結末なんて分からない
何が待っているかなんてわからない
だからこそ
人は道を選ぶ時に
苦しむのだ
―――――――Make your determination.―――――――
次の日、ビクトールや達とも別行動をとって戻ってくると、レオナの酒場には達の姿は無く、フリックがリキマルなど仲間と夕食をとっていた。
「あれ、フリックさんとビクトールさんは?」
「何で俺の顔てすぐにビクトールの事を聞くんだよ。」
むっとしたように口を尖らせるフリックに、は苦笑すると、『公認の飼育者でしょうに。』というと、リキマルが『調教師の方が合ってんじゃねぇのか?』と大いに笑う。
「何処の誰が飼育されてるって?」
驚いて振り向くと、ニヤニヤと笑いながらヅカヅかと歩いてくるビクトール。
思わず更に熊に似てきたとはこっそりと心で呟くと、それを誤魔化すように言い返す。
「何処にいらしたんです?」
「ちょっと市庁舎にな・・・・・・・」
「ああ、なるほど。」
昨日のやり取りを思い出したは納得する。
心なしかビクトールの機嫌もいいようだ。
「そういえば、たちを知りません?」
「アイツらか?それなら今・・・・・・」
ビクトールが正に今説明しようとした時、急に表が慌しくなる。
確かめようとフリックが腰を上げると、慌しく扉を開けて入ってくる者がいた。
「も、門が・・・・・・!!門を破られた!!!!!」
「な!?」
突然のことに絶句したフリック。
は素早くビクトールに目線を送ると、悪鬼と見紛う如き形相で拳を握り締めている。
「ビクトールさん。」
「・・・・・・ああ、分かってる。
いいか、お前等直ぐに用意できたやつから奴等を食いとめるのを手伝ってくれ!
落ち合い場所は、サウスウィンドウだ!!!!」
そう叫ぶと、レオナにもサウスウィンドウに向かうように告げると、を振返る。
「、今達は市庁舎に向かっている。
あいらをサウスウィンドウまで連れて来てくれ。」
「分かりました。」
そう言うと、荷物をとりに行き、そのまま部屋に戻り荷物をひったくり薄紅を窓から放って直ぐに自分も飛び降りる。一度表に出より裏道のほうが多少近い。
いつもは静かなはずの夜の街も、今は騒然とした空気に街事態が不安を抱いてるようだ。
「ついでに結構近くまで食い込んでやがるな・・・・・・・・・」
思ったより近くから聞こええる喧騒や怒号に、眉を顰めつつ、裏道をひた走るが、ふと思って曲がる道を一つ変え、薄紅をある場所へ飛ばした。
市庁舎の近くの大通りに面した一軒の民家を見つけると、手荒く戸を叩く。
「キリス!!!」
「君!?」
二階の窓から顔を出した少女の後ろからは親の叫ぶ声が聞こえる。
キリスは親に『知ってる人よ!』と叫び返してから、慌てて窓を閉めようとするが、がそれを止める。
「時間が無いからそこで聞いてくれ!!
今、門が破られてハイランドが攻めてきた!!此処はもう危ないから、サウスウィンドウに逃げるんだ!!」
「え、何で!!??」
「もう街の中に侵入しているんだ!このままだと確実に危ない!
今は砦の傭兵が足止めをしているが、時間の問題だと思う!
だから、今のうちに逃げてくれ!!分かったか!!??」
「わ、分かったわ!!!」
強ばった表情をしているが、しっかり頷いたキリスをみると、はまた市庁舎に駆け出す。
「君!!」
「何!?」
慌てて立ち止まると、キリスを見る。
彼女は先ほどまでの慌てた様子も無く、真っ直ぐの目を射抜くように見ると、大声で叫ぶ。
「貴方も絶対にサウスウィンドウに来るのよ!!??」
「もちろん!」
「ならよし!!」
キリスは返事に満足げに頷くと、今度こそ窓から首を引っ込め、は市庁舎へと走っていく。
また会えることを疑いもせずに。
は全力で走りながら、市庁舎に向かっていく。
先程よりも距離が離れているはずなのに、喧騒が離れて聞こえない。
急襲と夜襲ということも重なって思うように防衛できていないようだ。
舌打ちをしつつ、走る速度を更に上げる。
すると、市庁舎の方から見覚えがある姿が見えてきた。
(ジョウイ・・・・・・?)
