で


君にとっても


俺にとっても


知らなければならない事だと思う


だから


俺の秘密も教えよう・・・・・・






―――――――Make your determination――――――――









出来るだけ急いできたのだが、また日が沈んでしまった。
夜の森は進むには危険すぎる。
は仕方なく薪を集めて火をおこす。
持ってきた荷物に保存食があったが、一人分しかなかった為、その辺でウサギを捕まえて簡単に調理する。
その手つきは手馴れていて、味も中々だった。
ジョウイはユニコーン少年隊にいた頃何度も食事の準備などをした事があったため、その手際のよさが良く分った。






、君は砦に来る前は何をしていたんだい?」
「ん?ジョウイに話したことなかったか?
 俺は砦に来るまで一人旅してたんだよ。」






ジョウイにマントを貸してやったは、向かいのに座って火の番をしている。
その火を見ながら思い出すように目を細めると、今までに見てきたいろいろな事を話し出す。
ある村では大工の仕事をしたとか
ある町ではお祭りの時期に被ってしまい、思ったよりも宿が取れなかったりとか
ある街道では盗賊に出くわしたとか
ジョウイは、ユニコーン少年隊として軍役で遠出する以外殆どハイランドから出る事がなかったため、とてもその話が面白く、子供のようにあれこれ質問をしていた。






「そういえば、君はどうして旅を始めたの?」
「う〜〜ん・・・・・・・・・一言で言うのは難しいが、村に愛想が尽きたからかな?」
「え・・・・・・?」
「いや、愛想が尽きたってのは正しくないな。
 何ていうのかな・・・・・・村の中にいてはいけないと思ったからかな・・・・・・・・・」






は木の根に寄りかかり、伸びをすると、ジョウイの顔をニヤリと見る。






「故郷の事を聞くなんて、ジョウイお前もしかして故郷が恋しいのか?」
「えぇ!?」
「だってそうだろ。自分も故郷が気になるから他の人間の故郷の話も聞きたい、そんな事は結構あることらしいぞ?」
「いやっ、ただ不思議に思っただけだから!!」






必死になって否定してくるジョウイが可愛くて思わずお腹を抱えて笑ってしまう。
ジョウイは真っ赤になりながらも『違うし、笑うな!!』と怒ってしまう。
は何とか笑いを堪えると、目じりに溜まった涙を拭うと、まだ怒っているジョウイに謝る。
無論まだどこか可笑しそうな感じがしてしまうので、ジョウイが許してくれるわけはないのだが。
案の定、許してくれる気配のないジョウイに、は溜息をして、許してもらうのを諦めると、真面目な話を切り出す。






「ジョウイ。真面目な話しどうなんだ?
 今でもハイランドに戻りたいのか?」
「・・・・・・もちろん故郷だからね。帰りたいに決まってるよ。」






ジョウイの答えははっきりしたものだった。
その言葉の裏にある明確な決意を感じ取っては溜息を吐く。
あまりこんな話はしたくはないのだが、聞かねばならない。

(そう。それが俺の役割だからな・・・・・・・・・)

は忌々しげに内心溜息を吐くと、火をはさんでまん前にいるジョウイの目を見据える。
















「その為に紋章を手に入れたのか?」

















ジョウイは驚いたように目を見開くと、無意識に右手の手袋を押さえ、すぐに睨むような目をする。
その様子はまるで手負いの獣のようだと、は漠然と思う。
隠していた事を見当てられ、混乱と不安に陥り威嚇する、そんな無力な獣。






「・・・・・・・・・どして君が紋章のことを知っているんだ?」

「俺には役目が有ってね、真の紋章の継承者の意志を確かめる事。それが俺の役目だ。
 実際は俺が勝手に決めたんだが、だからといって止めるわけにも行かなくてね。」

「君は一体・・・・・・」

「何者か、って言われたら困るよ。
人間ではないといわれたらその通りなんだけど、じゃぁ、人間じゃないのかって言われたら、それも違う。
結局のところ俺はただの囚人に過ぎないんだよ。
運命に捕らわれた囚人。
それがもっとも俺を正確に表しているのかもしれないな。」

「どういうこと?」

「経緯は面倒くさいからパス。
兎に角俺は継承者達の意志、つまり目的や何やらを聞き出す。それが俺の役目。
だけど、継承者というくらいだからね、引継ぎが行われる場合がある。今回のようなもんだね。
だからそうなったら自動的かつ一方的に俺に伝わるようになっている。
そしてもちろん不老になった継承者たちが何時紋章を手放したりするか分らないからね、俺も同じように不老、しかも俺場合は不死までついてきている。
詳しい仕組みは分らないが、この世界のシステムにそう組み込まれているらしいよ。
つまり俺は紋章が織り成す世界が終わらない限り、ずっとずっとこのまま生き続けるんだよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」






