だから、アンタ方女子中高生ですか?






ついでにマのつくお手伝い!
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「あ〜も〜ありえない〜〜」
「まだ文句言ってるのかよ。」


あの後、ランスたちの部隊を皮切りとして、次々と投降し始めた。
今では、のほほんと会話をしていたり、あちこちで自主反省会が開かれている。
ようは、休憩時間のようなものだ。


「大体、模擬戦の前に罠とか仕掛けておくか?フツー。」
「戦うと決まったと時から、始まっているんだって、昔の剣豪が言ってたぞ。」
「誰だよそれ・・・」
「宮本武蔵だ。」
「ホントに誰だよ。」
「何でもいいから、包帯とってくれ。」
「へいへい。」


俺とランスは、救護過程履修中の兵士達にまじり、負傷者の手当てを行っていた。
どうも、救護履修中の兵士にとっては、いい実験材料らしい。
先ほどから、緑色の女性がビシバシと怒号を飛ばし、兵がきびきびと動いている。
・・・・・・心なしか、時折こぶしが混じっている気がするのだが。
救護班なのに、負傷者つくっていいのか?


「よし。包帯巻いたから、大丈夫だと思うけど、捻挫だからって簡単に動かすなよ?癖になったら大変だから。」
「あ、ありがとうございます!!!」


手当てを終えた兵士に微笑むと、涙を流して喜ばれた。
いやいや、オーバーだから。
これで、手近な負傷者は手当てをし終えて、あとは救護班に任せておけばいいだろう。
下手に手を出しすぎると、緑色の人に『獲物を横取りするなぁ!!』と怒鳴られそう。


「おまえさぁ、笑顔を安売りするのはまずいんじゃないの?」
「はぁ?ギスギスした戦闘の後なんだから、笑顔は大事だろう?」
「まぁ、そうかもしれんが、お前、二つ名が付いてるの知ってるか?」
「え!?二つ名って・・・」
「ザビエル。」


げっと嫌な顔をしていると、背後から声をかけられた。
振り向くと、相手方と自軍の先輩方がずらっと並んでいた。


「な、なんですか?先輩方・・・」


その光景に半歩引きながら身構えると、顔を真っ赤に染めた一人の先輩が歩み出た。


「ザビエルっ!君はまさに戦女神だ!!」
「What's!?」


戦女神・・・って、魔族なのに、神とかついちゃっていいわけ!?
いやいや、その前に俺男ですけど!?
すると、次々と他の先輩方も負けじと騒ぎ出した。


「君の鋭いながらも、優雅な剣舞に見ほれたよ!」
「あんな数をひっくり返す策なんてよく浮かんだな!」
「前々から気になっていたけど、勝利を告げた瞬間本当に輝いて見えたよ!」
「負傷者を見て回るなんてなんて心優しいんだ!」


いや、剣舞じゃなくて普通に戦ってただけだし、策なんて昔の戦いのを参考にしたし、輝いて見えたのは朝日の影響で、負傷者を見て回るのは、普通のことじゃぁ・・・?
あまりの過ぎた賛辞に絶句していると、今度はまた背後から声が上がる。


「ちょっと待ってください、先輩!」


反射的に振り返ると、そこにもまた、驚くべき光景が。
比較的若い兵士たちが、同じように徒党を組んでいた。
今度は何!?


「先輩方は『新兵のくせに』とか『顔がきれいだからって』とかいって馬鹿にしていたのに、急に態度を変えるなんて!」
「そうです!ザビーの良さは俺たちのほうがよく知っています!」
「簡単にザビーは渡しませんからね!!」


何の話だよーーー!!
本人置いてけぼりで、どんどん進んでいく話に、俺は助けを求めるように、ランスを見る。
・・・・・・アイツ既に傍観決め込んでやがる。


「ランス・・・」
「まぁ、端的に言えばザビエルの自慢大会?」
「何で!?」
「多分、勝ったほうがこれから先、ザビーと仲良くできると思ってるんじゃないか?」
「・・・・・・・・・アホか!」
「アホなんだよ。みんな。」


