異文化コミュニケーションは めでたく異世界の言語能力を獲得した俺は、ギュンター(すみれ色美人)さんとヴォルフラム(ウィーン少年合唱団風)さんから詳しい説明?を受けました。 時々ギュンターさんが暴走したり、鼻血を吹いたりと凄い事になったり、ヴォルフラムさんがいきなりキレだしたりした為、国名とユーリの凄さと、黒髪黒目の希少価値くらいしか分からなかったけど。 「・・・・・・なぁ、ユーリ。」 「何?」 「俺思うんだけど、此処で何してればいいわけ? 俺ってばウォークマンも本も持ってきてねぇもんよ。」 「いや、ウォークマンは水に濡れたら壊れると思うけど・・・・・・」 いや、俺が欲しい突っ込みはそうじゃないですから! くそう。向うには読みかけの推理小説が残っているのに・・・・・・! 「よし。決めたぞ。」 「え?」 「ウェラーさん」 「はい?」 「俺は、国王でもなくて、役人でもないんで執務はないんですよね?」 「ええ」 「でも、髪は黒いんで、あんまり迂闊に外出してもらうと困り気味。」 「物分りが良くて助かります。」 「よって、俺はこの城で生活しなくてはならないっぽいって事で、現状把握は宜しいですか?」 「完璧です。」 後ろで『嗚呼、さすが陛下のご友人!陛下と同じく理解力が優れていらっしゃる・・・私感銘を受け・・・・ブフゥッ!』とか何とか聞こえたが、無視。 「そんなわけで、俺はもてあました時間を潰す為、本を読み漁りたいと思います!!」 「え?って此処の文字読めたっけ?」 「え?」 「・・・・・・・・・・・・」 計画一秒で失敗★ っていうか、ユーリに突っ込まれたよ・・・・・・ ショックで蹲ると、ポンポンと肩を叩かれる。 「同情するなら文字教えてくれ・・・・・・」 「いや、俺は陛下の護衛をしていなくてはいけませんから。」 其処は親切心で教えようとか思わないか?フツー。 ああ、貴方の笑顔が眩しくて涙が出そうですよ。俺は。 「その代わり、教育係兼護衛をつけますから。」 「早めにお願いいたします・・・・・・」 取りあえず、それまでは隣の部屋(空き部屋らしい)にいさせて頂くことに。 ヨロヨロと扉に向かうと、ユーリが待ったをかける。 「、その格好で過ごすつもり?」 「おお!?」 俺、弓道着のまんまじゃん! 誰か気付いてくれよ!!! ユーリの学ランもどきを借りようとしたが、魔王陛下特別のお召し物ということで却下。 結局体格が一番近いヴォルフラムさんの軍服を借りました。 部屋に入ってから、ひとしきり装飾品を眺めた後、暖炉の上にあった書物を広げてみた。 「見事に読めねぇ・・・・・・」 いや、何ていうの? ザ★異文化コミュニケーションみたいな感じ?宇宙人が関西弁喋れるなら、俺だって宇宙語が喋れるようになるのかな?N●VAにでも通っておけばよかったか? いや、N●VAは英語であって、眞魔国語は無理か。 そんなことを考えていると、ノックも無くドアが開けられた。 「・・・・・・こんなところで何をしている。」 「・・・・・・待ち人来たらず。みたいな?」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 俺の返答に眉間の皺を濃く刻むと、ツカツカと近づいてくる。 なんか、不穏な空気? 「その軍服からするに、ヴォルフラムの私兵だろう。 お前の隊は今、城の警備に着いているはずだ。 こんなところでサボっていないでさっさと仕事にもどれ。」 「・・・・・・・・・・・」 完 全 な る 誤 解 だ 。 俺はどうしたものかと、黙っていると、相手はそれを拒否と受け取ったらしく、眉間の皺を深くしながら苛々と言い放つ。 「上司の命令にも従えないのか? それに、髪を黒く染めるなど・・・・・・」 「はぁ・・・・」 この、思い込んだら一直線風な方に、どうやって誤解を解いたものかと溜息をつくと、また変に解釈されてしまったらしい。 眉間の皺がMAXになったかと思うと、背後の扉が開いた。 「、お待たせ〜さっき言ってた人連れてきたよ〜」 ザッツ天の助け!!魔王陛下ユーリの登場です!! 助かった!この人の眉間の皺が取れなくなる前に誤解を解いてくれ!! 「ユー「陛下は下がっていてください。」 は? 「こやつはヴォルフラムの兵を装った侵入者です。」 『ええ!?』 驚いている俺とユーリ達を尻目に、勘違い男は腰の剣を俺に向けてくる。 「何でっ!」 「上手く化けたつもりだろうが、生憎とヴォルフラムの私兵は純潔の魔族ばかりだ。 