星たちが動き出すほんの少し前 別に競争をしているわけではない。 もしも競争であれば背後から『ギオオォォォォォ!!』という声は聞こえないし、ましてや視界の悪い森の中で走るわけが無い。 理由は至極簡単だった。 武器を置いてきてしまい、さらにはフリックたちと離れてしまったからだ。 いわゆるアレである。 『お馬鹿な迷子。』 ・・・・・・・・・・・・・なんとも情けない話である。 「無い物ねだりだよそりゃ!!」 もう一人の男も無言だが、明らかに余裕が見て取れ、表情は朗らかに笑っている。 「いや〜体動かすのって久しぶりだからさぁ。」 「久しぶりって、砦の人間でしょ?」 「そうなんだけどね。日がな一日机で書類と格闘してたから、外に出るのも久しぶりでさぁ、何だか新鮮な気分。」 「「「・・・・・・・・・」」」 と、いきなりは立ち止まると、腰の剣をスラリと抜き、迫ってくるモンスターへぴたりと向けた。その表情は先ほどと打って変わって凛としたもので, 気高さを感じさせる。 構えにも隙がなく闘志が十分に満ちていた。 その動きは洗練されていて、まったく無駄がなく、舞っているようで三人の目を惹きつけた。 その姿に三人とも無言で、最後の一頭が倒されて彼が戻ってくるまで呆然と見惚れていた。 「いっ、いや。ただ、戦えるなら最初っからそうしていてくれたらよかったのにって。」 「そうだよ。何で戦えるって黙ってたの?」 ジョウイも黙ったままであるが同じのようだ。 は苦笑すると困ったように は驚いていた。助けてもらった時からなんとなく足がだるくて、思うように動けなかったのだ。しかし、フリックたちの足手まといになるわけにもいかず、何も言わずいつも通り振舞っていたのに。だが、あっさりと目の前の彼には見抜かれていたのだ。 ジョウイとナナミも同様に驚いていた。 は笑うと、少し悪戯っぽく笑うとこう付け足してきた。 それにつられるようにも笑い出す。 「僕は。こっちが姉のナナミで、こっちが親友のジョウイ。」 「よろしくさん。」 「よろしくね!」 は『呼び捨てでかまわない』というと、三人を誘導する。 「こっちだって・・・何が?」 「フリックさんたちだよ。多分こっちにいる。」 「なんでわかるの?」 「秘密だよ」 だが、自信たっぷりにこっちだというので、ついていってみる。もともと迷っているんだからとも諦め半分でついていくが・・・・ 「え!?」 「何だよ人を幽霊のように言いやがって。どれだけ心配したと思ってんだよ?」 「あ・・・ごめんなさい。」 「あんまり責めないでよ。ダイジョブだって。俺もついてたんですから。」 「あのなぁ、だったら最初っから迷うなよ。」 「いいじゃないの。みんな無事だったんだし結果オーライ。 頭の後ろで手を組んで笑っているを眺めながら思わず突っ込む。 「うん。」 は何の表情の変化も見せない。涼しい顔で笑っている。 だが、フリックとビクトールは猛然とに言い寄る。相当頭にきたらしい。何とか怒りを静めようとしているのか、が笑いながらなだめている。 その様子をジョウイとはどこかぼんやり、遠くのことのように見守っている。 「そうだねジョウイ。でも僕たちを気遣ってくれたとはいえ、走り回されたのはムカつくよね。」 「それもそうだね。」 ジョウイとが腹黒い話をしているうちに、ナナミが事情を話してどうにか収まっていた。 さんざん二人に説教を食らったは、不満そうに文句を言う。 「分かった分かった。帰ったら毎日相手してやるさ。」 は待ってましたとばかりに、にやっと笑う。 「な、なんだよ!?」 「いいえ。ただ毎日剣の相手してくれるんですよね?」 「あぁ・・・?」 「すっごいねビクトールさん!!」 「ナナミ?」 フリックも何だか分からずに、きょとんとしている。 「え!?そんなに強いのか?」 「うん!!」 「剣だけで倒しちゃって、しかも剣捌きに無駄がなくて思わず見惚れちゃったくらいです!!」 『剣を扱うんだったら君みたいになりたいです!!』 さらには純粋そうな笑顔いっぱいにの武勇伝を語る。 信用度はもちろん効果も抜群で、ビクトールの顔色はどんどん青ざめていく。 だが、その表情がいけなかった。 語られている本人といえば青ざめダラダラと汗を流している。 今の季節は夏ではない。無論汗は気温のせいではないだろう。 「俺は知らんぞ。お前が相手してやるといったんだからな。」 「相棒だろ!?」 「それとこれは別だ。」 二人とも顔は整っていて笑みは美しいはずなのだが、オーラが恐ろしいせいか、そこはかとなく嫌な感じがする。 (話し掛けたら負けだ!!) 嫌な空気に耐えつつも今話しかけたら碌な事にはならない。 とはいえ・・・・・・・ 「・・・・・・・・・・(汗)」 ニコニコニコニコニコニコ・・・・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・(滝汗)」 フリックは元々人を無視し続けたり、受け流すということが苦手で、更にそんなに神経は図太くはない。 そして遂には・・・・・・ 『もちろんフリックさんも相手して差し上げるんですよね?』 「いや、俺は・・・・・」 『して差し上げますよね??』 「・・・・・・・・・・・・・・おう。」 傭兵隊の隊長と副隊長は顔を見合わせると同じことを思う。 ((助けたのは間違いだったか?)) 深々と溜息をつくと、さすがに見かねてが助け舟を出す。 「今ちょうど事務処理も進めていこうと思っていたところだ!」 「ああ。これからはちゃんと手伝うよ・・・」 ずいぶん長い間立ち止まっていたので、遅れを取り戻すかのように先を急ぎながら、 「二人がちゃんと事務処理を手伝ってくれると思います?」 はいまいち不満そうな幼馴染二人組みにこれ以上ないほどにこやかな笑顔を送るとさらりと言い放つ。
「それなら。」 「待て!質問に答えろ!」 「うるさいですよビクトールさん。さっさと行かないと霧が濃いのに夜になったら大変でしょうが。」 「!!お前・・・!!」 一見剣を扱うのも信じられない細腕に、いったいどこにそんなパワーがあるのか不思議になる。 だが幸か不幸かそんなことに突っ込む人間もいなかった。 うわ言で『ごめんなさい・・ごめんなさい・・・・』と呟き、看病していた相棒の涙を誘ったとか何とか。 自分的お題は『腹黒幼馴染』でした☆ ・・・・・・・・・・・・・・・・何も言わないでください。 っていうか、幻水世界に漢字なんて無いだろう?自分。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 書き逃げ!!!!
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