最近何故だか周囲の目線が痛い。




ついでにマのつくお手伝い!
10.5








・・・・・・目線を感じる。
またか、と思ってそちらを向くと、お茶を運んできたメイドがいたが、慌てて部屋を出て行ってしまった。
自然と眉間に力が入ってしまうのを感じながら、ため息をついてペンを動かす。
最近、いやにこの手の反応が多い気がするのだが、気のせいではあるまい。
きっとまた、陛下トトか何とかだろうと、適当に想像して無理やり納得すると、大きな音を立てて扉が開いた。


「グウェンダル〜〜〜!」
「・・・・・・・・・・」


魔王が慌てた姿を晒すんじゃない、と言いたいが、その表情に言葉を抑えた。
明るくクルクルとよく表情を変える小僧にしては、怒りの形相だ。
しかも、その怒りは私に向いているらしい。
羊突猛進してきたユーリは机越しに胸倉をつかんできた。


「どういうことだ!?グウェンダル!!」
「何がだ。」


身長の関係で上目遣いになっているため、全く恐ろしくもなんともない。
あっさりと返事をすると、更に怒りのヴォルテージが上がったのか、顔を真っ赤にして叫んできた。


のことは遊びだったのかよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・は?」


呆気にとられる私を放っておいて、ユーリはいつものごとく怒涛の勢いでしゃべり出す。


「こないだの美人部下のラインさん、グウェンダルの彼女なんだって!?何で彼女がいるのに、に伏せて婚約したんだよ!しかも、彼女が現れた途端に、は兵舎に入っちゃうし!もしかして、が邪魔だったから兵舎に入れたりしたんじゃないだろうな!?
もしそうなら、そんないい加減な奴には、ウチのはあげません!」


お前は保護者か。
突っ込みたかったが、一瞬言葉も出なかった。
絶句しているうちに、陛下の後を追ってきたらしいコンラートが、『ほらほら、離れてくださいね』とユーリを引き剥がしていた。


「ちょっと待て」
「何だよ!?」
「何か勘違いをしてるんじゃないのか?」


いや、何かどころか、どこもかしこもな気がしないでもなかったが、明確に考えるのも面倒くさくなって、考えるのをやめた。


が兵舎に入ったのは本人の希望だ。」
「どうして・・・」
「あいつなりに、身の振り方を真剣に考えた結果だ。」


そう告げると、陛下も多少頭が冷えてきたのか、むっとした表情のまま、静かに聴いてくる。


「じゃぁ、あのラインっていう美人部下は?」
「・・・・・・」


何と言えばいいのだろうか。
とは取り合えずとはいえ、婚約はしているし、部下でもない。
しかし、ユーリが言っているのは女装したを指している。
中身が同じだとはいえ、『部下ではない』『婚約はしている』と答えてもいいものか・・・
ぐるぐると迷っていると、ユーリは無言の肯定と取ったのか、また怒り出す。


「グウェンダルはラインと付き合ってるの!?付き合ってないの!?」


また詰め寄ろうとしたユーリを、コンラートが後ろから抱かかえる。
・・・どさくさに紛れて何をしているんだ、コンラート。


「まぁまぁ、陛下落ちついて。」
「落ちついていられるかっ!幼馴染が弄ばれそうになっているのにっ!
 っていうか、陛下って呼ぶな名付け親!!」
「すみませんユーリ。
 でも、大丈夫ですよ。は弄ばれてなんていませんから。」


何故だろう、その後に『グウェンダルにそんな甲斐性はありませんから』と聞こえるのは。


「でも、ヴォルフとかメイドさんたちも、ラインさんと仲が良すぎるってっ!」
「あはは、それはそうですよ。ラインはですから。」
「どこが問題なんだよ!?ラインがだって・・・って、あれ?」
「何故知ってる、コンラート」


あっさりと爆弾発言をしたコンラートに思わず聞いていた。
あの時、お前は気づいていなかったはずでは?


「ああ、後からに聞いてね?」
「・・・・・・」


何で聞いたのに疑問形なのだ。
・・・・・・、もしかして脅迫されたのか?
しかし、の幼馴染は全く気づくことなく、ぱくぱくと口を動かしている。


「ラインさんがって、え?何、あいつ女装してたの!?」
「ええ。グウェンダルも、最初から説明して差し上げれがいいのに。」


そういえば、そこから説明すれば問題がなかったのか。
思った以上に混乱していた自分を自覚すると、顔をしかめる。
コンラートはそんな私の内心を知ってるかのように面白そうに微笑むと


「グウェンが噂を放置してたから、ラインが付き合ってるってことになってるよ?」


お前が放置しておいたんだろうが!!
叫びたかったが、この弟に通じるとは思えなくて、痛む胃を押さえながら溜息をつくしか出来なかった。
・・・・・・ああ、陛下の誤解を解いたら、が帰ってくる前に城内の誤解を解かねば。









魔族ちょっと似てるかも三兄弟の長男、グウェンダル。
何故だか彼のところには、苦労が持参金を持ってやってくる。