わ、笑い死にそう・・・!







ついでにマのつくお手伝い!
5・5







編み物閣下に風呂にほうりこまれ、あがってきた様を見たとき思わず生唾を飲み込んだ。
隊長との手合わせて疲弊していた彼は、拭くのが面倒くさかったのだろう、濡れた闇色の髪が上気した肌に張り付き水滴が時折滴っていた。
どかっとソファーに座ると、気だるそうにぼうっとしている。
・・・・・・・・・物凄く色っぽいっ!!
話の途中で時折つくため息に、ドキッとさせられる。
ヴォルテール卿の顔は背後にいるため見えないが、多分目線を泳がせているのだろう。
いつも以上に余計な話を省いて質問だけ繰り返していた。
その質問もすぐに終わると、本題を言いづらそうに話す閣下に大将は半分眠ってしまっている。
いいんですかね、大将?大事な話だと思うんですが・・・


「私は婚約を破棄するつもりはない。」
「へぇ?」


・・・あの、大将そんな軽くていいんですか?
心配になったが、きっかり三秒後、先ほどまでの色気を吹き飛ばして叫んでいた。


「ええ!?」
「反応遅かったすね。大将。」


つっこむ俺をさっぱりぽんと無視すると、猛然と閣下に食いかかる。


「十貴族としてそんな婚約破棄など不名誉なことが出来るわけないだろうが。」


様から妖艶さが消えて、何とか威厳を取り戻した閣下がきっぱりと言い放つ。
閣下、それって建前にしか聞こえませんよ。
様は建前だとは気づいていないが、書庫に立てこもっていたときと同じく、閣下の返事を鋭く感じ取って切り返している。


「ヨザック、聞きたいんだが、こちらの世界の『婚約』というのは今俺が言った意味で間違いないな?」
「まぁ、概ねあっていると思いますよ?」
「・・・・・・概ね?」


概ね、っていうか、一般にはそうなんだけど、閣下の婚約の意味には・・・


「ええ。俺の解釈としては更に突っ込んでいて『近々結婚する予定で付き合ってるんだから、手ぇ出すんじゃねぇぞ』っていう牽制も込められていると思いますけど。」
「尚更悪いじゃないか!!!」


むがーっと頭を抱える様に、ちょっと笑える。
面白いリアクションだなぁ・・・
そのまま放っておきたかったが、いかんせん上司の縁談を壊したら、一体どんな任務が言い渡されるやら。何とか笑いをこらえて、陛下と様の容姿の凄さからフォローを入れる。
まぁ、実際多少自覚してもらわないと、こっちが困るんだけどね。


「十貴族であるフォンヴォルテール卿と婚約関係にあることは良いことなのではないですか?」
「う・・・・・・・・」


実際、本当のところ、様にもこの縁談の価値が分かったらしい。
少しうつむいて、考え込むと、キッと決意ある表情で顔を上げた。


「不束者ですが、(身の安全のため)よろしくお願いします!!」


その返事に、俺は堪えきれなくなって腹を抱えて爆笑してしまった。
忘れてるようですけど、閣下は結婚はしないなんて一言も言ってませんから!!!
くそー!陛下といい、大将といい、なんて面白い人たちなんだ!!






敏腕諜報部員・女装の達人・気遣いのプロ、グリエ・ヨザック。
いわぬが花・知らぬが仏を最も理解している眞魔国人である。