晴れ渡った休日



どんな事をして過ごそう



本を読むのもいい



木下で昼寝するのもいい



でも



やらなくてはいけない事がまだある。












――――――Make your determination―――――――











剣を購入したニ,三日後、は無目的にフラフラと街を歩いていた。
フリックとビクトール、そしてたちも仲間集めに向かっている。
も行こうかとも思ったのだが、よく考えてみたら、書簡でやり取りする事があっても、実際に街を歩いたことが無かったことに気付く。
もちろんある程度の道はたちが来る前に下見しておいたが、詳しい小道などは全く分らない。
そこで、は今日一日を使ってミューズ市内をくまなく歩く事にしていた。





「やっぱりミューズは少し広いか・・・・・・・・・」





午前中で門付近の道は大体把握したが、どうにも広すぎる。
出来れば案内役をフリックかビクトールにしてもらうべきだったかとも考えたが、皆戦力増強で忙しい。

(そういえば、昨日の夜に『明後日は丘上会議がある』って、言ってたか・・・・・・)

今後の方針を決める会議だが、恐らくは近くに迫っている国王軍のへの対応で、出動要請がまず間違いなく降りる。
そうなると、戦力は何としてでも欲しいところだ。
ビクトール達を連れまわすわけにも行かない。





「っていうか、同盟都市はまとまるのかね?」





はそれを考えると、溜め息を漏らす。
学問が盛んで有名なグレンヒルのテレーズ市長や、理解のあるサウスウィンドウの市長グランマイヤー市長はともかく、その他の市長達はどうも現状をよく分っていない気がしてならない。
一番大きく、且つハイランドに近いミューズが先に狙われるのは分っているからか、それとも、まだ条約を結びなおす事などが出来ると思っているのか、積極的ではない。
それらをまとめる苦労を考えると、アナベル市長は大変だなぁ・・・・・・と同情したくもなる。
と、つらつらと色々な事を考えながら歩いていたら、前から来た人にぶつかってしまった。





「あっすみません。」
「・・・・・・・・・・・・いや。」





反射的に顔を見上げて謝ると、ぶつかってしまった相手は、一言残すとそのまま雑踏の中に消えていってしまった。
は訝しげにその後姿を見る。

(・・・・・・今の人、懐に何か隠してたな。)

あの感触から行くと――――――恐らくは銃。
大きさもかなりあるため間違えたりもしない。
確か現在銃を扱っているのは、ハルモニアの組織のみのはず。
は眉を顰めたまま、フードの男が去っていった方向を向いたまま考え込む。

(確か、ハルモニアとハイランドは関係があったな。
 もしかして、ハイランドからのスパイ・・・・・・?)

そう考えてみるが、辻褄が合わない。
大体、現在軍事力で圧倒的に勝り、同盟都市の連携が取れていない上、戦争準備さえも出来ていない状態の今、ハイランドがハルモニアに援軍を求める理由が無いし、ハルモニアも戦力を貸し出したりなぞしないだろう。
では何故・・・・・・・?





ドカ。

「うわっ!?」
「あっ!!」

ドサドサドサ・・・





本日二回目。また人に当たってしまった。
しかも今度は盛大に。
は当たった拍子に落ちてしまったらしい相手の荷物を拾いつつ、必死に謝る。





「すみません!!!道の真ん中で立ち止まっちゃってて・・・・・・!!!」
「いえいえ。私達のほうも、荷物で前が見えなくて。」





達?とは気になって顔を少し上げると、そこには二人の青年がいた。
今ぶつかったのは、茶色い髪の青年でとても柔和な顔立ちをしている。
もう一人は、同じように紙袋一杯の袋を抱えている黒髪の青年。こちらは実直そうな顔立ちをしているのだが、今は荷物を拾うのを手伝いたいのだろうが、荷物が邪魔で出来ず、かなり困惑しているようだ。





