「あ、大佐。タッカーの住所教えください。」
「構わないが、鋼のにでも会いに行くのか?」
「ん?いや、仕事ですよ?」
「まさか・・・・・・」
「次の監察対象、ショウ・タッカーですから。」
「なら、昨日行けばよかっただろうが。」
「だって、めんどいし?」
「・・・・・・っ!真面目に働け!!!」







無関心な観察者









「そういうわけで、大総統の命で監査に参りました。」
「はぁ・・・・・・」


大佐に教えられた住所にいたタッカーは資料の写真よりもくたびれていた。
まぁ、去年の査定の結果があまり良くなかったのは既に調べてある。
しかし、それより気になるのが・・・・・・


「まぁ、別に監査っていっても、マズイ事やってないかどうかなだけなので、実験室をざっと見せていただければいいですよ?」
「あ、そうなんですか。」


キョロキョロと変な目をしていたかと思うと、ほっと安心したような目をする。
―――――この目が気に入らない。


「スミマセン、散らかっていて・・・・・・」
「いや、問題ないですよ。散らかってない方が逆に怪しいでしょう?」
「そ、そうですかね・・・?」


中には別に怪しいものは無かった。
使っている動物も合法のものばかり。パッと見は間違いなく白。
しかし

(あった・・・・・・)

壁に書き殴られた練成陣の一つに明らかに人体を対象としたものがあった。


「そういえば、タッカーさん。」
「何でしょうか?」


どうか、上手く笑えていますように。


「エドワード君たちが来ていると伺ったのですが・・・・・・」
「お知り合いですか?」
「ええ、以前彼らの監査も担当した事がありまして。」
「そうなのですか・・・・・・」


一瞬ほっとした様子をまた見せると、明らかに余裕を見せだした。
ああ、コイツはエドの秘密を聞いたのか。


「彼らは頑張っていますか?」
「ええ、周囲が見えなくなるほど本に集中していますよ。」
「じゃぁ、邪魔しては悪いですね。
 ―――――それではこれで。」
「いや、ご苦労様でした。」


これ以上此処にいるのは、無意味だ。


















「閣下、少佐です。」
『ご苦労だったね
 して、どうだった?』
「タッカーは黒です。」
『そうか。では軍法会議所の者を向かわせる。』
「・・・・・・・・・・・・」


会議所・・・逮捕か。
一瞬、帰り際に見た光景が頭を掠める。


『どうしたね?。』


大総統の声に、はっとする。


「いいえ。何でもありません。」
『ならよいが。』
「申し訳ありません。」
『いや。
 ところで、次の任務なのなのだが・・・・・・』
「はい。」
『暫く私の傍で動いて欲しい。』
「・・・・・・は?」


なんと言ったのだ?今。


「だ、大総統閣下。それは・・・・・・」
『うん。暫く視察などができなかったが、そろそろ行わねばならない。
 それには手が足らなくてな。』
「つまり、アレですか?側近をしろと?」
『その通りだ。』
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
『ちなみに、命令として、後日正式に指令書をわたす。』
「・・・・・了解しました。」


溜息混じりに答えると、閣下は笑いながら豪快に言い放つ。


『上司への電話口で溜息とは、相変わらず不敬とか関係ない男だな君は!』
「失敬なやからなので傍に置くのは・・・・・・」
『だから面白いのだ。』
「・・・・・・・・・では次からは常に身分を気にした行動をとらせて頂きます。」
『それも面白そうだな。』
「・・・・・・・・・」


結局同じじゃねぇかよ!


。』
「なんでしょうか?」


半分不貞腐れながら敬語使うと、真面目な大総統の声がした。


『今回の判断は君の下したものだ。』


大佐とエドのことを報告しなかったのは俺の判断。
そして、タッカーのことを報告したのも俺の判断。


「・・・・・・・・ええ。わかっております。」
『なら良いが。それではセントラルで待っている。』
「はい。失礼します。」


受話器を置くと、宿の部屋に戻る。
ベットにダイブすると、タッカー邸を出て行くときに見た光景が甦る。

芝生の上を走り回る犬とエドワード。
アルフォンスは女の子を膝に乗せている。
女の子はエドを犬をを見て笑い、花冠をアルにのせていた。
弾けるような笑顔は、とても純粋で・・・・・・・・・


「幸せを壊してでも、俺は・・・・・・」


あの余裕が意味するところを許せなかった。

「お母さんいなくなっちゃってお父さん寂しいだろうから、ずっとニーナはお父さんと一緒に居てあげるの!!」

ごめんね。
俺は君とお父さんを引き離す決断しか出来なかったよ・・・