始めは一人

その次には二人増え

今度はまた一人増える

人数が多くて大変だと思ったが

もしかしたら

人数が多いことが

幸せに繋がる事も

あるのかもしれない











―――――――Make your determination―――――――












に助けられて少女はキリスと名乗った。
どうやら、家に帰る途中で近道をしようと思って、脇道に入ってしまったらしい。
取りあえず、小道ではなんだからと元の道へもどる。




「あのっ!!ぜひ何かお礼をさせてください!!!」
「え?いや、いいですよ。」
「でも、助けていただいたのに、何もしないのは・・・・・・・・・」




律儀な子なのか、必死で申し出る。
は、別に気にしなくてもいいのに・・・・・・と困るが、やはり無敵スマイルを装備したカミューが助け舟を出してくれた。




「お気持ちは感謝しますが、我々は当然のことをしたまで。
 どうかお気になさらず・・・・・・」
「けど・・・・・・・・・」




は、感心してしまった。
カミューは聞いているこちらが恥ずかしくなるような台詞で、女性をあしらうのに慣れている気がする。
連れのマイクロトフは、慣れていないらしく、困っている様子だが。
でも、それでもキリスはまだ迷っている。
どうやら彼らのことを気に入ってしまったようだ。
必死に言ってくる様子は、純粋で可愛らしい。
断って悲しませるのも可哀想な気もするが・・・・・・・・・




「そうですねぇ・・・・・・レディがここまで仰って頂いているのに、断るのは良くありませんね。
どうでしょう?君。」
「へ?」
「彼女にも、ここらへんの地理を案内してもらっては?」




いきなりの発言に、はまた慌てる。
今でさえカミューたちに迷惑をかけているのだ。それなのに、更には女の子にまで道案内を頼むのは気が引ける。
だが、ちらりとキリスの顔を見ると

(うわ・・・・・・凄く嬉しそう・・・・・・・・・)

お礼が出来るからか、カミューたちと一緒にいられるからか、彼女は頬を高潮させて喜んでいる。
流石にこんな子の申し出を断る事は出来ない。




「分りました。それじゃぁ、ミューズの案内頼んでもいいかな?」
「はい!!!任せてください!!!」




細かく、どこら辺が良いかお願いしながら、は内心溜息を吐く。

(どんどん大人数になっていくなぁ・・・・・・・・・)






























どうやら彼女は、小さい頃から外で遊びまわっているらしく、細かい道にとても詳しかった。
道すがらいろいろな話もした。
彼女の子供の頃の話やオススメの店、もちろんの話も。
彼は旅を始めてから有った事や、ここに来た理由も話した。
その中で、ミューズに来たことがなく、これから起こるかもしれない有事に備えて地理を把握したいと告げると、彼女は少し驚いたようだった。
腰に差してある剣を見て、




「貴方も戦うの?」




と聞いてきた。
あまり歳が変わらない彼が戦争で先陣を切って戦う様子が想像できないようだった。
は苦笑すると、




「そうだね。戦うよ。」
「カミューさんやマイクロトフさんも?」
「我々は、今の雇い主が参戦すれば。」
「・・・・・・・・・そっか。」




カミューは穏やかに笑って、マイクロトフも実直な顔のまま頷く。
その様子は戦う事に何の疑いも無い。
キリスは、俯いてしまう。




「でも、戦うって事は人を・・・・・」
「殺す事、だね。」




は平然と言い放つ。
キリスは言いにくかった言葉をあっさりと言われて、びくっと肩を振るわせる。




「その事実は覆せない。
 戦えば皆傷つく。それが分っていながら俺たちはやっぱり戦うんだ。」
「何で・・・・・・?」
「守りたいからさ。
 国を守りたい、家族を守りたい、大事な人を守りたい、そう思うから人は戦う。」
君も?」
「そうだね。」




キリスは、が悲しそうな顔で笑ってるのが見えた。
その表情は、見てはいけないもののように感じたが・・・・・・それでも目が放せないほどに美しかった。
















「俺が守りたいものは国とか街とか、この地に住む人たちの平和とかじゃない。

 もっともっと小さなもの。

 俺の大事な人たちが笑っていてくれたらそれでいい。

 辛いことがあっても、いつかは笑えるようになってくれればそれでいいんだ。

 そうすれば前を向いて歩ける。生きていけると思う。」














はそう言うと、キリスの方を向いて、ニッコリと笑う。
その暖かい笑みに、キリスは頬を染めながら、つられたように笑顔を浮かべる。

明るさを取り戻した彼女は、また街の案内を続ける。
過ぎていく時間は早く、町中案内してもらおうと、もう既に夕方になっていた。
たち三人は、彼女を家まで送っていく。
どうやら本当にあの小道から近かったらしく、一つ通りをはさんだ向かい側だった。




