危険を承知で残ったのだが



こんな事になってみるとは思わなかった



誰か



俺の質問に



きちんと応えてください・・・・・・














―――――――Make your determination―――――――









ミューズとハイランドの国境近くの森、日が沈んで辺りは暗い闇に呑まれ、動物達はひっそりと息を潜めていた。
は茂みに身を隠し、夜が来るのをじっと待った。
本当ならば駆けつけ、昼間のうちにジョウイを助け出したかったのだが、ジョウイは中央近くに捕らえられていた上、他の兵がウロウロしていたのだ。
恐らくは仲間が近くにいるか、助けに来るかすると思っているのだろう。

(実際に俺は此処にいるがな。)

現には捕らわれたジョウイを助けるために駐屯地近くに潜んでいたのだが。
無論何度か兵士が近くに来た事があったが、誰一人として気付くものはいなかった。
それは兵士が無能だからとか、やる気が無くてよく見ていないから、というわけではない。
の隠密の術が優れているためだ。
大抵の人間は気づく事は有り得ない。王国軍の中で気付けるのはルカ位ではないだろうか?

(さて、何時までもこんな所に居る訳にもいかないな。
そろそろ行きますか・・・・・・)

は見回りの兵士を一人捕まえ、茂みに引きずり込むと、当身を食らわせ装備を拝借する。
元々の格好ではいくらなんでも中央の方にまで行くことは出来ない。
見つからないように気絶した兵士を隠すと、堂々と中に入っていく。
こんな時コソコソしていたら、かえって怪しい。

(隠密行動はあくまで堂々かつ、静かにが基本だね・・・)
































は順調に中へと入っていく。
何度か兵に呼び止められたが、大人数の部隊だ。全員の顔を覚えているわけが無い。適当に誤魔化して追い払ってきた。
中央らへんに来ると、そろそろ豪華なテント―――といっても、比較的だが―――が二,三目に入ってくる。
兵達の話に耳を欹てたところ、どうやらルカのテントの近くに居るとのことらしい。
どうやら今はルカはおらず、帰ってきたら会わせるつもりのようだ。一体誰の差し金だか知らないが、余計な事をしてくれる。
生かしておいてくれたのは嬉しいが、ルカがジョウイを生かしてなど置くものか。
きっと散々砦での事を嫌味ったらしく言った後、自らの手で殺すだろう。
その場面を想像してしまい、は首を振る。

(こんな事考えてる場合じゃないだろ・・・・・・
ルカが帰ってくる前に助け出さないと。)

は気を取り直して他と比べて比較的良い造りをしているテントを見回し、その近くにある小さなテントに目をつけた。
明かにとって付けたかのようで、違和感があり、見張りまで立っている。間違いは無いだろう。




「捕虜に水を持ってきた。通してくれ。」
「まて、何故食事ではないんだ?」
「捕虜に与えてやる余分な食糧なんざ無いんだと。」




くつくつ人を馬鹿にしたような笑いでは言うと、見張りの二人も馬鹿にしたように『その通りだよなぁ・・・』と笑っている。
は内心見張りの想像通りの反応に苦笑していた。
どうしてこの手のやつらは敵を馬鹿にしてやると喜ぶんだか・・・・・・
扱いやすいのはいいが、もう少しお頭を鍛えなおしたらどうだろうか?




「じゃぁ、通してもらうぜ・・・・・・」
「あ、いや、今はマズイ。後にしとけよ。」
「・・・・・・?何故だ?」




思っても見なかった反応に少し戸惑う。
何故だろうか。ばれた訳では決して無いようだが、グズグズしている暇は無い。夜まで待って更に待てというのは我慢できない。
はっきり言ってこのまま無視していきたかったのだが、そうもいかない。

(どうしていらない時だけ真っ当に役目をこなそうとするんだよ!!このボケ!!)

内心で口汚く罵っても、目の前にいる兵には聞こえるはずも無いのだが。
兵は中の様子を気にしつつ、声を潜めて話しかけてきた。
どうやら中に誰かいるようだ。




「今中には高官がいらっしゃっている。行かないほうがいい。」




予想道理の言葉には舌打ちをしたくなる。
そんな事を言われたからといって、『はい。そうですか。』と引き下がるわけには行かない。どうにかして入ってしまいたかった。
は仕方なく、目の前の兵士を説得しようと、テントから目を離して、兵と話こむ。




「そうは言ってもだな、俺だって命令できてるんだよ。どうにかなんないのか?」
「そりゃぁ、気の毒だが、俺にはどうにも・・・・・・」
「ちょっと水を渡せば済むって。」
「う〜〜〜ん・・・・・・」




二人は少し離れた所で話していたため気付かなかった。
話題に上がっているテントから一人の青年が出てきていたことに。
青年は見張りの兵が見当たらず、不審に思いざっと辺りを見渡す。いくらなんでも持ち場からそう離れたところには行っていないだろう。
案の定すぐに見つけたが、そこには見覚えのある少年が話し込んでいた。
珍しく笑いが漏れそうになったが、堪えてそちらへと足を運ぶ。




「だから、すぐに出てくるって!」
「水くらい後でもいいだろうが。」
「何おう!?人間は水分が無くては死んじまうんだぞ!?」

「そこまで大袈裟に言わなくても良いでしょうに。」




厳かだが、凍るよな口調。例えるならばそんな言葉が似合いそうな声に文字道理その場の空気が凍った。
兵は職務怠慢に気付き、慌てて敬礼を取る。心なしか顔色も悪い。
一方も気付いていた。激しくマズイ状況に。