の秘密にジョウイは言葉を失っていた。
世界のシステムに組み込まれているという事は、世界の始まりからずっと生きてきたということではないか。
ショックで今混乱する頭を抱えつつ、ジョウイは夜のせいで漆黒の色をしたの目から視線をそらす。
いつもの深い緑色と違うため、別人のように感じて恐ろしかったのだ。
だけど、それでもは真っ直ぐに自分を見ていることは分っている。
彼は継承者の、ジョウイの言葉を、それこそ別人のように、静かかに待っているのだ。






「僕が紋章を継いだのは、ハイランドに戻るためじゃない・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」






ジョウイは沈黙と視線を重く感じながらも、舌に言葉を乗せていく。
ゆっくりと ゆっくりと
まるで自分自身の中で確かめて、認識するためのように。
























「確かにハイランドに、キャロに戻りたいという気持ちもある。

 だけどそれは大切な人、やナナミ、母さん達との思い出があるからだ。

 俺はそんな大切な人たちを守りたい。

 これ以上大切な人たちを失わないために、この手で、自分の手で守りたい!!

 そう思ったから、俺は紋章を、力を手に入れたかったんだ・・・・・・・・・!!」


































ジョウイはそう言うと、の目をしっかりと見据える。
(そう。そのためにはルカを僕が倒さなきゃいけないんだ!!)
声に出さない決意を精一杯目に漲らせて。
ジョウイの見たの表情はどこか悲しそうだった。
それでも、目は見詰め合ったままはジョウイに質問をしていく。






「大切なもの守るためだな?」
「そうだよ。」
「その為には犠牲を払う覚悟はあるか?」
「覚悟はしている。」
「その犠牲が、自分であったとしたら?」
「―――構わないよ。皆を守れるのであれば。」






はジョウイの迷いのない返事に深々と溜息をつくと、最後の質問をする。






「ジョウイ。
 その力があれば全てを守れると思うか?」

「――――――あぁ。」






はそこまで聞くと、最後に大きく溜息を吐くと、目を閉じ、視線を外した。
(これで役目は終わりだ・・・・・・)






「ジョウイ。」






は目を閉じたまま一つ名前を呟くと、また目を開け、今度は優しくジョウイに微笑む。
そして未だ真面目な顔もちをしているジョウイに優しく話しかける。






「君の決意は分ったよ。そう決めたのならば、最後まで何があっても今の事を忘れないでくれ。
 それと、これだけは必ず覚えていてくれ。
 いいか、どんな道を選び取ろうとも、それはお前の意志であり決断だ。
 誰に指示されたものでもないし、ましてや運命なんてものでもない。
 だから、絶対に絶望しないで。
 自分自身の、紋章ではないジョウイ=アトレイドとしての力を信じてくれ。」
「・・・・・・・・・」






は役目を持った継承者に対しての言葉ではなく、今まで知ってきたとしてジョウイ=アトレイドに対する言葉だと分って欲しいと思う。
一個人としての言葉だと。
ジョウイはそれが分ったようで、少しだけ表情を和らげると、確かに頷いてくれた。
それに安心すると、いつもの調子に戻り、にこっりと笑う。






「よし。それじゃぁ暗い話はこの辺にしてさっさと寝てしまおう!
 何せ明日にはミューズに着かなきゃ皆心配するだろうからな!!」












暗闇の中


確かめた君の決意


意志が固く


決意も固かった


だけど


それは少し


悲壮な感じがした


俺の気のせいなら良いのだが


どうしても気になった














□■□あとががきという言い訳□■□
さて、やっとこさの正体が見えてきました。
といっても、これ以上詳しくは書かないんですが。
ご存知な方はご存知なんですが、水谷は裏設定とか、どうでもいい設定を細かく設定するために
背景があまりにも複雑化して書くのを面倒くさがるという性質を持っていると。
無論今回も背景とかが込み入りすぎて、オリジナル設定が増えすぎて書ききれないんです。
無論、話が分る程度にフォローはしていくつもりですが、何と言っても水谷ですからなぁ・・・・・・
『無理だろ』という突込みがアチラコチラから響いてきそうです。
いやいや、頑張リマスヨ。ガンバッテミマス。