「有難うごいました。」
「いやいや。俺の方こそ有難う。
 思ったよりも早く回る事が出来たよ。」
「これからはあの道は使わない方がいいですよ。」
「はい。有難うございます。マイクロトフさん。」
「それではお気をつけて。」
「皆さんも。」




そう言うと、キリスはドアを開け入ろうとするが、何か思いついたように振り返る。




君。」
「ん?」




なんだろう?と不思議な顔をするに、キリスは真剣な顔で言う。




「――――――死なないでね。」




は面食らった顔をするが、すぐにふわりと笑う。




「――――-もちろん。」




それは少し照れた、歳相応の嬉しそうな笑顔だった。
キリスはそれを見ると嬉しそうに笑い、『またね!』と元気よく言うと、今度こそ部屋の中に入っていった。



























(驚いたな・・・・・・)

カミューはが戦う決意を話していた時から驚いていた。
まだまだ子供だと思っていたのに、固い決意とそのための覚悟を感じていた。
それは同じ年頃の自分とはとても違っていた。
思い返せば、その頃の自分は何をしていただろうか?




「カミューさん?」
「あ・・・・・・」




知らぬ間に考え込んでいたらしく、が不思議そうな顔で見上げている。
マイクロトフもカミューを見ているが、彼は何を考えていたか分かっているようだ。
彼の顔にも真剣な表情が見て取れる。
カミューはニッコリと笑うと、に話しかける。




「どうです?君。これから少しお話をしませんか?」
「え?これからですか?」
「いけません?」
「いや、いいですけど・・・・・・?」




不思議そうなを促して、近くのカフェに入る。
このまま彼と分かれてしまうのは惜しい、もっと彼のことを聞いてみたいと思ったのだ。
入ったカフェは丁度夕食時の少し前で、随分と空いていた。
適当に壁際の席に座ると、飲み物と軽いお菓子を頼む。




殿はいつ頃から剣を?」
「俺ですか?そうですね・・・・・・・・・小さい頃から鍛えられていました。」
「そうなのですか?一度手合わせ願いたいですね。」




マイクロトフがと話をしているのを、カミューは黙って見ている。

(こういう時はお前が羨ましいよマイク・・・・・・・・・・)

カミューは誘ったはいいが、何を聞いたら良いのか分らなくなっていた。
そんなことを知るわけも無いマイクロトフは、剣の話や旅の詳しい話を聞いている。
そういえば、マイクロトフが積極的に話をする様子を見るの珍しい。
色気があるとは到底いえない話題だが、楽しそうに話すとマイクロトフの表情を見ていると、こちらまで楽しくなってくる。
すると、ずっと傍観というか、の表情に見入っていたカミューはと目が合ってしまった。




「どうかしましたか?カミューさん?」
「いいえ。なんでもないですよ?」




ニッコリと笑って、言うとは不思議そうな顔をしていたが、マイクロトフがまた話しかける。
――――――――今度は真剣な表情で。




殿はやはり今回の戦に参加されるのですか?」
「―――――マイクロトフさん。」
「はい・・・・・・・」
「“殿”はやめてください・・・・・・」
「・・・・・・はい。」