「あっ!クルガン様!!もう御用はお済で?」
「ああ。もう一応済んだのですが。
新しく用事が出来てしまったようですね・・・・・・」




そう言ってクルガンはを面白そうな目で見る。
そのは背中に冷たい汗を大量にかきつつ、何とか逃げ出す方法を考えていた。
(いや、寧ろこのまま捕まるか?)
この場合恐らくジョウイと一緒のところに入れられるだろう。そうすれば幾らでも脱出の方法がある。
それに砦での事といい、クルガンは何故だか知らないが、を気に入っていたようだ。
きっとこの将は自分を殺したりなどはしないと確信もあった。
は逃げる案を削除して、その場に留まりクルガンの目を挑発的に睨み返した。
しかし、そんな予想あっさりと彼は覆してくれた。




、こんな所で何をやっているんだ?」
「へ?」
「早くテントに入りなさい。」
「・・・・・・・・・・・・・」




いきなり出だしたのか、クルガンはを捕らえる気が無いようだった。
は戸惑いながらも、相手の出方を伺う。
全くもって相手の意図がつかめない。
一方クルガンはてっきりが逃げるか、何かしら逃れる方法を考え出してくるのではと考えていただけに驚き、同時に何とも言えず面白くなってきいた。
目の前の人物は全く予想道理の行動をしてくれない人物だと。
こうなってくると逆にもっと困らせたくなる。




「あ、あのう・・・」
「?」
「クルガン様とはどういった・・・・・・?」
「え?いや「彼は私の同郷だ。」




見張りの兵がおずおずと言うと、クルガンはそう答え、の首根っこを持ってまたテントの中へと入っていった。
は『もういいよ・・・』と、何だか分らないものを諦めズルズルと引き摺られていく。
何と言うか、全体的にわけが分らない。そんな心境だ。
中に入ると、そこには予想道理ジョウイが中央の柱に繋がれていた。
見た感じでは目立った外傷も無い。その事に安堵すると、周りの状況を確認する。成り行きはどうであれクルガンに捕まった事になる。
・・・・・・たぶん。
取りあえず、脱出を考えて中を把握しておくに越した事は無い。
キョロキョロと間抜けに見渡す事はしないで、目だけを動かす。
クルガンに襟を掴まれているからもあるが、あからさまに見渡すと怪しい人かおのぼりさんにしか見えないからだ。
だからすぐ脇に来た男と妙な姿勢で目が合ってしまった・・・・・・




?」
さん!?」
「ハァイ・・・」




シードは目が合うと、どこか嬉しそうに声を上げる。そしてその声に顔を上げたジョウイも驚いたように名を呼ぶ。
は苦笑しながらも返事をすると、ジョウイの傍へ行こうとするが、襟を引っ張られあっさりと断念する。
今状況では逆らうわけには行かない。
肩を竦めながらもクルガンたちに向きなおる。
別に呼ばれたわけでもないが、聞きたいことも言いたい事もあった。




「入れてくれたという事は、ジョウイを連れ帰ってもいいということじゃないんですか?」
「会わせただけです。彼を連れて行くことは許しません。(クルガン)」
「っていうか、むしろこいつを放してやってもいいが、お前は残れ。(シード)」
「ホントにゴーイング・マイ・ウェイですね。」




相変わらずの自己中っぷりにはそう毒吐くと、たっぷり溜息を吐く。
どうにかならないのだろうか?ハイランダーは。




「っていうか、何で俺に固執するんですか。何にも理由がないじゃないですか。」




はもっともな事を言うと、こめかみに指を当てる。
表現は可笑しいが、初めて会った時からこの二人には懐かれている気がする。
特にクルガンの固執には全く理由が思いつかない。
クルガンは名前を聞き、二,三言交わしただけで仲間に引き入れようとまでしたのだ。
そこまでするような出来事はなかったはずなのだが・・・?
その疑問に答えるようにクルガンが言う。




「元々興味はあったのですよ。ルカ様に生け捕りにする用に言われた時から。
ですが、人物次第では殺そうかとも思ったのです。」
「まぁ、それは頷けますね。」
「ですが、会った瞬間にこの人はこの人だと思いまして。」
「・・・・・・・・・そこが分らないんですが。」
「一目ぼれに理由を言えといわれていえますか?」
「っていうか、一目ぼれなんですか!?」
「もし貴方が女性だったら、そういうことになりますかね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




もう二の句も継げない。
の今の心境を一言だ表すとしたら、そんな言葉がぴったりだろう。
クルガンの問題発言に、周囲の―――といっても他にいるのは二人だが―――も沈黙している。
ジョウイは呆然と、しかし、シードはどこか満足そうにうなづいている。
は本当に眩暈がしてきた。

(敵陣の真っ只中で、どうしてこんな話をしているんだよ。俺は・・・・・・・・・)

その問に答えてくれるものはきっといない。。。









予想に反する事



それは往々にして起きる



だが



こんな状況



予想するほうが無理だろ。









□■□あとがきという言い訳□■□
・・・・・・・・・途中までは順調だったのに。また意味不明な文に。
どうしてこうなんでしょうか?
クルガンに好かれる理由を書こうとしたのですが、クルガンの趣味ってどんなんだよ。
やっぱり、威勢のいいシードみたいなタイプか?とか思ったりしたのですよ・・・・・・
でもなぁ・・・理由が浮かばないんだよねぇ・・・
じゃぁ、いっそのこと、理由なしにしちゃうとか!?
って言うノリでこうなりました。
・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。