第一印象はよくはなかったはずだ。






ついでにマのつくお手伝い!
3.5







貴賓室に入ったとき、一瞬にして目を奪われていた。
中にいたのは漆黒の髪をした少年で、伏目がちな瞳の色はわからなかったが、垣間見れる肌の色は少々白いが健康的な色で、色の髪はあの陛下とは違い夜の空のようで、青い軍服によく映えていた。
手にした書物に目線を落としているその横顔は、憂いを含んで儚く、そして何より美しかった。
呆然と彼の姿に目をうばられていると、ふと顔を上げ驚いたように見開いた目は深い青。まるで海の青さを凝縮したような輝きを放っていた。
しかし、正気づくと、彼の存在のおかしさに気づく。
この世界に陛下以外の黒髪はいないだずだ。
それに、正面を向いた彼の着ているものは、ヴォルフラムの私兵の軍服だった。
それで侵入者だと思い切りかかったが、あっさりと避けられたことと、ヨザックの腕の中にいる彼を見て何故か少々混乱していた。だから


「・・・・・・・・・・おしまい?」


怒りの形相でこちらを睨んでいる彼に


「・・・・・・・・・・それだけだ。」


と返してしまっていた。
瞬間頬を襲った痛みと、猛然と捲くし立てる彼の言葉は、頭に全く入ってこなかった。
気がつくと彼は「なんですとぉー!?」と叫んだかと思うと、ヨザックを引きずって部屋を後にしていた。いったいあの細腕のどこにグリエを引きずっていく力があるのだ?陛下すら呆然と扉を見ていた。


「グウェンダル、正気にもどったか?」
「コンラート・・・彼は一体・・・?」
「彼はユーリの幼馴染でという方だ。
 たまたま彼が現れたところに俺がいてね、お連れしたんだ。」
「彼は呼ばれてきたのか?」
「さぁ?そこまでは。眞王廟から何も連絡がないから、事故かもしれないね。」
「・・・・・・そうか。」


痛む頬を撫でながらため息をつくと、ふと陛下が凝視しているのに気づいた。


「どうした、小僧。」
「あのさ、グウェンダル、どうするの?」
「何をだ?」


はっきりしない陛下に眉間にしわが寄る。
どうしてこいつは威厳などがごっそり抜け落ちているのだろうか・・・
陛下はわたわたと妙な動きをして、顔を真っ赤に染める。


「だ、だからっ・・・その、とここここ婚約しちゃうわけ!?」
「婚約?」


一瞬何を言っているのかわからなかったが、ふと気づいた。
そういえば、右頬がひりひりする。
そういえば、似たような状況を見た覚えがある気がする。
そういえば、コンラートが爽やかに笑っている。


「っっ!」
「あれ、グウェンダル気づいてなかったんですか?」
「え?グウェン分かってなかったの?」


なんと二人の残酷なことか・・・





魔王よりも魔王っぽい、鬼宰相と呼ばれるフォンヴォルテール卿グウェンダル。
彼は、自分に降りかかる突発事故には弱かった。