「ありがとうございました。」
「あ、いえ・・・・・
 でも、どうしてたんです?この買い物量は・・・・・・・・・」





は拾い終えると、失礼かと思いつつも、尋ねた。
買っている量もさることながら、その内容がお薬や、札、その他医療品と、お守りなどが目立った。
余りがさばることがない物をこれだけの量買うのが少し驚いた。
青年は苦笑すると、嫌な顔せず答えてくれた。





「仕事柄こういったものが必要なんですよ・・・・・・」
「ああ、なるほど。」





よく見ると、二人とも腰に剣を下げている。
お飾りや護身用でもないれっきとした戦うための剣。
は二人とも傭兵か何かだろうと勝手に判断を下すと、買い物の中身は頷けた。
量は・・・・・・これから値段が上がるだろうから買い溜めでもしておいたのだろう。
今度は青年からに声をかけてきた。





「貴方も腰に剣を差していますが・・・・・・?」
「あ、俺は砦の人間なんで。」
「貴方が、ですか?」
「ええ。それで、ミューズの地理を頭に入れるために歩き回っているんです。」





青年は驚いたように目を見開く。隣の実直そうな青年も驚いている。
そりゃぁ、そうかとも思う。
の見た目は16,7。はっきり言って、戦争に参加するには少し幼いともいえる。





「まぁ、暫くは事務仕事しかさせてくれませんでしたけど。」
「そうですか。でも、此処の地理ならご存知なのでは?」
「俺は同盟都市の出身ではないので。
 砦に入ったのも、一ヶ月ほど前ですから。」
「なるほど。それで・・・・・・」





そう頷くと、青年は連れと顔を見合わせる。





「あ、すみません。引き止めてしまって。」
「いえ。それよりどうでしょう?私たちがここを案内して差し上げましょうか?」
「え?」





驚いていると、『いいだろう?マイク。』と連れに話しかけ、マイクと呼ばれた連れも『良い考えだ』と頷いている。
は、慌てて首を振る。





「いやっ、そんなお気遣い無く・・・・・・」
「ぶつかってしまったお詫びですよ。」
「でも、それは俺が立ち止まっていたからでもあるし・・・・・・
 それに、荷物も多くて大変でしょう?寧ろ運ぶの手伝いますよ。」
「いえ、ご心配には及びません。」





今までずっと黙っていた青年が言うと、つぅっと横を指差す。





「我々は此処の宿屋に泊まっていますので。」





































「ちょっと、マイクいいかい?」
「何だ?カミュー?」





宿屋に入って、荷物を置いて肩を回していたマイクロトフは、不思議そうに振り返る。
カミューはニッコリ笑うと、マイクロトフに提案をする。





「私たちのことなんだけど、彼には騎士だということを伏せておかないかい?」
「何故だ?」





『嘘は良くないことだ。』と顔に書いてあるマイクロトフに、カミューは小さく笑う。





「今日は折角の休みだよ?だから騎士服も着ないで町に出かけていた。
 それに、彼に騎士だと名乗ったら、どんな態度をとられると思う?」
「・・・・・・?」
「普通、騎士だと名乗ったら、親しくは話しかけづらいだろう?
 それともマイクは、彼に距離を置いて話されたいのかい?」
「それは嫌だな・・・・・・」





納得するマイクロトフを見て、カミューは内心苦笑する。

(本当は、お前と彼の反応が面白そうだからなんだけどね。)









































「すみません・・・・・・」
「いえいえ。お気になさらず。」





結局は彼らの案内を受けることにした。
二人は一度宿に戻って荷物を置くと、を色々案内していく。





「まずは何処から行きましょうか?」
「どちらの方からいらしたんですか?」
「門の近くはもう大体大丈夫です。
 どちらかと言うと、市庁舎よりの小道が全く分らないので・・・・・・」
「分りました。ではそちらのほうから行きましょう。」





そういって歩き出そうとする、青年に、が慌てて声をかける。





「あっあの!!」
「どうかいたしましたか?」
「お名前をまだ聞いていないので。
 俺はです。」
「そうでしたね。失礼しました。
 私はカミュー。こちらの連れはマイクロトフといいます。」
「どうぞ宜しく。」