は溜息を吐くと、困ったように微笑む。




「やっぱり、俺みたいな子供が戦場に行くのには抵抗が有りますか?」
「あ・・・・・いえ。そういうわけでは・・・・・・・・・」




口下手な相棒が困ってると、仕方ないとカミューが助け舟を出す。




「別に、貴方が戦場に行くというのには抵抗があるわけではないんですよ。
 ただ、その理由を聞いてみたと思ったんだろう?」
「ああ・・・・・」




は頷いたマイクロトフではなく、真っ直ぐカミューを見据える。
今度はカミューが驚いた。
彼の瞳の深さに。
その瞳が自分を見ていることに。




「俺の理由は、あなた方の理由にはなりませんよ?」
「・・・・・・・・・もちろんです。」




はそれを聞くと、優しく微笑んで話し出した。













「俺が戦うのは、さっき言ったとおり守るためです。

 この手で守れるだけの大事なものを守りたい。

 ぶっちゃけ国なんて知った事じゃ有りません。

 だけど、大事な人が悲しむ事はしたくないから、

 だから守れるものは守りたい。

 誰も悲しまないように。

 だから俺は戦いに身を投じます。」













そういう彼の表情をみて、カミューは無意識に聞いてしまった。










「何故、そんな悲しそうな顔をして言うのです?」









彼の顔は、確かに微笑んではいたが、やはり悲しそうだった。
は目を見開くが、すぐにまた同じ表情に戻り



















「それは多分、全てを守れるわけではないと知っているからでしょう。」





















そう、答えた。

























「今日は有難うございました。」
「いえ。お礼を言いたいのはこちらの方ですよ。
 貴方と知り合えて本当に良かった。」




その後、取り留めのないことを話したが、日も暮れてしまったため、別れることになった。
店を出るときに、伝表をカミューが持っていってしまったため、がわたわたと慌てたが、マイクロトフにまで説得されて本当にすまなそうに奢って貰った。

(ああ・・・・・迷惑かけたばかりか、奢って貰う事になるなんて・・・・・・・・・)

今度からは、ぼけっと道の真ん中で立ち止まるのは絶対にやめようと固く心に誓った。
心の中で、硬く拳を握っていると、マイクロトフとカミューがなにやら話し合っている。、
どうやら、良い話だったらしく、マイクロトフも表情が晴れ晴れしている。




「何を話し合っていたんです?」
君に少し言葉の贈りモノと思いまして。」
「はぁ・・・・・・?」




要領を得ない説明に何の事だかさっぱり分らない彼に、カミューはウィンクをするとマイクロトフが切り出す。




殿・・・・・・」
「殿?」
「え、あ・・・・・いや、、く・・・君・・・・・・」
「はい。なんでしょう?」




おなかを抱えて笑いたい衝動を堪えながらは返事をする。
カミューは溜息を吐いているが、マイクロトフは必死だ。




「貴方は先ほど『全てを守れるわけではない』と仰いましたが、確かにその通りでしょう。」
「・・・・・・・・・」




真面目な話題に、流石に笑いを引っ込め、マイクロトフを見る。




「でも、砦の方々や仲間がいらっしゃると思います。」
「それに私たちもいます。」




後を引き継ぐようにカミューが話し出す。










「一人では無理かもしれません。

 ですが、仲間がいれば守れるものは増えます。

 我々は主が参戦する事を決めなければ戦う事が出来ませんが、

 もし、戦う事が出来れば、貴方の力になりましょう。」

 ですから、一人で戦わないでください。」















は呆然とそれを聞いていた。
言葉が染み渡るように広がっていくと、笑顔になる。

嬉しかった。

ただ無性に。

だから、万遍の笑みを浮かべると、心の底から







「――――――有難うございます。」







お礼を言った。











戦いの前の休日

二人の青年に会った

彼らは

“共に守れば、守れるものもがある”

そう言ってくれた

それはまるで

“世界は救えるのだ”

そう言っているように聞こえて

とても

とても

嬉しかった
















□■□後書きという言い訳□■□
恥ずかしっ!!!!何言ってるんだよカミューさん!!!
も何乙女っぽいこと言ってるの!?
か〜〜〜!!!!恥ずかしい!!!!
うわ〜〜読み返せねぇ・・・・・・
っていうか、ありえねぇ・・・・・・・・・
何なんだ?あの最後のカミューさんの歯の浮くような台詞は・・・・・・
あれか!?BGMがいけないんだな!!??
やっぱり、ノミトリノウタ流せば良かったよ・・・・・・・・・・・
って、今タイトル確認したら『You're Not Alone』でした。
そのままかよ!!!!!
(ハイテンションでお送りしました。)

で、元の戻って、後書きです。
オリキャラのキリス。彼女は殆ど意味無かったです。
出した意味がない気がしますが、君の考えを聞くためには、
戦闘の素人が欲しかったので、まぁ良いか。
あと、カミューさんばかり目立ってしまいましたが、マイクロトフは喋らせずらいのです。
好きなのですが、愛が足りないらしい。
後書きが長くなってしまいましたが、前半は叫ばずにはいられなかったので。
多分そのうち消します。
次回はやっとこさ、丘上会議!!!!