並び歩いていた双子星


だが、二つは別れた


一つは道を決め


もう一つは・・・・・・






――――――― Make yuor determination! ―――――――










ジョイウと別れた後、は市庁舎を壁を伝って裏へと回った。
アナベルが殺された今、市庁舎に残っているとは考えずらい。
ちょうど裏口から出てくる二人を見つけるとそのままミューズを脱出した。
その後、ピリカを連れて既に脱出していたレオナから荷物と食料を受け取る。




「まさか窓から出て行くとは思わなかったからね。下で待ってたのに。」
「すみません・・・・・」




呆れたように言うレオナに苦笑しながらは謝ると、先にサウスウィンドウに行くよう促す。
はしきりに一緒に行くように言ったが、レオナは『熊に食料を渡していないからね。』と言ってその場に残った。
ピリカを連れた一向は、そのまま街道沿いに進むが、とナナミの表情は重く、ピリカはジョウイがいない不安からか、終始泣いていた。
仕方なく、早めに適当な場所を探して休む事にした。




、ピリカちゃん泣きつかれて寝たよ。・・・・・・・やっぱりジョウイがいないから不安みたいだね。」
「うん、そうだね・・・・・・」




は2人とは少しはなれたところの木に背を預け、目を閉じていた。
傍から見れば寝ているようにしか見えないだろう。
とナナミに気を使い、わざと寝たふりをしていた。




「ねぇ、・・・・・・私、あの時のことが気になってしょうがないんだ。
アナベルさんはやっぱりジョウイが・・・・・・」
「分からない・・・でも、僕はどんな事になってもジョウイを信じるよ。」
「そうだよね。ジョウイがそんなことするわけないよね・・・・・・」




ぱちっと焚き火の火が爆ぜる。
は暗々とした気持ちで聞いていた。

(ナナミはジョウイを信じたいんだな・・・・・・)

ナナミの声はピリカ以上に不安になっているような響きだった。




「ねぇ、・・・・・・・私思うんだけどさ、こんな戦いばかりのところなんていないで、どこか遠くに逃げちゃわない?」
「えっ、逃げるって・・・・・・・」
「それでどこか遠くの山奥とかにと私とピリカちゃんの三人で住んでさ、狩とかして暮らすんだよ。畑とかも作ったりしてさ、三人なら何とかなるよ、ね?」
「そう、だね・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・でも、駄目だよね。ジョウイをどこかにおいて逃げるなんて、出来るわけないよね・・・・・・
ゴメンね!変なこと言っちゃった。色々あって疲れてるのかな?」
「・・・・・・・・・・・・」
「私、先に寝るね?おやすみ」
「あ、うん。おやすみ・・・・・」




強引に話を無かった事にすると、ナナミは無理やり寝たようだ。
だが、本当に疲れてもいたのか、直ぐに寝息が二つに増えた。
は薄っすらと閉じていた目を明けると、焚き火のところにいるが目に入った。
ナナミとピリカは近くの木に2人で寄りかかっている。




「逃げたいか?。」
「うわっ!起きてたの?君」




が驚いて振返るのを、苦笑で返して焚き火に近づく。
そのまま焚き火をはさんでの前に座ると、穏やかに微笑む。




「寝付けないって訳じゃないんだけど、何となくとナナミが気になってね。」
「じゃぁ、聞いてたんだ・・・・・・・・・」
「ゴメン・・・・」




バツが悪そうに俯くは言葉を選びながら尋ねる。




はナナミたちを連れて戦いのないところに行きたいと思うか?」
「・・・・・・・・・・思わないといったら嘘になる。
僕には守りたいものがある。それはナナミやピリカとか大事な人たちだから、戦いのない世界にさえ行けば皆が危険に晒される事もない。
けど・・・・・・・」
「けど?」
「だけど、守りたいものがあるからこそ戦いにも身を投じるんだ。
 現実から逃げたくはないって気持ちもある。
 だから、正直どうしたらいいか分からない・・・・・・・・・」




俯いたまま力なくそう言うは嬉しそうに見つめる。
は今自分の思いとナナミの思い、それらをどちらも捨てきれないでいる。
その優しさがには嬉しく思えた。
同盟都市の不仲を見せ付けられてまで、そのままの優しさを持っているを。