夜目にもそれとなくなる色素の薄い髪と肌、そして、背格好がジョウイのようだ。
だが、この状況でフラフラと歩いている様子をみると、疑問に思う。
(何してるんだ・・・・・・?)
いつもの優しい様子も、人が傷つく時に見せるあの激しい感情も見受けられない。
それに、いつも一緒のとナナミの姿も見えない。
もしかしたら、何かあったのではないかと思いながら走っていると、ジョウイの目の前に着く。
「ジョウイ・・・・・・?」
「あ、君・・・・・」
「何かあった・・・・・・」
『何かあったのか?』と聞こうとすると、ソレが視界の端に入る。
は呆然としたまま、何があったのか了解した。
「・・・・・・・・・ジョウイ。」
「僕、ハイランドに・・・・」
「ジョウイ。」
「・・・・・・・・・・・」
ジョウイが目線を外すと、名前を呼び、目を合わせる。
「ジョウイ・・・・・・」
「いつだったか、『戦いを終わらせる為には何が必要なのか』って話をしたよね。」
「ああ。」
「君は『力では全ては守れない』と言ってたよね?
そして、『協力して補えばいい』とも。」
「言ったよ。だけど・・・・・・・・・」
「確かに僕もそう思った。一人じゃなくてやナナミと力を合わせればッて。
でも、いくら僕達が力をあわせても、どうにもならない!
同盟都市同士は自分の市の事ばかり考えていてルカの恐ろしさが分かってない!
協力なんて不可能じゃないか!!!
そんな状況でどうやってルカと戦おうっていうんだ!!??」
生気の宿っていなかった瞳を今は怒りに目なぎらせ、の肩をきつく掴んでジョウイは吐き出すように呻く。
「そんな力の無い所にいたって、誰も、何も救えない、守れないじゃないか!!
だから、僕が・・・・・・・・・ッ!」
「絶対的な力で守ろうと思ったんだな?」
は、ジョウイの中に溜まっていた想いをやっと分かったような気がした。
「大きな力で多くのものを守ろうと思ったんだな?」
「そうだよ。」
「覚悟は出来ているのか?」
「出来てる。」
悲しそうにはっきりと答えたジョウイに、は溜息をつく。
眉間に皺を寄せながらも、ゆっくりと語る。
「わかった。俺は止めない。
ジョウイが守る覚悟で自分の道を選び取ったのなら、俺にはその道をどうこう言う事が出来ない。
その道の先に君が望んだモノに繋がっているとはいえないけど、
同時に、望んだモノに繋がってないとも言い切れないんだから。」
「・・・・・・・・・・」
黙って頷くジョウイの肩をは掴むと、真っ直ぐと目を見たまましっかりと続ける。
「だが、これだけは覚えておいてくれ。
やナナミ、ピリカや俺も、たとえジョウイと道が異なろうとも、皆ジョウイを嫌ったりなどしない。
だが、逆にそれで苦しむ事になるってことだ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
そう言うと、肩から手をどけ、表情を幾分和らげる。
「それと、助言だ。
大きな力を望むな。力は時に牙を剥く。」
そう言うと、すれ違いざまに、肩を叩きながら
「道は一つじゃないんだ。」
そういうと、喧騒が迫った通りを背にまた走り出す。
決して振返らずに。
何があるか分からない
だからこそ
苦しんで道を選んだら
後は力いっぱい
望んだ方向へ突き進むだけ
□■□あとがきという言い訳□■□
おまたせしました。MYDは次にて終了です。
ジョウイがとうとうハイランド側に行ってしまいました。
ジョウイを止めないのかよ!!ってお思いの方もいらっしゃるかもしれないのですが、
私は人が悩んで決意した道に反対なんて出来ないんです。
理由はの台詞どおり。
選んだ道が望むものに繋がっているなんて保証は無いが、
同時に繋がっていないとも言えないからです。
なので、ジョウイには頑張ってほしいと・・・・・・
って、それが辛いんだけどね★
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