ランス、お前もうちょい仲間のことをフォローしろよ。
深々と溜息をついているが、その間にも、俺を挟んで議論が白熱していっている。


「ちなみに、俺は審判役だから。」
「役割分断までしてるのかよ!」


っていうか、誰か止めてくれよ!!
さっきから俺が「あまり甘くないお菓子が好き」とか「寝顔がかわいい」とか「実はちょっと身長が足らないから高いところに手が届かなくて、台座を使っている」とかストーカーレベルの話が続いているんですけど!!
おまえら、俺の寝顔なんていつ見たんだよ!!
あまりの事実に、悶絶しそうになっていると、ふと聞き覚えのある声がした。


「え〜っと、彼は女装もスッゴイ似合うんだよね?」


この声は、もしかして、もしかしなくても・・・・・・・


「魔王陛下!?」
「陛下!?」


酸いも甘いも知り尽くしている、幼馴染の渋谷有利クンですね・・・
恐る恐る、そちらを向くと、ウェラー卿とグウェンダルを引き連れたユーリがにこやかに立っていた。
その手前に、おろおろとした教官も見えるが、そっちはオーラが足らな過ぎて、視界に入ってこなかったが。


「いや〜マジ皆すごかったよ!!これなら王都の皆も安心して生活できるよな!
 特に、最初はすごい差だったのに、頭使って逆転するところなんて、俺、見てて興奮しちゃった!」
「へ、陛下・・・」
「本当は、戦争なんて無いほうがいいし、するつもりもないけど、色んなところに行く時は守ってもらうんだよね。
だからちょっと頼もしくなってきたし、逆に俺も頑張らなくっちゃって思っちゃった!」
「そ、そんな恐れ多い・・・」


ユーリの言葉に兵士たちは感激している。
横にいるウェラー卿も眩しそうに目を細めてユーリを見ている。
ん〜ユーリ、意外と王様向いてるなぁ・・・
そう感心していると、表情をがらりと変えたユーリが俺に向き直った。
・・・・・・・・何か、嫌な予感。


「ところで、酷いじゃんか!俺に相談もなしで兵舎に入っちゃうなんて!」
「あ〜いや〜その〜」
「別にさ、軍に入るなとか言わないよ。グウェンダルから説明されたし、決めたことなら文句言わないつもりだったのに。確かに、危ないことはして欲しくないし、守って欲しいなんて思ってもいないけど・・・」
「だからね〜ユーリ、陛下〜〜」
「そうっ!それだよ一番腹が立ってるの!!」


おきまりのトルコ行進曲を止めようとしたら、ユーリはビシッと俺に指を突きつける。


「陛下って呼ぶな、!俺たち幼馴染じゃんっ!」
「あああ〜〜〜ユーリの馬鹿〜〜〜〜!」


あっさりとバラしてくれたユーリに頭を抱えてしゃがみこむ。
ユーリの宣言に周囲が動揺から抜け切れない中、誰かが俺の背後に立った。


ざばぁ。

「いきなり水かけるな〜〜〜!!!」


何の前置きもなく、頭から水をかけらた腹いせに、後ろに立っていた相手に足払いをかけるが、あっさりとかわされる。
・・・この体裁き、もしや・・・
顔をあげると、にこにこと万遍の笑顔を浮かべたウェラー卿だいた。


「ウェラー卿・・・」
「これで元に戻ったね、?」
「は?」


一体何を言っているのか分からなかったが、周囲の叫びで気づかされた。


「く・・・黒髪!?」
「あ、そうか・・・」


足元に赤い水がたまっているのに気づき、納得した。
髪が元に戻っちゃったし、しょうがない、諦めるか。
溜息をつくと、立ち上がってカラコンを外す。
そして、ぐるりと見渡すと、皆一様に驚いている。
あのランスも、呆然としていた。


「あ〜、ユーリの幼馴染でっていいます。」
「そ、そんな・・・」
「え〜っと、ごめんね?」
「うそだぁぁぁ!!!!」


訓練場に絶叫が木霊していた。