決意をした少年達



だが



彼等は前線を外され



戦う場を失う



・・・・・・筈だった



用意された新たなる舞台



それは・・・・・・







――――――Make your determination3―――――――






たちは無事数日後にはミューズへと到着した。
だが、きちんとした到着というわけではなかった。




「最初っからミューズに集まるって決まってたんだから、通行書くらい渡して置いてくださいよ。」
「そうよ。可哀想だったわ。」




たちはミューズ集合というのを覚えていたが、ハイランド人が同盟都市の通行書を持っている筈も無く、着いた早々に不審者として捕まってしまっていたのだ。
ビクトールが予めミューズ市長のアナベルに話を通していたため、すぐに開放されたが、やアップルから非難が寄せられていた。
たちはどこか暗い顔をしたまま、レオナのに出してもらった食事を食べている。
とジョウイだけでなく、元気の塊のようなナナミまで暗いのが気になった。
暫く黙って様子を見ていたのだが、腐れ縁はアップルに説教されているし、レオナは気が付いているようだが、敢えて何も言わないでいるようだ。ここは俺が聞くしかないのだろうか?




「なぁ、、ジョウイ、ナナミ。」
「何?」
「何かあったのか?此処まで来るまでに。」
「・・・・・・・・・」




真剣に聞いているの様子が伝わったのか、アップルや、ビクトールたちもこちらを見る。
たちも、食べる手を止め、俯いて沈黙してしまう。




「何か落ち込んでる感じがするのは俺の気のせいか?」
「・・・・・・いいえ。」
「言いたくなきゃ言わなくてもいいが、一応聞くぞ?」
「・・・・・・はい。」




は真っ直ぐ三人を見つめながらゆっくりと問う。




「何があった?」




三人は顔を見合わせると、代表としてジョウイが口を開く。
その顔は悲しそうな、悔しそうな顔だった。




「ピリカが・・・砦を脱出した時から言葉をしゃべれなくなったんです。」




きっと、ジョウイは自分達が守ってあげられなかったからだと責めていたのだろう。
はポンポンと、頭を叩いてやりながら、ジョウイに優しく言う。




「ジョウイ。ピリカが喋れなくなったって事を自分のせいだと思ってるのか?」
「・・・・・・」
「そりゃ違うだろ。ジョウイはルカからピリカの命は守ってやった。俺が会議室に着くより早くルカに挑んだろ?
もしもジョウイがいなかったら会議室は全滅だったはずだ。違うか?」
「でも・・・・・・ピリカは・・・・・・」
「ピリカはショックで言葉を喋れなくなった。」
「・・・・・・」



















「だけど、生きてる。

生きているってのは大事な事なんだ。

生きて欲しい、生きていてくれさえいればそれでいい、そう願う人たちもいる。

俺もジョウイや皆が生きていてくれたって事がとっても嬉しい。

少なくとも俺は、そう思ってる。

皆無事に生きていてくれてとっても嬉しいよ。」


























は優しく笑うと、ジョウイのせいではないと諭す。
こんな事では自分を責める気持ちは無くならないかもしれないが、せめて薄まるようにと。
すると、ビクトールもジョウイたちを慰める。




「そうだぜ?人間生きてりゃ何とでもなるもんさ!
それに声だっていつかは戻るかもしれないしな!!」
「そうそう。それに守ってやれなかったて言うのなら、今度こそしっかり守ってやれるように励めばいい。」




フリックも優しく言うと、ジョウイもいくらか表情を和らげる。




「はい!今度こそ必ずピリカたちを守って見せます!!」
「おおし!!その意気だ!!」


























その日の夕方、ふらりと宿の外へと出た。
何となく風に当たりたかったからなのだが、取りあえず装備もつけている。
本当はフリック達と一緒に仲間集めに行っても良かったのだが、何だか気が乗らなかった。今日は此処に居た方が良いと思ったのだ。
は表に出ると、とジョウイそしてナナミやゲンゲン達がいた。
何だか様子が可笑しい。
二人は明らかに緊張していたし、ナナミは不安そうだ。




「こんな夜更けにどうしたんだ?」
さん!!」




不審に思って近づくと、二人は武器を携え、始めてみる荷物もあった。
何だか分らないが、何処かに行くらしい。
曲がりなりにもこの情勢だ。唯でさえ危ない夜道を何処かにいこうというのだろうか?