お前のように髪が黒い者などいない。」 「で、でもっ、黒髪は高貴な魔族に現れるんだろう!? 現にアンタだって、黒に近いじゃん!」 「確かに生まれながらの黒髪は陛下だけだ。 その髪は染めたものだろう?魔族は高貴な色とされる黒に髪を染めたりなどはしない。 中途半端な知識が仇になったな。」 「俺は染めてねぇよ!!」 あんたにはこのツルツルキューティクルな髪が閉めたものだと言うつもりか!? ジリジリと窓際に追い詰められながら必死に弁解する。 顔が綺麗だが、不機嫌さしか感じられず何だかコワイ。 「っていうか、ボーっとしてないで止めろよ!!!」 「え、あ、ごめん!」 半泣きで叫ぶと、ユーリが正気に返る。 っていうか、ウェラーさん。笑ってないで止めてよ。 オレンジ色の人(多分俺の指導係)も面白そうに眺めてないで、止めろってば。 「グウェンダル!は・・・その人は違うんだよ!!」 「やはり人間だったか!」 「ぎゃー馬鹿ユーリ!!逆効果だ!!」 火にガソリンを注ぐような発言に、俺は迷わずユーリの方にダッシュする。 一瞬後に何かが空を切る音がしたのは気のせいだ。 気のせいだと言ったら気のせいだ!! 「ぎゃー!!コンラッド!グウェンがこっち狙ってる!」 「いや、狙われているのは彼ですよ。」 「だから、助けろよお前等〜〜〜〜!!」 後ろからの殺気がザクザクと突き刺さるようで痛い。 ふと、視界が一転。 「うわぁ?」 何?何なの? いつの間にか、ゴツイ腕が腰に巻かれ、抱え上げられていた。 「フォンヴォルテール卿、この方は陛下のお友達だそうですよ?」 「何?」 待ってましたの一声は、聞きなれない声だった。 消去法で多分オレンジの人。 俺はどうやら彼に抱きかかえられているらしい。頭の後ろから声がした。 「・・・・・・本当ですか?陛下。」 「う、うん。シュンはあっちの世界の幼馴染だよ。 あっちの世界の人だから髪も黒いわけ。」 「・・・そうか。」 そういうと、剣を仕舞い俺に向き直る。 「・・・その髪をどうにかしろ。」 「・・・それで?」 「・・・・・・見た目がややこしい。」 「・・・・・・だから?」 「・・・・・・・・・またこういうことが起こりかねない。」 「・・・・・・・・・おしまい?」 きっと今の温度なら、バナナで豆腐に釘が打てるよ。 ユーリがウェラーさんにしがみ付いて震えているが、ウェラーさんは至極満足げだ。 後で感謝しろ。 オレンジさんは一人硬直しているが、かろうじて俺の左手は掴んでささやかに抗議している。 有能な部下だね。 それに比べてこの眉間の皺勘違い男は・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・それだけだ。」 バシッ 俺は掴まれていない右手で相手の頬を張り倒すと、深く息を吸う。 「勘違いして侵入者呼ばわりした事は別に問題ないだろうよ。普通ユーリと同じ異世界の人間だ何て想像もしないからな!だけど、その後の行動はどうだ?いきなり剣を向けるか?しかも相手は丸腰だぞ。ヤクザだって刃物を持って向かってくる時は予め『たまぁ、取ったるでぇ!』って叫んでから来るだろ!しかも、誤解だと分かったら、誤るのが筋ってモンなんじゃないのか?それを何だ?こういうことが起こらないよう、髪の色をどうにかしろだと!?ふざけんじゃねぇ!!!」 一気に溜めた息を吐き出すと同時に、言葉を相手にぶつけていく。 ユーリはトルコ行進曲と言われているが、俺の場合はマシンガントークだ。破壊力が違う。 ちなみに、ポイントは腹式呼吸。 「や、やっちゃったよ・・・・・・・・・・」 「・・・・・・え?」 「取り消した方がいいって!」 「それはヤダよ。俺間違ってねぇだろ?」 スッキリしている俺に、ユーリが訳が分からない事を言い出した。 何でおれが前言撤回しなくちゃいけないんだよ。 すると、爽やかな笑顔を輝かせたままのウェラーさんと、笑いに肩を震わせているオレンジ色の人も変なことを言い出した。 「おめでとうございます。様。」 「え?オメデトウ?」 「いや〜陛下といい、殿下といいあちらの世界の方々は情熱的なんですねぇ〜」 「殿下?情熱的?」 何で祝福されているの? 殿下って誰?っていうか、何? 情熱的って、マシンガントークが? 頭の上に飛び交う?マークに答えをくれたのはユーリだった。 「。こっちでは、左頬を叩くのは求婚を意味するんだ・・・・・・」 何ですとぉーーーーーー!!?? |