今更な気がしないでもなかったが、三人は丁寧に自己紹介すると、カミューと、マイクロトフが丁寧に道を説明して言ってくれる。





「ここの小道はこの先大きく曲がって、一つ先のブロックと繋がっています。
抜け道として使うのはいいでしょう。」
「そのかわり、道幅が狭いのと路面が整備されていないので、暗闇では少々歩きづらいと思います。」

「ここの道は、概ね他の道と同じですが、治安が悪く、いろんな人間が集まってきます。」

「市庁舎に向かう道で、あまり知られていないのが、この小道です。」





とか何とか。
はっきり言って、地元人でもあまり知らないような事をよく話してくれている。





「お二人とも、ミューズ出身の方ですか?」
「「いえ。」」
「え?そうなんですか?かなりお詳しいですよね?」
「ええ。時々こちらへ出向く事がるので、そのときに散策をしましてね。」
「き・・・・・・武人たるもの、常に心がけを忘れてはいけませんからね。」
「うわ〜スッゴイですね。その心がけ。
 俺には到底まねできませんよ。」

(危なかったね、マイク。)
(すっ・・・すまない。)





はどうやら気付かなかったようだが、"騎士"と言いかけたマイクロトフは冷や汗を流している。
はこそこそと話す二人を放っておいて、取りあえず町並みを覚えておこうをキョロキョロとする。
迷った時や、同じような外観のところに来てしまった時のために、記憶が混乱しないように目印を覚えておくといいのだ。
暫く見渡していたは、ふと、声が聞こえた気がして、そちらへ向かう。





君?」
「いや、声が聞こえた気がして・・・・・・」





その様子に気付いたカミューが声をかけるが、はそのまま聞こえたほうへと歩いていく。
は道の前で一旦足を止めると、先ほどの説明を思い出す。

『ここの道は、概ね他の道と同じですが、治安が悪く、いろんな人間が集まってきます。』

(確かに治安が悪そうですね。)

は、今度ははっきりと聞こえてきた悲鳴を追って、小道を走っていく。
軽くうねった道になっているらしくて、少し走ると入り口は見えなくなり、かわりに大柄な男三人と、絡まれている少女が一人見えた。

(ベタですね・・・・・・)

はそのまま走る速度を上げると、一番近くに居る男にとび蹴りを食らわせる。
無論狙いは首筋。





「ぐはっ!?」





一人を昏倒させると、後の二人も気付いたようで、慌ててに向かうが、狭い道でしかも混乱している状態でに適うわけもなく、あっさりと二人も倒されてしまった。
その頃には既にカミューとマイクロトフも追いついてきていて、その鮮やかさに感心しているようだった。
しかし、





「お怪我はありませんか?レディ。」
「はっ・・・はい」





真っ先に女性に声をかけたのは、甘い笑顔を浮かべたカミューだった。
助けたはずのは、何も言わずマイクロトフ傍まで後退すると、そっと話しかける。





「・・・・・・カミューさんって、女性には全員"レディ"なんて言うんですか?」
「・・・・・・・・」





相棒の返事は沈黙だけだった。














息抜きのような休日



始めはやらなくてはいけない事



それをするために出かけたのだけれども



出かけると必ず出会いがある



それはそれで



一つの休日の過ごし方なのかもしれない














□■□あとがきという言い訳□■□
2騎士〜〜〜〜〜〜!!!!!!
大好きです。2騎士。愛してます。
本当は一話で終わらせて、丘上会議に行こうとも思ったのですが、
もっと2騎士と絡みたい一心で、オリキャラ少女登場。
そして、さり気無く登場はクライブさん。
彼の話は連載の中ではあまり出せないかもしれない。
なので、姿だけでもっ!!!ということで彼も登場。
が一発で銃に気付いたのは、裏設定に理由があります。
此処では紹介できないけど。(オイ)