「どっか行くのか?」
「はい・・・それが・・・」




歯切れの悪い二人の話を聞くと、大体はこういう事だった。
ミューズとハイランドの国境近くの陣営に行き、兵糧の様子からどのくらいの期間そこいいるのかという事を調べさせようという事だった。
つまりは潜入捜査、下手をするとかなり危険なものだった。
は話を聞くと、忌々しげに眉を顰める。
こんな危険な仕事を二人に任せるなんて、アナベルは絶対にしない。きっとジェスかそこら辺だろう。
本当ならが代わって行ってやりたかったが、服が少年兵のもので、いくら年の割には背が低いとはいえ着る事が出来ない。
(っていうか、二人の背格好に合わせたかのようなサイズに見えるのは気のせいか?)




「それで、二人は行くのか?」
「はい。戦線から外されてしまいましたが、せめて情報だけでも・・・」
「・・・・・・分かった俺も行こう。」




はそう言うと、今の自分の格好がこれからの事に向いているという事に気が付いた。
偶然なのだろうが、何だか笑えてくる。
何だか流れに完全に飲み込まれているような感じがする。
何の流れだかは考えたくも無いが。




「じゃぁ、行こうか。こういうモンはさっさと終わらせて、さっさと帰ってくるに限る。」




そういうと、、ジョウイ、ナナミとゲンゲンを連れてはミューズの森の中に入って行った。























暗闇の森の中を進み、明け方近くに二人が着替えて別れてから暫く経った。
はナナミとゲンゲン達と一緒に二人を待っていた。
兵糧を調べるだけだから、さしたる時間はかかるまい。
だが、何ともいえない不安感がある。
こういうことは当たって欲しくないのだが、生憎との悪い予感は下手な予言よりも当たる確率は高かった。
はふと、何かの気配を感じて立ち上がる。
たちが戻ってきたのか、それとも王国兵か・・・・・・・
自然と腰の剣に手を伸ばしながら、辺りを探っていると、前方の木が少し揺れた。
そこからひょっこり顔を出したのはだった。




「よかったぁ〜〜!!無事だったのね!!」
「無事で何よりだぞ!!」




ゲンゲンとナナミが飛びつく中、は眉を顰める。
ジョウイの姿が見えない。




「あれ?、ジョウイは?」
「大変なんだ!!途中で見つかっちゃって、ジョウイはそのまま・・・・・・」
「捕まっちゃったの!?」
「多分・・・・・・」




は内心舌打ちをしつつ、たちを促す。
此処にいては危険だ。皆捕まっては元も子もない。




「仕方ありません。取りあえず今は安全なところへ逃げてください。
ゲンゲン隊長、二人をお願いします。」
「って、君はどうするのよ!!」
「俺はジョウイを迎えに行きます。」
「えぇ!?無茶だよ!!」
「ナナミ声が大きいよ。、君はすぐにミューズへ戻ってこの事をビクトールさんたちに伝えてくれ。
ただし、アナベルたちには期待をするな。」




はその言葉に驚く。
一体どういうことだろうか?アナベルに期待するなとは・・・?
はその事を聞きたかったが、遠くから兵の声が聞こえてきた。此処ももう危ない。移動しなくては。




「・・・・・・っ!
君、無理はしないでね!!」
「大丈夫。分ってるよ!」




そう言うと、たちはゲンゲンに連れられてミューズの方へと走っていく。
はその場に残ると、気息を整え、気配を消して移動を始める。
隠密行動はお手の物だ。
さぁ、此れからどうやってジョウイを取り返そうか・・・・・・?











新たなる戦いの場

そこで初めて彼等は別れた

その別れは一時のもの

誰もがそう思っていた

だが

確実に 明確に 正確に

紋章の悲劇が準備されていく・・・・・・










□■□あとがきという言い訳□■□
・・・・・・なんつぅか、繋がりもまとまりも無いっすね。
前回からいきなりたちが登場するシーンに飛んでますが、気にしないでください。
あの後の行動はそのうち短編にでもしようかと。
お次はまたルカ様たちハイランドの面々がでしゃばるかも。
もしくはジョウイと二人っきりでお話♪です。