――――――074:魔術師――――――
羽間市内にあるはずの何処かの民家。
深夜12時を過ぎて、多くの家の明かりが消えている中、例に漏れずこの家の明かりも消えている。
「っていうかさ、俺本読みたかったんだけど。」
その家にいた零夜が不満そうに呟く。
「本を読むより私と話をしたほうが有益だろう?」
「・・・・・・あのさ、神野。」
「何かね?」
零夜はこめかみに指を当て、頭痛のポーズを取る。
「お前は人の願いの強さによって呼び寄せられるって言ったよな?」
「その通りだ。完全なる観察者よ。」
「・・・・・・とりあえず、呼び方については触れないけどっ!
な・ん・でっ本を読みたがっている俺のところに闇を連れて来るんだよ!!!」
『寧ろ明かりを持って来い!!』と叫ぶ零夜に神野影之はニヤリと口角を上げると、くつくつ笑いながら言う。
「君は今知識を欲しているだろう?本を読むと言うのはそういうことだ。
問題はその本の内容だ。」
「・・・・・・・・・オチが見えてきたぞ。」
「君が手にしている本の内容は――――――」
「・・・・・・魔術について。」
「つまり私についてだ。」
「いや、違うし。」
ビシッと突っ込みを入れるが、神野は相変わらず笑みを貼り付けたまま問いかける。
「何処が違うと言うのかね?
私が魔術そのものになったのは、君もよく知っているだろう。
その上で魔術を知ろうとするのは、則私を知ろうとするのと同じだ。」
「俺は、神野に付いて知りたいんじゃなくて、単に本を読みたかっただけだ!!!!!
っていうか、考え方飛躍し過ぎだっつうの!!!!」
小崎といい、神野といい叶先輩といい、(ちょっとこの仲間に入れたくないけど)空目といい、何で魔術関係者は考え方が飛躍しすぎてるんだよ!!!!!
―――と内心突っ込みを入れるが、それに答えてくれるものはいない。。。
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