「ミューズを出る前にジョウイに会ったよ。」
「え!?」




突然ジョウイの話をし始めたが弾かれたように顔を上げる。
はしっかりとの目を見ると、ジョウイの思いを伝える。




「丁度市庁舎から出てきたところでね、手にはアナベルの血の染まった短剣が握られていた。」
「・・・・・・・・・・・」
「そして、彼はハイランドに行くと言っていた。」
「何で・・・・・・・・・」




呆然とした様子での声を聞く
信じられない、信じたくないと全身で叫んでいるようだ。




「守りたいものがあるからだと言っていたよ。」
「守りたいもの・・・・・・?」
「そう。ジョウイは大事なもの守りたがっていた。
 でも、同盟都市の不仲を見て、このままでは駄目だと思った。」
「・・・・・・・・・・・」
「そして、ジョウイは大事なものを守る為には自分が力をつければいいと思った。」




そこまで言うと、は悲しそうに目を伏せる。
視界に入ってくるのは踊るように揺らめく炎だけ。




「暫く前にね、ジョウイに『戦いを終わらせるには何が必要か』っていう話をしてね。」
「ジョウイは何て・・・・・・?」
「ジョウイは“力”が必要だといっていたよ。」
「“力”・・・・・・・・」
「そう、だからジョウイは戦いを終わらせる力を求めいたんだ。
でも、同盟都市は仲が悪くて戦いを終わらせられる力がないと思ったんだね。」
「・・・・・・・・・」
「そして、敵対している同盟都市にその力がないなら、自分がハイランドの中から戦いを終わりにしようと決断をしたんだよ。」




また目を上げると、はまだ呆然としていた。




「何で・・・・・・じゃぁ、何で一人で・・・・・・・」
「それは分かってるんじゃないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・僕たちを危険に晒したくないから。」
「そうだね。」
「じゃぁ、ジョウイは、ジョウイのままなんだよね・・・・・・?」
「違うと思うのか?」
「ううん。思わない。

 たとえ離れていても僕たちは親友だ。」




そこで初めてしっかりとした様子で断言する。
ジョウイはジョウイのまま、心は変わっていないのだとは安心し、親友の心を信じたようだ。
はその様子を見て、今度は逆に尋ねる。




「ところで、は何でその右手の紋章を手に入れたんだ?」




は一瞬聞き逃したようだが、直ぐに驚いた表情をする。




「何で知ってるの?」
「それは色々事情があってね・・・・・・・・・」




無意識に右手の手袋を押さえているを見ると自然と笑みがこぼれてくる。

(同じようにジョウイに尋ねた時は、即座に睨まれたっけ・・・・・・)




「教えてくれないか?何故はその紋章を手に入れたいと思ったんだ?」
「・・・・・・・・ただ、大事な人たちを守りたい、そう思ったんだよ。」
「そのためには紋章の力が必要だと?」
「・・・・・・・・・・紋章じゃなくても、もう少しみんなを守れるようになれれば良いと思ったんだ。
もう、大事な人が気付く姿を見たくはなかったんだ・・・・・・」
「その願いは今も変わらない?」
「変わらないよ。」




はっきりと目を見て力強く頷いた




「そうか、じゃぁ今も大事な人を守りたいと思ってるんだな?」
「うん。でも、どうしたら良いかわからなくて・・・・・・」
「直ぐに結論を出そうとしなくても良いと思うよ。
 選択肢はいくらでもある。だからどれがいいのかわからなくて、迷って、悩むんで、苦しむのが普通なんだよ。
 だから、良く考えて自分が良いと思った道を選び出せば良い。
 それがたとえ、俺たちと別れてしまう道であったとしても、が選んだのなら応援したい。」




そう言うと、ふわりとは微笑む。
それを聞いては嬉しそうにやっと・・・・やっと笑った。




「そっか・・・・」
「ああ。だから、これだけは約束してくれ。」
「何?」
「道を決めたら、必ず俺には教えてくれ。」
「――――――うん。」




しっかりと、しかし明るく頷いたの表情が嬉しかった。











道が分かれた双子星


一つは選んだ道を進み


もう一つは悩んでいた


でも


どの道をとったとしても


自分を信じ、進んで欲しい。








□■□あとがきという言い訳□■□
あ〜やっとMYD終わりました。
今回は色々と困ったことが。
ピリカ忘れてたし、荷物忘れてたし。(オイ)
まだ道決めてねぇし。
しかも、説明文っぽい・・・・・・
内容としても尻切れトンボな気がしますが、
此処でが覚悟を決めるのは無理だと思うので次章に持越しです。
アイタタタ・・・・・・